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LGBTの研修で私が「逃げ恥」の話をする理由。

こんにちは^^さきです*

さて、今回はこんなタイトルで書いてみます。LGBTの研修で私が「逃げ恥」の話をする理由。

「LGBTと逃げ恥って何の関係があんの?!」って、思いますよね(笑)

単に私が大の逃げ恥ファン!ということもあるのですが、逃げ恥で扱っているテーマはLGBTを考える上ですごく大事なことにもつながっていると考えています。

今回はそこのところを解説していきたいと思います!

◆「逃げ恥」とは?

「逃げるは恥だが役に立つ」は海野つなみさんによる漫画作品です。2016年10月にTBS系列で新垣結衣・星野源主演でテレビドラマ化され、大ヒットしました。主演も務めた星野源の歌う主題歌「恋」と、振り付けの恋ダンスがブームに。

ちなみに、2019年3月から「KISS」誌上で続編が連載再開されました!これもすごく気になるところ。

◆特にお気に入りのシーンその1

名シーンや名言はたくさんあるのですが、LGBTの研修で紹介しているのはこのシーン。

主人公・みくり(新垣結衣)の叔母である百合ちゃん(石田ゆり子)は、やりたいことを仕事にして会社では管理職も務めるキャリアウーマンだが、49歳で未婚で処女のまま閉経を迎えようとしているキャラクター。

物語の中で、17歳年下のイケメン風見さん(大谷亮平)とお互いを恋愛対象として意識するようになるが、年齢差を気にして自分の気持ちに正直にはいられない。

そんな中で、同じく風見さんを狙う25歳の肉食系女子・五十嵐が百合ちゃんにケンカをふっかけてきます。

五十嵐「相席いいですか?」

百合ちゃん「他にも空いてる席あるみたいだけど」

五十嵐「お姉さんと風見さんってどういう関係なんですか?17歳も違うのに、恋愛対象ってことはないですよね?」

百合ちゃん「歳までよくご存知で」

五十嵐「50にもなって若い男に色目使うなんて虚しくなりませんか?」

百合ちゃん「訂正箇所が多過ぎて、どこから赤を入れたらいいものか…」

五十嵐「正確には49歳。でも周りから見たら同じです。アイチエイジングにお金を出す女はいるけど、老いを進んで買う女はいない」

百合ちゃん「あなたは随分と、自分の若さに価値を見出しているのね」

五十嵐「お姉さんの半分の歳なので」

百合ちゃん「私が虚しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性がこの国にはたくさんいるということ」

「いまあなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ」

「自分がバカにしていものに自分がなる。それってつらいんじゃないかな?」

そして、ここが決め台詞!

「私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその1つ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」

そう、ここがポイントなんです。

ここでは年齢が【呪い】の例として出されていましたが、この【呪い】って「性」の話にもすごく繋がってくると思うんです!

◆「性」にまつわる呪い

最近は「LGBT」という言葉が広がってきましたが、「LGBT」という言葉と「セクシュアルマイノリティ」という言葉ってイコールだと思っていませんか?

LGBT」は、
Lesbian:レズビアン(女性として女性を恋愛対象とする人)
Gay:ゲイ(男性として男性を恋愛対象とする人)
Bisexual:バイセクシュアル(女性と男性どちらも恋愛対象とする人※同時に2人以上と付き合うという意味ではない)
Transgender:トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性とは異なる性を生きる人、あるいは生きたいと思っている人)
という4つの英単語の頭文字をくっつけて作られた言葉です。

でも、人は本来ものすごく多様な気持ちや考え、環境、表現、関係性などのあり方をしています。

そんな人間たちを、「男」と「女」というたった2つに分けるなんて、そもそもすごく乱暴なことなんです。

そこに「LGBT」を加えても同じこと。セクシュアリティ(その人の性のあり方)は、身体的特徴、性自認、性表現、性的指向、恋愛的指向…などなどすごくたくさんの要素の組み合わせの上で成り立っています。

