「あの頃の五味が帰ってきた!」と言われる40歳の五味隆典。今、辛いんじゃないかと思う。

五味隆典って知ってますか。日本の総合格闘家です。もう40歳くらいの超ベテランです。

2000年くらいに「PRIDE」っていう総合格闘技のイベントがあって、そこで五味は活躍していました。「火の玉ボーイ」なんて呼ばれてて、KOにこだわるアグレッシブなファイトスタイルが人気で。大晦日にKOで勝った時なんか「大晦日に判定?ダメだよ、KOじゃなきゃ!」ってマイクパフォーマンスしてて、当時中学生の僕はスゲーなーかっこいいなーと思ってたんですね。

その後しばらく格闘技を見てなかったけど、この前テレビで「RIZIN」っていう総合格闘技の試合を見てたら、そこに五味が出ていた。

10年ぶりくらいに五味を見て「おぉ…年とったな」って思ってしまった。そりゃ10年経てば年も取るか。そこでメルビン・ギラードっていう外国人選手とガンガン打ち合ってKO勝ちしてたんだけど、実況が「あの頃の五味が帰ってきた~!!」ってしきりに言ってるのを聞いて「あー五味は辛いんじゃないか」って思ってしまった。

なんでかって言うと「今の五味が何をしてくれるか」っていうことが全く期待されてない。あの頃の、10年前の五味にどれだけ近づけるか?ってことしか期待されてないのが、すごく辛いじゃないかと思った。

例えばプロ野球選手のイチローだと、40歳になったイチローが、50歳になったイチローが何を見せてくれるのか?ってことを周りは期待すると思う。一方、五味は「あの頃の五味が帰ってきた」「火の玉ボーイが帰ってきた」って、そればっかり言われている。40歳の五味隆典が何をしてくれるのか?ってことに、誰も注目していない。

ところで僕の職業は鍼灸師なんですけど、サラリーマンじゃなくて鍼灸師になろうと思ったのは「年齢とともに価値のある人間になりたい」って思ったからなんです。仮にですよ。もし僕の技術が今ピークを迎えてるとして、10年後20年後に「今日の施術よかったね。あのころ思い出したよ」みたいなこと患者さんに言われたら、すごく辛い(そんな状況があるか分からんけど)。

鍼灸師はアスリートと違って肉体の衰えがパフォーマンスに関係しないと思ったからこそ、この仕事を選んだ。あとサラリーマンも、せっかく定年まで勤めあげたのに会社辞めたらただの人、なんて話も聞く。実際、僕の父がそうだった。退職金と年金、最低限の生活ができるくらいは貰ってるらしいが、父は何かしら働きたいらしい。しかし、再就職先がなかなか見つからない。人生の半分以上をささげた仕事が、会社を辞めたら何の役にも立たない。一円の価値も生み出さない。それってすごく悲しいな、と思ったんですよ。

話を戻すと、五味個人としては「今の体で何ができるか」って考えながら日々トレーニングしてると思う。40歳のリアルな身体と向き合ってると思うんですよ。腹も出てきて、息切れもしやすくて、思うように減量できない自分の身体と。

だけど、メディアは「どれだけ10年前を取り戻せるか」みたいなことばっかり言ってて。五味自身もそれが自分の役割と思ってるんだろうけど、辛いんじゃないかと思うんですよね。プロの格闘家でもない僕がこんなこと言うのは、余計なお世話ですけど。

最近のインタビューで「3連勝して引退する」って言ってたので、それに向けて頑張って欲しい。ちなみに矢地祐介には三角締めで一本負けしてたけど「あれは実質勝ちみたいなもん」らしいので、矢地裕介→メルビン・ギラードで、今2連勝中。どんな計算してるのか。

がんばれ、五味。応援してる。

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