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ゼンタングルの隠蔽された歴史

日本で合法的に楽しめる薬物はなんだろう。カフェイン、アルコール、ニコチン。このあたりは合法的なだけでなく、ある程度社会的な地位を得ていると思う。カフェインはどのエナジードリンクにも必ず含まれているし、アルコールは酒は百薬の長とか、酒は憂いを払う玉箒なんて、便利な言葉まである。煙草はこの中では一番毛嫌いされていて、喫煙できる飲食店も減っているみたいだけど、煙草を吸っていても捕まることはない。


 他には、某風邪薬を何十錠と大量に飲むと、微量に含まれている覚せい剤と似た化合物でトリップすることができるという。合法的(?)みなさんも他にも捕まらずに酔う方法を一つや二つ思いつくと思う。

 薬物による変容意識は音楽やアートに取り入れられて、と薬物とアートの歴史を語れればかっこいいのだけど、そんな話があるという程度にしか知らない。ウィリアムバロウズの『裸のランチ』は読んだけど、あれを電車で読むことだけはおススメできません。文脈が崩壊してるので、次の行を追うのが大変で、電車で読むと酔いますよ。

 薬物とアートに関して書かれた、分かりやすい概要書、入門書を知ってれば教えてください。

 芸術家がアートに薬物を取り入れる目的はさまざまだろうけど、一つは、「薬物による変容意識を再現する」というものだ。意識はどこまで行っても主観的なものだから、それを客観的なものにしようと頑張るのだ。

 パソコンでゼンタングルと調べれば面白い画像がいくらでも出てくる。紙とペンを使って、ぐるぐるや、ナミナミ、規則的な模様を繰り返し書けば、それだけで薬物による変容意識を再現できるという。お手軽。

 このゼンタングルというのは仏教の「禅」と「タングル(絡まる)」からきている。禅と薬物の歴史も、たぶんアメリカの現代史において、無視できないトピックなので、良い感じの本があると思う。誰かいい概要書を知ってたら教えてください。

 にしても、このゼンタングル。本屋に行けば、リラクゼーションや作業療法の一環としてゼンタングルを勧めたり、ゼンタングルのやり方をまとめた本なども出ているのだが、僕が持っているゼンタングルの本の「ゼンタングルとは」のトピックには、薬物との関係が一切、語られていない。ゼンタングルが薬物とは全く独立した過程で誕生したとは考えられない(どう見たってサイケデリックアートだし)のだが、恐らく、ゼンタングルが市民権を得るために、ゼンタングルの歴史を隠蔽したかったのと思う。頑なに禅による瞑想状態を再現したアートですと書かれているのだけど、瞑想で酔えないから、みんなLSDに頼ったんだろうに……。

 何が言いたいかというと、一般人が片手間に瞑想したって、ゼンタングルのぐるぐる模様には辿り着けないけど、LSDを舐めれば一発でぐるぐる模様を見れるのだから、やっぱりゼンタングルはLSDによる変容意識を再現したものです、と書く方が誠実だと思う。

 まあ、そんなこと書いて売れなくなるくらいなら、黙ってようってことなんだろうけど。こうしてゼンタングルの歴史は隠蔽されていくのかも……


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