見出し画像

今回は、2014年に設立した「株式会社グランディーユ」の代表取締役小笠原恭子さん、そしてコンサル事業にてサポートを行う山埜さん、川村さんにお話を伺いました。
誰もがイキイキと働ける場所を作るため、4つの事業を展開する同社。どのような取り組みを通して、社会とかかわっているのでしょうか。


料理・お菓子教室で出会った障害のある子どもが、私の運命を変えることに

大学卒業後は金融業界に就職し、週末に料理・お菓子教室を運営していました。料理・お菓子教室を運営しようと思ったのは、母が同じように教室を開いていたことがきっかけです。料理やお菓子作りを楽しく教える姿に憧れを抱いたんです。「ちゃんとお菓子作りを学んでみたい!」と考え、製菓の専門学校へ入学し、より多くのお菓子を教えることができるようになりました。

さまざまな生徒さんに教える中で出会ったのは、ある一人の障害をお持ちのお子さんでした。お話をする中で伝えられたのは、障害を持っている子どもが通う放課後デイルームのプログラムの一環として、料理教室やお菓子教室を開いてほしいということ。多くの方に料理やお菓子作りの楽しさを知ってほしかった私は「ぜひ!」と依頼を受けることにしました。しかし、障害をお持ちのお子さんに料理やお菓子作りを教えることは本当に困難でした。一口に障害を持っている子どもといってもさまざまなタイプの方がいるため、障害のことに関してあまりにも無知だった私はどのように声をかければいいのかわからなかったんです。そこで、障害のある方への言葉の伝え方や環境の在り方を学びたいと考え、大学院に進むことにしました。

大学院で学ぶ中で気づいたのは、障害のある方と健常者の接点があまりにもないことです。もし「障害のある方に対して何か支援がしたい!」と考えたとしても、支援の方法がわかりません。そのような環境は社会の大きな課題ですよね。そこで、私はカフェをオープンすることに決めました。障害のある方が働くカフェをオープンすれば、「障害を持っていても働けるんだな」「障害のある方にこういう支援ができるんだな」と理解を得られるだけでなく、障害のある方と健常者の接点も生まれると考えたんです。


4つの事業を通して、従業員と企業の架け橋となる

大学院卒業後、「株式会社グランディーユ」を設立し、三国ヶ丘の住宅街の小さな店舗でカフェをオープンしました。働く障害のある方の姿を見て、仕事がしたいと希望するスタッフが多くなったことをきっかけに、堺市産業振興センターに移転しました。カフェが大きくなり、雇用が広がったこともうれしいポイントでしたが、堺市産業振興センターはさまざまな支援をしてくれるだけでなく、多種多様な方々とのつながりを持てるので、移転してよかったと思っています。




現在は、カフェを含む飲食事業のほかに、教育支援事業やコンサル事業、地域活動支援事業「ぜるこば」など大きく4つの事業を展開しています。今特に力を入れているのが、教育支援事業とコンサル事業です。

教育支援事業では、社会問題解決を目的とするソーシャルビジネスを軸に起業したい方に向けて、定期無料相談会を実施しています。相談会の中で大変に感じるのは、信頼関係を作ることだと担当の山埜は言います。相談者が悩んでいる気持ちを赤裸々には話しづらいですよね。気持ちやお悩みを引き出すには、何度もお会いしてお話を伺い、信頼関係を得る必要があります。とはいえ、起業までには時間がありません。短期間で相談者の後押しができるよう、力が入らない雰囲気づくりをしながら、担当の山埜と川村でお話を伺うようにしています。



