最初で最後に。

卒業式が終わり、
みんなに一通りのお別れをして、
私は急いで校門に向かった。
少し年上の彼を待たせていたからだ。
「ごめんね、お待たせ」
そう声をかければ、
「思いのほか早かったね。
もっとゆっくりでも良かったのに」
って優しく笑う。
「大丈夫だよ。
またすぐにみんなで遊ぶ約束してるもん」
「そっかそっか」と言いながら
そっと私の左手を彼の右手が包んだ。

「そう言えば、制服姿、初めて見た」
彼がそう呟いた。
「しかも今日卒業式だから最初で最後だよ」
そう言って笑いかけると彼は「そっかあ…」と
なにか考えているような顔をした。

考えことをしている彼を
そっと見上げて改めて思ったことは、
私は彼の横顔が好きだ。
全部好きなんでだけどね。
えっと、長いまつげと綺麗な鼻筋、
すごく完成度の高い横顔をしていると思う。
そんな横顔を見ながら
最後の制服姿で最後の通学路を
初めて彼と歩けるのが嬉しかった。
なんていうか、卒業祝い的な?

ぼんやりそんなことを思っていたら、
考えごとをしていた彼がハッとした顔をして
私にこう問いかけた。

「なあ、最初で最後のついでに
最初で最後の制服デートしようよ」
そんなこと言うから赤くなった顔を隠すために
返事をするより先に抱きついた。

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