性的「指向」?「志向」?「嗜好」?
こんにちは^^さきです。
前回の記事が意外と反応があって嬉しかったです◎
いただいた感想の中に「性的嗜好」という言葉を使われていた方がいらっしゃいました。
そこでちょっと気になるところがあったので書いてみたいと思います。
◆「せいてきしこう」って何?
「しこう」という言葉にはいくつかの漢字をはめることができます。
①嗜好:ある物を特に好み、それに親しむこと。好み。主に飲食物についていう。
②志向:心がその物事を目指し、それに向かうこと。例えばプラス志向は「プラスに考えようと思ってそれを目指すこと」という意味になります。
③指向:する事が初めからその方向を指して向かうこと。
英語でも、嗜好は「preference」、志向は「intention」、指向は「orientation」とそれぞれ違う訳語が当てられます。
LGBTQやセクシュアルマイノリティについて語るときは、「性的指向(sexual orientation)」が使われます。
(嗜好や志向が使われる記事もありますがそれは間違いです)
この用語が使われるには歴史的な経緯があります。
以下、Wikipedia「性的指向」より転載。
性的嗜好(sexual preference)と性的指向(sexual orientation)はその意味が大きく重なる用語であるが、心理学研究においては英語の含意から前者は自発的選択の結果得られた後天的性質、後者は生来不変である先天的性質として区別されている。sexual orientationの用語が成立した経緯は、1991年にアメリカ心理学会が、sexual preferenceの用語はレズビアン、ゲイ、バイセクシャルの人々に自発的選択の帰結であるという印象を与えるため、sexual orientationの用語を使用することを推奨するという指針を表明したことによる。よってそれ以降、心理学、精神医学などの学術的分野においては、sexual orientationの用語が用いられるようになった。
「性的嗜好」や「性的志向」という言葉には、【自分で意識的に選択した】というニュアンスが含まれています。
ですが、自分の性的な欲求や恋愛感情など他者に対して生じる感覚は、自らの意識で「こっちにきめーた!」「今日からあっちにかーえよっと」と簡単に変えられるものではない。
そういう含意を込めて、sexual orientationという言葉が採用され、その訳語に「性的指向」という言葉が当てられました。
「言葉なんてどうでもいいじゃん、面倒くさいこと言うなよ」という人もいるかもなぁと思います。
けれど、この歴史的な経緯にはおそらく、自分の存在をどのように外部(他者や社会)との間でコミュニケーションしながら伝え、また伝え返して、という双方向なやり取りの中で生まれたのだろうと想像します。
自分とは何か?と迷い、悩んできた当事者たちの声と、その声に耳を傾け応答してきた周囲の人たち。
その双方の存在と気持ちに思い馳せると、言葉に意識的に、丁寧に向き合いたいなと私は思うのです。