集落の芸能
2023.02.28 さかい 悠
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今回も中国赴任当時の出来事を紹介 2003年3月中旬の記録である。
休みの度にあちこち散策していた時期の体験がもと。
ふらりと入り込んだ狭い路地に車が通るたびに砂ほこりが舞う、息苦しささえ感じる。
両脇の古ぼけたレンガ作りの塀が自転車と車ではすれ違うだけで思わず足を付いてしまうほどの狭さ
その路地を人が通り、荷車が通る、更に小さな子供が駈けている 時折オートバイが唸るように走る 成れない路地は走りにくい やはりここも古い街なのだろうか?
広東省中山市にはまだまだ知らないところがたくさんある。
日曜日の昼食にはまだ早い ふらりと自転車のペダルを踏んでみたくなり出かけて来た
表現はふらりの言葉が正しくないかもしれない。
以前から会社の行き帰りに散策するには良いところと思っていた。
住んでいるアパートからそれほど遠くもない いつでも行けると思いつつ結局、今日に成った。 急ぐわけでもなく、わざと遠回りしながら足を漕ぐ もう寒さは感じない。
風は心地よい 薄汚れた路地の奥に何が有るのだろうと期待が膨らむ。
中国では村の入口や小さな集落、更に大きな通りには必ず、大きな門がある その門に村や集落の名前が書きこまれている。
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そして門にもいろいろな種類と形がある 以前から観察していて気づくことは一般的な門と、きらびやかな装飾を施した豪華なものまでいろんな種類がある これはその集落や村の豊かさを象徴しているのかと想像する。
丁度自転車をこぎながら集落に入り込んだところ、写真の門はごく一般的な構え、言わば村の入口にあたる場所。
細い路地を更に入っていくと十字路に出る 大きな大木の下に駄菓子屋らしき店が有る。
その前に広場がある、と言ってもそれほど広くはない 店の反対側に簡易の舞台が作られている。 子供を含めた何人かの人垣、近づいてみると舞台の横で珍しい楽器を手に3~4人の年寄りが演奏しながら歌の練習をしている その様子を子供たちが柵に腰掛け眺めている 今から何かが始まるのであろう 暫く様子を見ているが一向に始まる気配は無い。
時間は昼の1時を少し回った頃 はじめるにはまだ早いのかもしれない 少し付近をひと回りしてから帰りにでも、寄り道しよう。
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通りを道なりに走る 古い家並みが続く集落 しかし集落の道はさほど長くは続かない
通りが途切れた所で田畑が広がり、次の村の入口に出る この村の入口にも真新しい門が立っている この新しさは最近立て替えたのかもしれない。
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門をくぐると田畑が広がり視界がぐんと広がる 小さな河が道路わきを流れ、のどかな風景が有る。
物珍しそうに自転車に乗った若者が追い越しざまにじろりと睨んだ 当然だろう こんな姿で田舎道を走っていれば目に付く 派手なサングラスに短パン この辺では目立ちすぎる 最初来た頃は睨まれるたびにドキッとしたものだが最近は一向にかまわない むしろ話し掛けたくなる だだ残念な事に言葉が通じない ましてやここは広東語の世界 今の若者は普通語で教育を受けている為、言葉は通じる でもやはり心配 私が話す異質の発音では普通語も果たして通じるかである。
でも、勇気を出してありったけの単語を駆使し、会話に挑戦する事もある。
相手も中国人でないとすぐ解り、会話に同調してくれる事もある こんな事を繰り返せば、なんとか話し言葉も増えると期待する。
田植えはすでに終わり、青々とした水田が広がる しかし畑はまだ青さが乏しい。
高速道路の高架を潜り抜け別の村に入る 見覚えがある、以前来た記憶を思いだしてみた 会社からそれほど遠くない距離にいる この先のエリアは工場群 見るものは乏しそう。
先ほどのイベントも気になる そろそろ引き返そう。
午後の3時を少し回ったくらいの時間帯 先程は子供たちの人垣が今は道路にまで人が溢れている 普段でさえ狭い路地が自転車やオートバイでより狭くなっている 広場の道路を隔てた所に舞台が有り年老いた男女の1組が盛んに身振り手振りで演目の最中、身振り手振りが大げさで表情も豊か 道路を隔てた1番後ろの路地に自転車を立てかけ観戦する。
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相変わらずオートバイがうるさく通り過ぎる 更に車も入り込んでくる 観客の中に、こんな時にどうして車なんか入れるのだ、なんて言っているようだ 確かに狭い 何度もハンドルを切り返し通り過ぎる 演目も言葉が解れば少しは面白いのだろうがマイクを通しての言葉はまったく理解出来ない 時折、前の列で笑い声が聞こえる しかし大方の観客に表情が少ない 比較的静かな観戦 しばらくして演目が終わったらしい ぱらぱらと拍手が沸く 見ていた観客の中から何人かが舞台に上がり、出演者に握手を求める 田舎の舞台で直接出演者との触れ合う光景が微笑ましい。
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幕の合い間に舞台の隅で次の出演者が派手な化粧姿で客席を覗き込む 中国のテレビでよく見る京劇の出演者 日本でいう歌舞伎の厚化粧と似ている こんな所で京劇にお目にかかれるとは思わなかった おそらく次の演目に京劇が披露されるのか!
客席は椅子があるわけではなく思い思いのスタイルで腰掛けている 公園の中に椅子を持ち込んでいる者 大きな石の上に座り込んでいる者 公園の柵をうまく利用している者 見るスタイルは様々。
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客席の後方で面白いものを見つける! 小さな椅子を持ち込み、にわか仕立ての床屋が商売をしている 子供の頭をハサミやバリカンで器用に刈りこんでいる すぐ脇で親らしき大人があれこれと床屋に指図している きっと髪型の説明でもしているのだろう なんとものどかな商売風景 床屋にしてみればこんな一等地はない 私が見ている間だけでも、2人ほどの客を済ませ更に3人目に声をかけられたところ ぶらりと出かけた路地裏にこんなのどかな光景が有るとは思いもよらなかった。
いろんな出来事に触れ、おもしろ体験と機会が今後も有りそうだ。
舞台ではすでに京劇の役者が派手ないでたちで観客の興味をひいている 観客は京劇に興味が有る先ほどの演目とは違い表情、拍手、笑顔の度合いが全く違う。
時間にして1時間程 演目も含めこの集落の住人の表情、雰囲気、環境が体験できた。
幕間のタイミングを見計らい、移動することにした。
言葉が解ればそれなりに楽しめたと思う 表情、音楽に合わせた挙動が興味をひく。
観客は誰一人帰ろうとしない 演目がまだまだ続き、クライマックスはもっと後だろう。
床屋は相変わらず、忙しそうに手を休めることは無い。
外に出ると、街中の繁華街も興味が有るが今日の様に意外な発見も有る。
地場の住人の生活ぶりが観察できることは本当の異国体験となる。
さて今夜の夕食はどの店に入ろうかと思案しながら、ペダルを踏む!
街に明かりがつく頃に乾いた喉にビールと食事に在りつけるはず!
中国らしい、出会いに触れた1日!
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