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今回は、さかい新事業創造センター(S-Cube)で福祉用具サービス事業者にクラウドや各種のICTサービス等を展開する「株式会社ケアビジネスサポートシステム」代表取締役社長 藤原秀規さんにお話を伺いました。
「新しいサービスを提供し続ける」ことを大切にしている同社は、どのような事業を通して福祉業界をサポートしているのでしょうか。


介護業界10年間の経験で得たノウハウをもとに起業

福祉業界に関わりをもったのは、29歳のころでした。当時働いていた会社で部門転換があり、介護ショップ部門を担当することになりました。介護ベッドや車いす・歩行器から、オムツなどの消耗品までを取り扱い、病院・施設等に対して営業活動を行っていました。福祉業界の知識が身に着いたこともあり39歳で退職し、40歳で友人が社長、私が取締役で、階段昇降機や高齢者施設の特殊設備など大型移動福祉機器の施工・販売に特化した専門店として起業(第1創業)しました。
 
当初はキャッシュフローに苦労しましたが、大型・特殊という差別化が功を奏して事業は好調でした。しかし、介護保険の煩雑な請求業務や不慣れな会計業務などは人の手に頼る部分が多く、事務関連の残業が続くようになり効率化の必要性を感じていました。そこで、今に比べるとまだまだIT化が進んでいない時期だったこともあって、介護とITをかけ合わせれば、介護業界の助けにもなると考えて、IT化を推進することに決めました。


IT化で介護業界の最先端を走るも、難航

これまで培った介護保険関連の知識やノウハウを活かしてシステムの仕様を作り、現場に合った独自のシステムを完成させました。事務スタッフからの評価も得ることができ、負担となっていた残業も解消されました。
更に、このシステムを同業他社でも活用してもらえるのではないかと考え、新しく業界初のクラウド事業で子会社を創りました(第2創業)。それが今の会社で、こちらは私が代表を務めることにしました。

ところが、さまざまな事業者に提案を行いましたが、IT化が進んでいない当時は、「コンピューター弱いから…」、「インターネットはつないでいない」、「個人情報を社外で保管なんて考えられない」など、DX(デジタルトランスフォーメーション)がさけばれる昨今とは真逆のネガティブな声が多く、営業は非常に難航しました。
 

システムづくりは、お金がかかります。思った以上に契約が伸びず、毎月の赤字が累積し、第1創業である親会社とは意見の相違もあり関係が悪化。ある日、会議が決裂しその結果、親子関係を断ち、新しく作った会社(私を含めた3名だけ)で単独再スタートしました。「やはりダメかな、あきらめようかな」と考えたこともありましたが、なんとか介護業界のIT化を進めたいという一心で、会社をたたむことはしませんでした。
とはいえ、赤字は続いているので、ホームページ制作やIT環境の構築・保守などを手あたり次第こなしていました。そんな時に舞い込んできたのが、介護業界向けの教育・研修eラーニングのコンペでした。


専門性を活かしたシステムづくりで延命

コンペの競合相手は、既にeラーニングも作っている大手企業4社でした。零細な弊社が勝てるわけない…と思っていましたが、参加した大手企業はシステム開発はプロですが、介護に関する知識はあまりありませんでした。
私の方は開発はアウトソーシングでしたが、介護業界で働く方が段階的に知識を得られるようなコンテンツづくりの経験やノウハウがありました。

その結果、奇跡的にコンペに勝利し、介護業界向けの教育・研修eラーニング『介護塾』というものを制作しました。経営が難航していた時期だったので、本当にうれしかったです。その後、光回線・WiFi・スマホ/タブレット・LINEの登場など超情報化の時流が後押ししてくれるようにもなって、そこからようやく、会社名でもあり企業理念でもある『介護分野の専門的な知識×ICTサービスで事業者様を支援する』展開が本格的に動き出しました。
現在では、上場大手企業が弊社基幹システムをOEMとして営業して下さるようになり、全国約700社が弊社のサービスを利用してくれています。

