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切り絵【秋の森とリス】

B型作業所に通所する生活にも慣れて参りまして、先日、初めての工賃を頂くこととなりました。
まだ最初の一歩を踏み出したに過ぎない段階ではございますが、自分の中では、社会復帰をすることが出来たと言える大事な出来事でございました。

仕事と家の往復、もしくは病院と家の往復になってしまう生活は味気ないと言っている方が、私が通っている地域活動支援センターにいらっしゃいました。
そういった声に応えて居場所を設けてくれているのが、地域活動支援センターなのだとその方は、仰っていました。

発達障害、知的障害を持っている方が通える所と、精神科への通院歴を持っている方が通える所の、2つの地域活動支援センターに私は現在通っております。

どちらに赴くときでも、最近は切り絵を持ち込んで、一人静かに作業をしております。

細かい作業をしていることをよく驚かれるのですが、ある時、職員の方が切り絵を褒めて下さったときに、「ロゴを描いてもらいたいな」と軽く仰っていたのですが、私はロゴなどは描いたこともなく、描けないだろうと思っておりましたので、なんだか気恥ずかしくなり、口をつぐんでおりました。

ロゴは描けないまでも、頭の中にあるイメージを描くことは出来ると思い立ち、試しに描いてみたものを、せっかくなので切り絵にしてみました。

題名は「秋の森とリス」です。
リスという動物のことを、私はあまりよく知りません。

何かの本で、ネズミの仲間であるということと、街にいるのがネズミ、森にいるのがリスという言い方をしているという話を聞いたことがあるのですが、果たして本当なのかどうなのか、それ以上深く知ろうと思わなかったことも事実で、それほどにリスについて何も知識がございません。

今回イメージとして浮かんでしまった絵は、そのような確かかどうかわからない認識が元となっておりますが、その点はご了承ください。

リスは、森にいる動物の中では、比較的か弱い存在なのではないかというイメージがございました。
仮に彼らの住処が森で、森の中で弱肉強食の優位を取れる存在になることが難しい立場だとするならば、ハンデを持っている人間に重ねることが出来るのではと、想像をしました。
勝手に重ねてしまってリスには申し訳ないと思いながらも、もし、か弱い小動物たちのために、森が一年の中で最も豊かな秋の森を、プレゼントすることが出来たらという、そんな願いや恩恵の中にいるような気持ちに私はなっております。

病気や障害という診断を受けると、普通の人と区別されてしまうということに、落ち込んでしまう人も多いと思いますが、病気や障害だと区別することは、差別をさせないために有効なのだろうと、私は思っております。
同じ世界で生きていたら、相手も自分となんとなく同じだと思ってしまうものですが、見ただけでは分からない病気や障害を持っている人たちは、同じことを要求されてしまうと辛くなってしまうことがあると思います。

同じだと思っていると、同じではないことにイライラしたり、求めていることをなんでやってくれないのかなって、気持ちのやり場が無くなったり、相手が悪いのか自分が悪いのかわからなくなって自己嫌悪に陥ってしまうことがあったり、理由がわからないと関わってくれる周囲の人が疲弊してしまいます。

疲弊してしまうと、もうその人との関わりを避けるしかないことになってしまい、人によっては自分が悪かったのかもしれないと自分を責め続け、苦手意識はずっとしこりのように残るものでございます。
それは同じような人に遭遇したときに、うっすらとした差別的な目を向けてしまう要因にもなるように思います。

見ただけでは分からない病気や障害は特に、この人は病気なんだ、障害なんだということをはっきり認識してもらうことで、周囲の人が自分を責めてしまうことを減らせるようにしていくことと、少しでも周囲の人が疲れないで済むようにしていくことは大事でございますが、そのために、病気や障害を持っている人たちが集まれる場所やコミュニティは、大きな意義を持っているような気が致します。

悠々と生きていくためには、自分と同じような人との関係や、所属する環境、居場所が誰しも必要なのだと思うのですが、病気や障害という少数な括りに含まれることになっても、それぞれの地域の支援センターには、同じような病気や障害を持った人がいるコミュニティがあるということを知れたことは、安心の一役を買っていると思っております。

人間的な考え方ですが、森が豊かになると、美味しいものを食べることも、着飾ることも、文化を楽しむことも、リスはするのではないかと思ったとき、きっと、自分のことを今までよりも好きになれたり、才能が開花したり、楽しいことが増えていったりして、とってもふくよかな可愛いらしいリスになっていくような絵を描いております。

正直、自分が通っている地域活動支援センターの私の勝手なイメージ絵なので、職員の方にお見せするのは気恥ずかしく、このままお見せすることなく、本棚の奥にしまっておく予定でございます。

デッサンなどのように、見たものをそのままそっくりに描くことは、どちらかというと苦手で、画力がある訳ではないのですが、頭の中にあるイメージを絵に描くことが、昔からとても好きでございました。

郵便ポストを描こうと思って、実物のポストを見ながら描いても、あまり上手に描けないので、いつも頭の中にある「ポストってこういうイメージ」という抽象的な絵になってしまうことが、子供の頃に自分は絵が下手なんだと思い込んでいた理由だったように思います。

いつもは黒い画用紙を使っているのですが、今回は、余っているクラフト紙を使ってみました。
少し明るい印象になったような気が致します。

では、また次も見て頂けましたら、嬉しいです。

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