第六話 奇襲

 SSSR《トリプルエスレアクラス》ボトムドール<紅>は光子波動エンジンを全開にして巨大なボトムウォーリアーの上空を越えると、隠蔽装甲《ステルス》のまま一直線に地下要塞に突っ込んでいった。
 背中の聖槍<光神ルーの槍>を引き抜いて、そのまま一閃する。

 凄まじい衝撃波が地下要塞の外壁を一撃で破壊した。 
 千機ほどの巨大なボトムウォーリアーは全くの置き去りで、気づいたのはボトムドール<紅>が地下要塞内に侵入した後だった。

(ライト君、あなた、案外、大胆不敵の暴れん坊なんですね?)

 あまりの無鉄砲さに少し呆れながら<常世岐姫命>は言った。
 光子波動エンジンに反重力エンジンを併用して、普通の機体では考えられない鋭角的な動きで障害物を避けて、超高速で施設内を飛行していく。

 隠蔽装甲《ステルス》のままなので、監視カメラにも幽霊《ゴースト》が巻き起こした一陣の風のようなものしか補足されていないだろう。

(このまま時空偏位の中心点に行きますよ)

(はい)

 <常世岐姫命>は短く答える。

 メインモニターの左側の丸い<時空レーダー>に緑の光点が見える。
 反重力エンジンの運用、『宇宙ステージ』での無重力戦闘においては、この<時空レーダー>がなければ敵を捕捉することすらできない。 
 ゆえに『宇宙ステージ』に侵入できる数少ない上位機体である、ボトムドール<紅>には標準装備されている。

 通常プレーヤーの初期機体<ボトムストライカー>は陸戦能力しかなく、飛行ユニットは後付けのブースターになる。
 女性的な華奢な機体である<ボトムドール>シリーズは、見かけによらず、ハイパワー、高機動、最初から飛行ユニット付属の機体が多いのだが高価なものであり、かなり経験値の高いプレーヤーしか入手できないことが多かった。

 ライトは突然開けた視界に思わず目を疑った。
 巨大な緑色の光を放つ球体が円筒形のジオフロントの空間に浮かんでいた。
 その広さはライトのボトムドールが豆粒のように見えるほど広大だった。
 円筒形の空間の天井は遥か彼方にあるようで全く見えなかった。
 この空間自体がどこか次元空間に接続している可能性もあった。

(おそらくこれが『異世界転位門』です。あの緑色の球体を破壊してください)

 <常世岐姫命>はエリィの声でライトに指示した。
 モニターに映る彼女の表情はめずらしく緊張している。 

(了解)

 ライトは背中の聖槍<光神ルーの槍>を構え直して無造作に一閃させた。
 緑色の球体がはじける。

 その刹那、時間が遅延していくのが分かった。
 スローモーションのような時間の中で、空間に穴が開いたようにボトムドール<紅>が引き寄せられていく。
 その先に暗黒の重力特異点が出現していた。

(これは?)

(罠です。急速離脱して下さい)

(光子波動エンジン全開! 反重力エンジンも並列運転に切替!)

 全ての動力を集中してブラックホールからの脱出をはかる。

 ブラックホールには事象の地平面、シュヴァルツシルト面と呼ばれる情報伝達の境界がある。
 情報は光や電磁波などにより伝達され、最大速度は光速である。
 ブラックホールは光さえ脱出できない天体であり、そこに落ち込んだ場合、どこに飛ばされるか分からない。
 それどころか、ボトムドール<紅>の機体がそこまでもつのかも全く不明であった。

(どんどん中心点に引き寄せられていきます)

 ライトは<時空レーダー>に映る重力特異点との距離の数字が少なくなっていくのを、ただ、見つめるしかなかった。オレンジ色のカウンターが高速で回っていく。
 すでに光子波動エンジン、反重力エンジンの出力はマックスだった。

(――――ライト君、時空転移しましょう)

 ボトムドール<紅>には奥の手としてそういう機能もあった。
 まさにスペシャル仕様の機体である。

(でも、この状態では転移座標が特定できません)

 転移先に障害物があれば大爆発をおこしてしまう怖れがあった。

(なるべく障害物のない上空50メートルに設定して適当に飛びます)

(――――了解です) 

 ライトは覚悟を決めた。
 この辺りの冷静さがライトの長所であるが、<常世岐姫命>としては物足りなさもあった。 

(座標適当、時空転移します!) 

 ボトムドール<紅>は突如、姿を消した。


     †



 ライトたちはしばし亜空間トンネルを抜けて、光のある所を目指した。
 転移した場所は障害物のない空の上であったが、エンジン不調で墜落する羽目になった。
 広大な緑の森が眼下に広がっていた。

 幸い、緑の樹木がクッションになって怪我もなかったが、周囲は鬱蒼《うっそう》とした森であった。
 ライトと<常世岐姫命>は仕方なく機体を降りると、森の中を探索することにした。

(見たこともない森ですね。こんな場所、<刀撃ロボパラ>のワールドにありましたっけ?)

(………そうですね)

 <常世岐姫命>はライトの言葉に上の空で答えた。
 何か考え事をしている様子だった。

 森の中は涼しく静かで、清らかな水が流れる小川が幾つもあった。
 人が座れるような岩が所々にあったが、<常世岐姫命>はそこに掌を当てて瞑目して何かを感じ取っていた。

(<常世岐姫命>さま、一体、ここはどこなんでしょう?)

(―――ライト君、ここはゲームの世界ではなく、現実の世界よ)

 <常世岐姫命>は重大な事実をさらりと言った。

(それはどういうことですか?)

