中国の社員旅行
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23.06.30 さかい 悠
今から10年ほど前、中国で小規模な会社の総経理(責任者)をしていた頃 社員旅行の計画が持ち上がり、その経緯と実際に出かけた観光地の話題を紹介する。
本題の前に少し会社の状況を説明しておきます。
中国に進出する日系企業は人件費、材料費など安価な利点を利用して現地に生産拠点(工場)を立ち上げる事例が多かった、しかし進出は生産工場ばかりではない。
中国への進出が盛んな時期(2000年〜2010年頃)は大手だけではなく中小の会社も多く含まれていた。
日本で生産活動をしている場合、強力なサプライヤーチェーンが有り、そのグループでの協力体制で円滑に生産が行われる しかし海外では品質を含めた信頼のおける協力先が早急には得られない。 そうなると日本同様、現地でも協力を依頼するケースが増える 中小企業も進出に拍車が掛った時期と重なる。
例えば、生産に伴い、いろんな設備を持ち込み稼働させる 日本から持ち込んだ設備はフル稼働
当然設備も時に、故障もする 簡単な修理は現地で対応出来ても、精度に起因する主要な修理は、設備メーカーに頼るしかない メンテンナス要員を確保した設備メーカーが必要に成る。
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検査設備も同様で品質の根幹をなす精度維持には定期的な維持管理が必要 当然、その為のメーカーサポートが必要に成る。
生産設備、検査設備だけではない 例えば完成品を梱包する資材も製品の品質に影響する、そして、それぞれにやり方がある 製品に即した形状で納める為の工夫が必要になる。
あらゆるものが付随して生産が成り立つ その為、小規模であっても、現地に進出しなければならない会社が必要と成る サプライヤーチェーンがそっくり海外に移動する事に成る その為の進出も多くなる。
しかし最近はかなり事情が違う。
昨今の中国での技術進歩は目覚ましい、いろんな分野で現地企業で対応可能なところが多くなった。
生産設備の組み立てそのものも中国で行うなど、メーカー自体も現地化するケースも出てきた。
そうなるとただ単に、関連の日系企業だけを頼りに進出した企業は淘汰される。
私の担当した企業も当初の日系相手では商売が成り立たなくなる、最終的に何年か後に撤退を余儀なくされた。
昨今は中小は無論、大手さえも見直しをしなければ成らない状況に成ってきた。
理由はいろいろあるが一番の要因は人件費の高騰 更に中国ローカル企業の技術レベルが格段に上がっていることも理由である、ただ単に日系の会社と言うだけでは魅力がない。
当時 わが社は小規模と言っても日本の会社はそれなりに人数もいて実績もある。
現地の会社は商社機能に特化した為、それほど人員は必要ない。
簡単に言えば顧客の軒数に応じ営業マンの人員を確保する、経理を含めた事務処理、その他雑務の人員、運転手が居れば事足りる規模である。
当然通訳などは営業マンが兼務するといった具合で、いろんな仕事を兼務しながら臨機応変に仕事をこなすシステムとしなければいけない 中国の現地日系企業向けに商品を提供するのが主な仕事で有った。
その品物を製作するにはそれ程、難しい製品はない、ローカル企業に製作を依頼し、品質確認後、収める仕事が主である。
その品物は日本の技術が反映されているものも有り、現地の日系企業にとっては使い勝手も良く、当時は重宝された。
しかし一番の問題はコストである 同じような品物で有れば、日系相手と言えども相手は安価な品物を選ぶ、同等レベルで有ればコスト優先となる。
特に昨今は日系企業であっても、購買担当は中国人が担当するケースが多い その為 コスト面ではよりシビアと成る。
そんな苦労も有りながら前任者から引き継ぎ改善、整備を進めた結果、少しは会社らしく出来るまでに成った。
会社として落ち着いた時期に社員から、福利厚生面で会社として企画が全くないと指摘、確かに食事会を含め、社員達が交流するイベントが無かった。
中国ではどんな会社でも福利厚生を含めたイベントを定期に開催している。
社員全員参加の食事会 旅行などの催し、中には運動会、綱引き ボーリング大会など運動系を含めての催しは結構盛況 成績の優劣に応じて景品を出すなどして、大いに盛り上がる。