コンサル事業では、一般企業や特例子会社(障害のある方の雇用促進及び安定を図るために設立する子会社)に対してさまざまな課題を解決しています。課題の中で特に多いのは、定着率の悪さです。複雑な仕事が可能な従業員に対して簡単な仕事しか割り振られず、目標をもつことができなかったり、目標をもったとしてもどのようにステップアップすればいいのかがわからなかったりして、仕事を辞めてしまうのです。障害にはさまざまな種類があり、一人ひとりに得意・不得意があります。そこで、定着率を上げ、一人ひとりが活躍できる職場にするために必要なことをお伝えし、サポートするのが私たちの仕事です。また、障害を持つ従業員の方ともお話し、悩みをヒアリングし、支援するようにしています。いわば、従業員と企業の架け橋的存在ですね。


誰もがイキイキと働けるハイブリットな場所を作る

弊社が大切にしている考えは、「誰もがイキイキと働ける場所を作ること」です。その考えを守るために、弊社は「株式会社」で設立したんです。福祉関連の事業を展開する予定だったので、もちろん福祉の枠で公的資金を受けながら設立することもできました。しかし、それではすべての障害のある方が働ける場所は作れません。なぜなら、障害のある方の中にも障害者手帳を持たない方がいるからです。親に手帳を持つなと言われたり、障害者のレッテルを張られるのを嫌ったりして、手帳を持たない障害のある方は少なくありません。障害者手帳を持つ障害のある方はもちろん、手帳を持たない障害のある方も雇用できるスタイルが、「株式会社」でした。

設立当初は、活発に社会に出ている障害のある方が多かったのですが、雇用するスタッフが増えるにつれて、さまざまな課題が生まれるようになりました。言葉ひとつで理解できるスタッフもいれば、そうでないスタッフもいます。また、一人では行動できないため、常にサポートの必要があるスタッフもいます。ある時には、通常とは違う状況にパニックを起こし、いつも通り動けなくなることもあるんです。スタッフの状態や店舗の状況によって支援を行うサポーターはいますが、現在のままでは障害のある方がイキイキと働けないのではないかという課題が生まれました。そこで、2023年1月5日から就労継続支援B型の作業所を設立しました。自立して働けるスタッフは現状のままカフェで働き、支援が必要なスタッフは作業所で働くというハイブリットな形に変化していきます。

ハイブリットな形で事業を展開するにはさまざまな条件があるため、日本ではまだまだ浸透していません。しかし、自立して働ける障害のある方と支援が必要な障害のある方が混在して仕事に取り組む場所は今後もっともっと必要になります。弊社がモデルとなり、どんな方でもイキイキと働ける場所が全国に拡がっていけばいいなと心から願っています。

また、カフェで地域の方と関わるだけでなく、さまざまな方法で地域との関係性も作っていきたいと考えています。現在取り組んでいるのは、キッチンカーでの弁当・補食販売です。地域で取れすぎた野菜をいただき、その野菜を使って弁当やジェラート、高齢者向けの補食を作り、宅配しています。障害のある方が働く場所が増えるだけでなく、地域と関係性を持つことで、障害のある方への支援に拡がっていけばいいなと思いますね。

カフェからはじまった弊社ですが、現在は多くの事業を展開しています。その理由は、社会課題を解決したいから。社会課題を解決することは非常に困難ですが、1つひとつの課題を少しずつ解決することで、障害のある方を取り巻く環境にも変化が生まれると信じています。今後もさまざまな事業を通して、誰もがイキイキと働ける場所を作っていきます。



「誰もがイキイキと働ける場所を作ること」、これが非常に難しい社会課題だと感じます。しかし、少しずつ課題を解決し現状を打破できれば、誰もが生きやすい社会になるのではないでしょうか。2023年新たな作業所を開設したり、キッチンカーで弁当の宅配を開始したりなど、さまざまなサービスを展開し続ける「株式会社グランディーユ」に今後も注目です。


株式会社グランディーユHP
(株)グランディーユ[堺市]障害者やニート・ひきこもり層の働く場拡充のために (grandeur-jp.com)


堺市イノベーション公式Instagram
【堺市イノベーション】(@sakai_innovation) • Instagram写真と動画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?