(…………)

 <常世岐姫命>の答えはなく、重苦しい沈黙が流れる。
 しばらくいくと、森の切れ目に大きな道が現れた。
 幅二十メートルはある黄土色の砂が敷きつめられた道である。
 だが、どうやらその答えを知るものが、みたらし団子を食べながら歩いてきたようである。

「ハットリ隊長!」

 ライトは懐かしい顔を見つけて、思わず呼びかけた。
 ハットリは今日は普段着らしく、Gパンに白いポロシャツ姿である。
 髪は刈り上げて短く切りそろえられていた。
 みたらし団子を食べていたがふと立ち止まった。
 メガネをくいっと上げるしぐさをしながら、ライトの方を見た。

「君は誰だい?」

 ライトは予想外の返答に、二の句が継げなかった。

 


(あとがき)

 第42話 奇襲 - 僕の彼女はアンドロイド/複垢調査官 飛騨亜礼 - カクヨム にも書いてますが、途中やめになっていたので、完結させないとね。

 第四章 僕の彼女はアンドロイド 
 第五章 複垢狩りゲーム
 第六章 《複垢調査官》飛騨亜礼の華麗なる帰還


 noteに書いていた「第四章 僕の彼女はアンドロイド」は「近未来編」みたいな話になるんですが、やっと「現代編」の「第五章 複垢狩りゲーム」に繋がりつつあります。第五章と六章はほとんで繋がってるので

 6月から「安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚 作者 坂崎文明」をアルファポリスの第2回歴史・時代小説大賞に出してるので、この続きを書いていくのですが、何とか10万字ぐらいまで持っていこうと思ってます。

 第三章は「飛鳥、奈良、平安編」の予定ですが、「第二章 安土桃山時代編」が終われば御の字というか、第四章で「現代決戦編」になるので、15~20万字ぐらいのボリュームになりそうな感じです。  

 「エッセイ・実話・実用作品 コンテスト」に応募する「洗脳社会<マトリックス>の謎を解く~科学も医学も迷信だった~ 作者 坂崎文明」の〆切が6/1~7/14なのでぼちぼち更新しないとね。

 あまりにもデストピアなので不人気で読者選考に通らない可能性もありますが(泣)単なる事実なんですがね。心因性の病気で何で脳炎になるのか疑問すぎる。半身不随とかにならないだろう。

 子宮頸がんワクチンの薬害を必死で否定するというのがそもそも可笑しくて、厚生省が治療の研究をするのが筋だと思うんですがね。そういう検証結果も出てるしね。アメリカの金持ちでなくて日本国の国民を守るのがあんたらの仕事ではないのか。アホかと思う。お前たちは製薬会社の犬か。ワンワン。

 まあ、とりあえず、生命とは何かというか、細菌とウイルスも含めて人間は一種の複合生命体ではないかと思ってます。

 細菌やウイルスを絶滅することは出来ないので(抗生物質が効かなくなる)、共存の道を探るべきだし、今までの細菌とウイルスと戦うというスタンスを改める必要があると思います。

腸のことを知れば知るほど面白くなってくる。  

最近では腸と脳がお互いに調整し合うことがわかってきて腸-脳相関という言葉も出てきています。   

簡単に言うと、腸と脳が神経系やホルモン、サイトカインなど共通の情報伝達物質と受容体を介し、双方向的なネットワークを形成していることや脳が関係する腸管刺激因子に対して腸内細菌がその刺激を調整していることなどです。   

また、神経の発達障害や脳の発達と行動に腸内細菌叢が影響を与えていることもわかってきました。   

例えばここ10年で2倍に増えたうつ病ですが、セロトニンなど神経伝達物質の不足や腸内細菌の減少が原因と考えている研究者もいます。 

 神経伝達物質とは脳内の細胞間の連絡に必要な物質で、百種類以上ありますが、代表として次の3つのアミノ酸が鉄分や葉酸、ビタミンB6の作用により化学変化して作られます。

 グルタミンからはGABAが作られ、栄養素として取らなければならない必須アミノ酸であるフェニルアラニンからはドーパミン、そしてトリプトファンからはセロトニンが作られ、それぞれリラックス感ややる気や幸福感をもたらします。 

 これらはすべて脳内で作られているのではなく、ほとんどが腸で作られていて、セロトニンは95%が腸内で合成されています。  

 このセロトニンは幸せ物質とも言われ、その多くが脳に達すれば幸福感も倍増と考えたいのですが、セロトニンは脳血液関門という関所を通ることができず、脳内に入れません。かえって増えすぎると過敏性腸症候群を引き起こしてしまうともいわれています。  

 そこで、うまく働くのがこれらの前駆物質(セロトニンでいえば5-HTP)です。  

 前駆物質は脳血液関門を通過できるので脳で神経伝達物質に変わり脳に作用することができます。  

 つまり、腸内細菌が沢山の前駆物質を作ると脳に充分送られて幸せ物質となり、良好な精神状態が作られます。  

腸内細菌が脳を守る


 腸内細菌によってうつ病が治るとか、脳と腸内細菌の関係も見えてきてるわけです。安部総理の過敏性腸症候群も腸でセレトニン作りすぎだろうと思ったりします。食事療法で治ると思うよ。

 腸は第二の脳とも呼ばれているし、腸内細菌とセットで人間という生命体は構成される。

 人間の細胞もウイルスや細菌の集合体だから、人間とウイルス、細菌は全く同じものなんだよね。

腸内細菌が脳を支配する?サイコバイオティクスの発見で揺らぐ『自己』

 ウイルスの人間の遺伝子書換え→進化の関係も見えつつあるのに、古い科学的価値観に縛られてる場合ではない。

 パスツールも遺言では今のウィルス学は間違ってるといってますし、次回は腸内細菌とかと脳の関係でも書きますか。

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