当時は今の様に娯楽も少なく、社員個人で贅沢をするなど、ほとんど無かった その為、この手の企画は社員にとっても楽しみ 会社の規模に関わらず、社員のやる気、士気高揚、連帯感につながる
そこで、当社も仕事が落ち着いた土日を挟んで社員旅行に行こうという事に成った。
但し、顧客に迷惑はかけられない、平日の業務に支障がない程度に企画する事にした。
車の移動で変則2泊3日 目的地はそれ程遠くは望めない。
あれこれ社員同士が意見交換し、目的地は広西省桂林と成る、金曜日の午後出発で高速道路を使うことにした。
当日目的地の桂林に着く事は時間的に無理、少しハードなスケジュールだが矢も得ない。
途中、宿泊を挟んで、翌日桂林の遊覧を楽しむ、後は状況に応じ行動する事にする。
主な行動ルートは以下の通りである。
3月2日 広東省深圳午後出発 ⇒ 広東省広州市 ⇒ 広西省賀州市(宿泊)
3月3日 広西省賀州市出発 ⇒ 広西省桂林陽朔(桂林)着 ⇒ 桂林遊覧 ⇒
広西省桂林陽朔(西街宿泊)
3月4日 広西省桂林陽朔出発 ⇒ 広西省桂林陽朔県大榕樹景区 ⇒ 聚龍潭(鍾乳洞)⇒
月亮山 ⇒ 300年前の農村見学 ⇒ 帰路に就く
結局深圳事務所を出発したのは2時過ぎ 金曜の午後と成れば何かとお客からの問い合わせが多い
時折雨がぱらつくあいにくの天気 最初の宿泊地賀州市には夜の9時、思った以上に時間が掛かった、流石に夜のこの時間は食事場所もほとんど閉まっている。
閉店間際の麺屋に頼み込んで食事を済ませる 初日の食事は時間が遅くなったことも有り粗食で済ます事に成る。
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2日目の天候も雨模様 宿泊先を出発した時間は7時、目的地の桂林陽朔には9時着 今夜の宿泊先に荷物を預け、早速桂林遊覧に乗船 相変わらず、天候は良くない。
観光シーズンではないのか? それ程、混雑はない。
それでも周遊船は多い 船がすれ違うたびに手を振り、歓声が挙がる、我々と同様、団体客を乗せた人達が乗船している。
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乗船した時間は午前10時 岩山が林立する河を周遊する その間昼食、途中下船の観光も含め、全行程の総時間は5時間を超える。
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行き交う周遊船のほかに小舟で人を運ぶ、荷物を運ぶ、魚を捕る漁師も見かける。
これほどまで林立した岩山の景色は圧巻である いつまで眺めていても飽きない 欲を言えば天候がもう少し良ければ更に堪能できたであろう。
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周遊船観光を終え、宿泊近くの古い街並みを見学。
通りに面して土産物屋、食事処、お洒落なカフェ、地元特産の小食屋など、ぎっしりと軒を並べる。
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通りに面した旅館の二階がテラスに成っている、テラスからの眺めも良い、珈琲を飲みながら道行く人の流れを見つめる、夜に成るとテーブルにあかりが灯り、更に雰囲気が良くなる。
船上で立ちっぱなしだった事も有り、少しのんびりと珈琲を飲み 一息入れる。
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他の者は、それぞれの目的で自由に行動している 夕食の時間まで土産物を買う者、通りを見物する者、それぞれに楽しんでいる。
珈琲の味はそれ程でもないが2階のテラスから眺める通りは人で溢れている 落ち着いた気分で珈琲を飲む、今までの桂林は周遊だけで街中を散策する事も少なかった。
その点、今回は宿泊するので少しのんびりと街の雰囲気を堪能出来る。
観光地化され、本来の街並みとは違う それでも、旅の雰囲気は十分味わうことが出来る。
夕食はみんなで地元の料理を食する それぞれに和気あいあいで注文する姿は昨日の粗食とは違う やっとごちそうに有りつけた感じがする。
