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陥没乳頭でお悩みの方へ(授乳の可能性を残す酒井法)

新宿美容外科・歯科  院長 酒井成身

TEL 03-5155-6355

 乳頭が乳輪下へ陥没している状態を陥没乳頭といいいます。この状態は外見上の精神的な苦痛はもとより、妊娠出産しても授乳が出来ない機能的な問題あります。また陥没乳頭を放置していると乳輪下膿瘍(乳頭・乳輪下に膿が貯まり赤く炎症を起こし痛みが強く、乳輪の皮膚が破れて膿が出ます)にもなりやすいし、乳腺炎になりやすのです。Grade1度のような軽症例は吸引療法で治る可能性もありますが、 Grade2度や3度のような重症例では吸引では「痛かった」というだけで治らないことがほとんどです。手術して乳頭を突出させなければなりませんが、手術は非常に難しく、再陥没する例が多く、私のところへはよそで失敗して、すぐ戻ってしまったと言ってこられる人も多いのです。外国の方法でPitanguy や Broadbent の乳管を切る方法では何とか治りますが、これらは乳管を切ってしまう方法なので、授乳が出来なくなります。酒井法は陥没した乳頭部に垂直に切開を入れ、よく観察し乳管を出来るだけ切らずに、乳管周囲の収縮拘縮性の組織を剥離し引き伸ばし、乳頭を持ち上げる方法で、術後授乳が出来る可能性を増した有用な方法であります。手術は外来、局所麻酔、日帰りで十分出来ます。

陥没乳頭の術後乳頭を糸で吊り上げておかなければならない方法は乳管周囲の剥離が不十分です。重症例では吊り上げ糸を切るとまた陥没することがほとんどです。

<陥没乳頭の酒井による重症度分類> 
Grade1:陥没乳頭を徒手的に整復できるが、いずれまた元にもどる。
Grade2:ピンセットなどで引き上げると何とか整復できるが、離すと元に   もどる。
Grade3:手術によらなければ乳頭は出てこない。
Grade4:他院での手術後再陥没して、瘢痕が強く、乳頭が壊死して時に欠損しているもの。(あまりに他院で手術後の再陥没例が多いので以前の3分類に瘢痕性のGrade 4を追加しました。)

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    図1  酒井Ⅰ法による陥没乳頭修正

乳頭の凹んでいる部分から垂直に入り乳管をなるべく残し、乳管周囲の拘縮のある部分を解除し(b)、乳頭を持ち上げ縫合し(d)、乳頭の大きさを球状に残すため、raw surface(皮膚の無い部分)はそのまま残し縫合しないで軟膏ガーゼを付けておきます。いずれ皮膚は貼ってきます。

症例1、45歳女性、酒井重度分類3度の重症陥没乳頭。もっともよくある状態の陥没乳頭です。陥没乳頭の中央は深く陥没していて、修正するにはまず中央の陥没の底のゴミを取りながら修正しないと創内が不潔になります。底に貯まったものは取りにくいので、切開しながら清潔にする。陥没乳頭内部をよく見て乳管周囲を剥離するには、まず陥凹した周囲のカルデラ火山の外輪山様の部分を切開して拡げ、中へ入り込む必要があります。

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図2-a  術前、乳頭は全く陥没していて、酒井のGrade3の状態である。

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図2-b  術中、乳管周囲の引きつっている組織を剥離解除。この乳管周囲の剥離が重要なポイントである。

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図2-c   半切し開いた乳頭の頸部内側で乳管を避けてお互いに寄せ合い、吸収糸で縫合して寄せている。

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図2-d  出来上がり。皮膚のない部分 raw surface はあえて縫合せず乳頭を球状に保ち、皮膚のない部分は残しておく。富士山のような形態に縫縮すると再陥没しやすい。

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図2-e  術後1か月(正面)、皮膚がなかった部分はほとんど皮膚が出来てきている。

このように重度な陥没乳頭の修正は非常に難しいのですがが、1000例以上の経験により、うまく修正しています。


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