デカンについての覚書

黄道十二宮(360度の円の12分割)の10度ごとの区分にしたがって対応する天体を、フェースと呼びます。
アストロロジー(占星術)のエッセンシャル・ディグニティ(品位)の一つです。
フェースはカルデア配列の順番で並べられています。
フィルダリアや、インド占星術のヴィショッタリダーシャにも、カルデア配列が見られます。

デューラーの古代性とスキファノイア宮の国際的占星術 (ヴァールブルク著作集5)に、デーカンについて詳細な記述があります。以下に引用します。

同書 p.274
「デカン」(句星)は、古代エジプト天文学に起源をもち、日の出まえに東の空に順次10日間ずつ見える、計36星座のことを指していた。それがプトレマイオス朝の時代に、ギリシア・バビロニア起源の獣帯(黄道十二宮)に組み込まれ、その結果、獣帯の円を10度ずつ分割する領域をデカンと呼ぶことになった。

エジプトでは恒星天を取り入れていたようですが、黄道十二宮(ギリシア・バビロニア起源)に組み込まれることでアストロロジーの概念として発展して行きました。

同書では、古代エジプト起源説を唱えていますが、別の書『図説 占星術事典  池田 信雄 (翻訳)』では、古代エジプトより前に遡って記述しています。以下に引用します。

図説 占星術事典 p.164
もともと、36のデカンはバビロニアで計時に役立てられた黄道上の36個の時の星であった。デカンの導入が、1日を24時間に分割する方法の基礎になったのだと思われる。それが、エジプトでは後にすっかり意味を変え、10°の長さの獣帯をそれぞれ支配する神々となった。もっと時代が下ると、エジプト占星術はー起源を忘却した末にーデカンの神々を、ふたたびおのおののデカンとともに昇ってくる星々に帰属させた。こうした紆余曲折の結果、時とともに、デカンの意味に混乱が生じることになった。

引用箇所と同じページには、占星術師(古代の天文学者)の名前に従った対応表があります。
フィルミクスは、各デカンに名称を与えています。
マニリウスは、星座を割り当てました。
トイクロスが割り当てた太陽系の7天体の順番は、カルデア配列です。エジプト配列という名称が付けられています。
ヴァラハミヒラが割り当てたインド配列は、カルデア配列とは違います。

しかし、これら全ては、360度の円の体系の中での話です。420度の円を認識できない・させない世界で展開されます。

ディグリー・シンボリズムが、伝統的占星術だけでなくモダン占星術からも異端視されているのは、360度の円の体系で展開することしか見えていないからではないでしょうか。
ディグリー・シンボリズムは、1度ずつ意味を解釈するのではなく、体系化できるもののはずです。それは、420度の円のプリズム構造で全体性を把握することによって可能になるのではないかと思います。

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