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私はビールと気の効いたつまみが有ればそれで満足、どの席も旅の楽しさであろう、賑やかで楽しそうな笑顔が聞こえる。
食事が終わり、宿に戻ると車の移動と立ちっぱなしで疲れが自然と睡魔に変わる 早々に就寝
最終日もやはり同じ様な天候 この時期は雨が多い。
最終日 宿の出発は8時半 高速に入るまでの道中、幾つか観光地を見て回る。
①大榕樹景区 高台から眺める桂林の岩山が林立する景色が素晴らしい
靄が掛かり遠くまで見通せないがこれはこれで一見の価値が有る。
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②鍾乳洞(聚龍潭)に入ったが派手なライトアップ あまりにも商業化し過ぎと感じる。
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③月亮山 山の中腹に穴がぽっかり開いた風景が有名 ここも以前見学に来た記憶の場所
天候が悪いせいも有り、観光客も少ない。
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④古い集落を見学 道路沿いに古い看板が有り、300年前の集落が有ると表示されている。
興味が有り、最後の見学場所とした。
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田舎道を進むと小さな集落に入る、人の気配はない!
相当古い集落、所々壁が崩落している レンガの色に歴史を感じる。
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集落の裏手に岩山が迫っている 今でも薪を使うのだろうか? 玄関脇に薪が積まれている。
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人の気配を探しながら奥を目指す やっと人の気配を感じ話を聞く、共に年老いた老人 一人は90歳を過ぎたおばあさん!
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この辺りは広東語の世界 社員に広東省出身の子が2人いるので会話が出来る。
この集落、この老人、そしてこの建物 全てに歴史を感じる、話をしてくれたお二人に礼を言い、村を離れた。
ここから、ほんの少し離れた場所は、賑やかな観光地がある。
しかし ここは昔ながらの生活が延々と続いている!
日本同様、先人が居て、今の世界が有る事を忘れてはならない。
迫りくる経済の中 この場所では何も変わらない世界が今も残っている。
今の世の中をどのように感じているのだろうか?
この先どうなるのだろうと聞いてみたところで答えは得られないであろう。
外国の企業が大挙して、この国で経済活動を進めている この発展と同様にこの国にも、昔と変わらないこの生活エリアが有る事も事実。
偶然、見た看板で入り込んだ集落に同行した社員達はどの様な思いで、この村、この老人を感じたであろう!
ただ単に社員旅行で訪れた一観光地だけで見てほしくない。
それぞれの社員達にも親が有り、親戚がいる その存在を少しでも心に思い浮かべてくれれば、有意義な旅行と成るだろう!
運転手には長距離、長時間の運転でお疲れ様!
広東省に入り、広州を過ぎたあたりから、雨に成る 小さな企業の社員旅行 社員の慰安、親睦に成った事は旅行中の会話、笑顔で判断できた。
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また明日から忙しい1週間が始まる 雨に煙る深圳のホテルに着いたのは午後10時を回っていた。
小社であるが、現地に進出する為の当時の経済環境、中国人を採用して雇用するにはいろいろと考えなければならない問題、そして苦労がある!
在籍していた、社員達は今は別の会社でそれぞれに活躍している事だろう!
今後も頑張ってほしいと願うのみである。
社員旅行は社員同士の連帯感、親睦が大きな目的
しかし それに加え、行った先々でいろんな事に触れ、自分なりに感じた事を吸収してくれれば会社としても大いに目的を達した事に成ると考える。
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