さらにそのひとつひとつの要素はスペクトラム(現象があいまいな境界をもちながら連続していること)で、グラデーションになっています。

それらをLGBTなどと定義しているのはあくまで仮置きで、ひとつの単語で多様なその人を表し切るのはとても難しいです。

なので、私は丁寧にこのテーマについて語るときは、「セクシュアルマイノリティ=私たちの頭の中にあるアタリマエとは異なるあり方をしている人たち」と言うようにしています。

ここで言っている、「私たちの頭の中にあるアタリマエ」というのは、【性別は男と女の2つしかない】、【女は男を、男は女を好きになるものだ】、【恋愛や性行為をしないのはおかしいことだ】、【恋愛や結婚は1人としかできない】…etcというようなことです。

◆「セクシュアルマイノリティ」とは誰のことか?

ここまで聞いていかがでしょうか?

「ふーん。なんか大変そうね」と他人事に思っている人もいるかもしれません。

でも、私はいま挙げたようなアタリマエ=「呪い」に苦しんでる人って、いわゆるセクシュアルマイノリティの人たちだけじゃないんじゃないかな?と、思うんです。

百合ちゃんの言うように、私たちの周りにはたくさんの呪いがあります。特に、性にまつわることはかなり強固に存在しています。

例えば、こんなことを聞いたり、感じたりしたことはありませんか?

・夫婦は同じ姓を名乗り、同居するものだ。
・付き合うなら年齢は男が上がいい。
・恋愛や性に対して、女性は受身的で、男は能動的であるべきだ。
・恋愛や性行為に興味ないのはおかしい。
・◯歳までに結婚したほうがいい。
・女は若いほうが価値がある。
・独身や性経験がないのは恥ずかしいことだ。…etc

◆「呪い」の恐ろしさ

改めて、「呪い」という言葉を私流に定義すると、こうなります。

 生きている中で周りにいる人や、メディアなどを通して社会から言われるメッセージを受けて生じる、「自分はこうあるべきだ」「自分は~~してはいけない」という思い込み。

百合ちゃんも、先述のシーンの後、別の主要キャラの1人である沼田さん(古田新太)とこんなふうに語り合っています。

百合ちゃん「なんだかんだ言って、年齢っていう呪縛に一番縛られてたのは私なのよね。
怖気付いちゃったのよ、自分の歳に引け目を感じて付き合うよりも、友達でいたほうがいいかなぁって。そう都合よくいかなかった」

沼田さん「俺も怖気付いてたとこある。いつも振られちゃうから。決定的なメールは送らなくて、避けて避けて、引き伸ばしてた」

百合ちゃん「お互い、ダメな大人」

沼田さん「何を守ってんだかねぇ」


若い女性に年齢という呪いを指摘した百合ちゃんが、その呪縛に一番縛られてたのは自分だ、と振り返っています。

こんなふうに、私たちは育ってきた環境の中で周りの言う「普通」や「こうあるべき」という呪いに縛られていきます。

そうしているうちに、私たちは自分自身を縛り、そしてそんな私たちが今度は周りをも縛っていくようになるんではないでしょうか?


◆「呪い」の連鎖を止めるために。

そのために、何ができるのか?

目の前の相手との関わり、日々使う言葉を意識的になっていくことが大事だと思っています。

「普通、こうでしょ?」「〜〜して当たり前でしょ?」と言わないこと。そういう言葉と出会ったら「本当にそう?」と問いかけること。

そういう小さな積み重ねが大切で。それをないがしろにしていると、ついには差別や虐殺といった大きな暴力につながっていくんだと思います。


私の名刺には、「"普通"ってなに?を問い続ける」と書いてあるのですが、それを見せるといろんな人がカミングアウトしてくれるようになりました。

世の中にあるさまざまなマイノリティたちが、手と手を取り合って、面倒くさいけど話し合ったり、ケンカしたり、距離を置いてみたりしながら、一緒につながっていけたら今よりもっとやさしい世界になると信じています。


最後に逃げ恥のラストシーンからメッセージを。

「私たちを縛る全てのものから。目に見えない小さな痛みから。いつの日か解き放たれて、時に泣いても笑っていけますように」


おわり。




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