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「戻ること」は悪いことじゃない

親御さんは、お子さんの教本が次々に先に進むと思っていらっしゃることが多いです。
  なかなか進まないと「先生の指導力が問題では」と思われたり、「うちの子は小5なのにまだこんな曲?」と、不信がられたり…。それが理由で教室を変わっても結局「放浪者」になるだけかもしれません。そもそもの原因が解明されないままですので。

  特に、教本を「戻す」「やり直す」ことについては、本人以上に親御さんの抵抗を感じることがありました。
ですが、場合によっては、教本レベルを戻しておいた方がいい場合、同じ本を繰り返し使ったほうがいい場合があるのです。

【教本変更の例】

  移動してきた生徒さんの様子を見ていて、現在使っている教本が煮詰まっていると感じることが続きました。様子を見ながら、少し戻って弾きやすいものを数こなした方がこの子にはよいのではないかと感じて、お母様にもその旨伝えました。

 生徒さんは、今弾いている曲が「なに調」なのかがわかっていなくて、調号のシャープが2つしかない曲でボロボロとシャープを落としても、「ん?」というくらいの気づきしかありませんでした。
元々、以前の教室でほとんど教本をやっておらず、記号の名前は答えても、その意味やなぜついているのかなど考えずに弾いてきたところを、移動してきてから直していた矢先です。

 うちに来た時にはあまり動かなかった指が動くようになり、表情も工夫できるようになったものの、やはりまだ抜け落ちが多いと感じました。教本を思い切って変更するという決断は勇気がいりましたが、全ては生徒さんのためです。修正できる段階で思い切ってみました。この決断が良いものになるようにと考えています。

 【さきこ先生もやり直し経験あり】
 チェルニー30番をやっていた時の話です。30番まで終わってやったー、次は40番と思っていたら…。


『はい、さきちゃん。来週は1番をやってきてね。テンポ上げてね』

  がくっ。

  終わったんじゃないんか~~~~い!!!
  また1番からなのか~~~い!!!

 正直に言うと、「戻された」のはすごく嫌でした。
ところが、戻されてよかったと思ったのは、次の40番に入ってからなのです。
多分30番をやり直ししなかったら、私は40番の最初で煮詰まって「もう無理」と思って投げだしていた…のではないか。

 この時、「教本を戻される意味」が分かったのでした。

 【教本が進まない理由】
  ・教本が段階的ではなく急に進んでしまって、抜け落ちが多い
  ・いま使っている教本の前段階のことが定着していない
 
  ということが考えられます。これは、移動の生徒ほど見えにくい問題だと考えています。

  教本レベルを「戻された」と思っても、そこには必ず戻す理由があるということを私はお伝えできるようにしていきたいと考えています。

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