名前が世に知れ渡っているような大手企業と関わりが持てた一因として、堺市のビジネスを支援するインキュベーション施設『さかい新事業創造センター(S-Cube)』に入っていることもあります。クライアントにとっては好印象です。どこに会社をつくるかで、周りからの見る目が変わると感じています。また、S-Cubeではさまざまな支援をしていただいているので、入居してよかったと心から思います。



大切なのは、新サービスを提供し続けること

介護ショップに対してクラウドサービスを提供し、クラウドサービス利用が難しい方には事務処理代行サービスを提供する。そして、経営に困っている方がいればソリューションサービス(コンサルティング、教育研修、各種営業支援ツールの販売)でサポートする。
また、本業であるクラウドサービスの経験を通して得たノウハウから、ソフトウェア/アプリの企画・開発をするSI(システムインテグレーション)事業や、事業者様をサポートするヘルプデスク/コールセンター事業が生まれました。
更には、高齢者は施設ではなく、自宅に住み続けたい方が多いです。そこで、高齢者の方々が快適に生活を送れる住宅環境整備ガイドを編集・発行する出版事業などICT関連以外にも挑戦しています。これも、介護分野の専門的な知識があったからこそできた事業です。このように、クライアントの問題を探し課題を解決するサービスの研究と開発をしていく。

その結果として、新サービスを提供し続けることで、介護業界の企業にとって「ケアビジネスサポートシステムがいれば助かる」と言っていただける会社になれるよう、毎年1つ以上の新サービスを開発することを目標に、日々業務に取り組んでいます。さまざまなサービスを提供しているとはいえ、市場シェアはまだ1割にも満ちません。私たちはまだまだこれからです。

今後も、クライアントの事業や抱える問題を徹底的に研究し続けることはもとより、ICTに関わる最先端技術の修得と提供体制づくりにも励んで、介護業界のDXに貢献したいと考えています。


これまで展開してきた事業の数々


従業員を大切にするからこそ、新サービスも提供できる

さまざまなサービスを提供するためには、従業員の力が必要です。そのためにも、従業員を大切にすることを心がけています。軌道に乗り出してからこれまでの約10年間は毎年の昇給は約1万円、1人に年間12枚の映画チケットの支給、月2,500円の食事補助、誕生日には自宅にギフトカタログを送付するなど、日々真摯に業務に向き合ってくれている従業員に、福利厚生の充実などで感謝を伝えております。
 
経営には、従業員(人)に加え、モノ・金が必要と言われます。しかし、今の時代その3つだけでは足りません。効率的に仕事を行う『情報』、『時間』、『技』、『知恵』、『ブランド(信用)』、それ以外に『連携』、『教育』、『計画』、『実行』、『危機管理』、そして『運』などです。いろいろな要素があり、その組み合わせを工夫したり、それぞれの資源を磨き向上させることが重要で、それにより会社は成長し進化していくと考えます。


新しいビジネスモデルを社会に提供して、人生100年時代を生きる

今後も、継続して新しいサービスやビジネスモデルを提供し社会に貢献していきたいと願っています。現代の『情報化』は仕事の効率化のための単なる機械・道具的観念ではなく、『情報化』により業務を革新する思想的観念としてビジネスに活用する時代です。今後は福祉用具のIoT化や、これまで蓄積したビッグデータによるAIの活用などの挑戦も考えています。まだ構想段階ですが、介護とDXを掛け合わせることで、素晴らしい何かができるかもしれません。今後も介護業界で働く人たちの観察・考察・推察に励み支援していくことで、日本の人生100年時代を生きる高齢者の方々への貢献にも繋がれば幸いと願い、今後も取り組んでいきます。

iPhoneが何度も進化を続けるように、株式会社ケアビジネスサポートシステムもさまざまなサービスを開発・提供して進化を続けています。介護業界の方をさまざまな視点からサポートするサービスには、驚きが隠せませんでした。今後も、株式会社ケアビジネスサポートシステムの新サービスに期待したいですね。

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