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今回は、堺東駅に本社がある電動アシスト自転車の開発・販売を行う株式会社PELTECH専務取締役 園田寛武さんにお話を伺いました。

園田さんが大切にしているのは、「常識にとらわれないサービス・製品を提供する」こと。では、その考えをどのように実現しているのでしょうか。


祖父,父の影響を受け、自転車業界に

自転車ビジネスを展開しようと考えたのは、祖父と父の影響を受けたことがきっかけです。
堺市は自転車の製造の街で祖父の代から堺市で自転車フレーム製造会社を営んでいました。幼いころから自転車がいつも近くにあったので、自然な流れで自転車ビジネスに興味を持ちました。その中で当社が焦点を置いたのは、自転車+テクノロジーの融合した電動アシスト自転車です。

電動アシスト自転車の歴史は意外と古いんですが、流行し出したのは2013年ごろ。当社を設立した2011年はまだ所有率が低かったですね。大手企業はすでに販売を開始していましたが、無名なメーカーの電動アシスト自転車は無く、低価格の電動アシスト自転車ビジネスをスタートしたらチャンスがあるんじゃないかと思い、日本社製モーターを搭載した独自ユニット電動アシスト自転車を開発し、2012年に協力店舗にて試験販売をスタートさせました。

2016年にはOEMにて全国の大型量販店でも販売を開始しました。販売をスタートして感じたのが、台数として全く売れず市場では求められていないという現実でした。店舗や卸会社で販売していただいても隅っこに置かれて追加の注文が来ることはありませんでした。
その中で自分たちが直接メーカーとして自社で販売する為にPEDAL×Technologyから取った会社名の「PELTECH」ブランドを2018年から立ち上げました。




常識にとらわれないコスパのいい電動アシスト自転車を届けたい

「PELTECH」ブランドのこだわりは、「低価格かつ高性能」であることです。電動アシスト自転車のモーターは一般的に中国産。中国産の部品を使うことでコストを抑えることができます。

しかし当社は、日本製の部品で製造することを大切にしています。もちろんコストはかかってしまいますが、「高性能」なものをお届けしたいからこその選択でした。スキルの高い技術者を採用し、設計の段階からこだわりを持って製造しています。

そんな低価格かつ高性能な電動アシスト自転車を届けたい想いは強く持っていましたが、自転車業界に上手く参入するという大きな壁にぶつかりました。非常に保守的な業界なので、無名なメーカーの電動アシスト自転車を販売いただくことは難しいんです。
特に当社は「誰も知らない、低価格」な電動アシスト自転車ですから、自転車販売店にとって不具合が出てお客様の信用を落とすことがあるのではと販売することに躊躇する店舗や会社ばかりでした。
自転車卸会社や販売店も不具合が発生し多くの手間や信用にかかわることは避けたく、無名な当社の電動アシスト自転車には冷ややかな目線で見られることが多かったです。高性能であることに誇りを持っていましたが、なかなか卸会社や販売店に伝わりませんでした。


行き詰っているときに、オンラインで直接販売を始めようと社長の提案にて、今のビジネスがスタートしました。
通常自転車業界の商習慣では卸販売会社や店舗を通じてお客様に届けることが主流でした。ですので苦し紛れに型破りな方法でEC販売がスタートしましたが、現在では柱の事業となっております。
社内でもネットで自転車を買う人はいないだろうなとの印象でしたが、とりあえず挑戦してみようとECサイトに載せると毎日注文がきて、驚きと感動でした。お客様にとっては「無名メーカー・低価格」な電動アシスト自転車でも必要な方がたくさんいる事を実感させていただき、『やっと出会えた』とそんな気持ちでした。
我々も固定概念の中でビジネスをしておりましたので自分たちの常識は間違っているんだとお客様から教えられた瞬間でした。常に生産側で消費者とはすごい遠い存在でしたがオンラインの力でお客様と直に繋がることができ、無機質な印象のオンラインが我々にとってはお客様と繋がれる大きな存在となりました。
今まで店舗などで不具合が出た際には店員さんからはお叱りを受け、心が折れるような言葉もありましたが、現在はお客様宅に訪問修理しお客様から感謝される仕事に変わりました。ただの無名な会社が『PELTECH電動アシスト自転車で楽になった』『毎日が快適になった』という声をいただき、会社名まで覚えていただける会社になった事に常に感謝を感じています。


一般の方でも自転車の購入を検討される方の中には、「自転車は自転車販売店で買うもの」という固定概念をお持ちの方も多いと思います。
その中でも徐々に広がってきている「自転車をオンラインで買う選択肢」をもっと拡大していきたいと考えています。拡大のためには、オンラインでの購入に不安を感じさせないような工夫も必要です。たとえば、延長保証サービス。
通常のメーカー保証と合わせて、自然故障に対して最大3年間無償対応する電動アシスト自転車初のサービスを、ヤマト運輸株式会社と共同でスタートさせています。

また、訪問修理も安心して購入いただける要素のひとつ。通常、電子部品の故障やアシストしない等の不具合があれば、自転車販売店や修理店に自転車を持ち込みますよね。PELTECHの自転車に不具合があった場合は、訪問して修理を行っています。東京にも技術アフタースタッフを配置しました。もちろん、多額な費用はかかりません。
このようなサービスを生み出し続けているのは、常識にとらわれずにサービスを提供したい想いがあったからです。他社や自転車販売店が実施しないサービスで、お客様にも喜んでいただいています。



お客様の声を形に、そして年間1万5,000台を販売

「低価格・高性能」の自転車をオンラインで販売し続けた結果、年間1万5,000台もの自転車を販売することができました。その中の折り畳み式電動自転車はAmazonランキング1位にも輝きました。常識にとらわれず、新しいサービスを提供したことが要因だと思います。また、オンライン販売サイトや訪問修理で伺うお客様の声をもとに製品を開発していることも要因のひとつですね。

当社では、お客様からの製品に対するご意見や口コミと真摯に向き合い、社員みんなで問題の解決や製品改良に取り組んでいます。

例えば、『お尻が痛い』と口コミがあればサドルをすぐ交換し、『進みが悪い』と聞けばギアを大きくしてスムーズに動くようにし、『こんな色の自転車がほしい』と意見をもらえばカラーリングを変えるなど。
お客様の声をしっかりと製品作りに反映させています。他にも、2種のバッテリー容量が選べるようにもしました。標準装備の8AHのバッテリー、長距離走行が必要になれば12AHのバッテリーといったようにお客様の生活スタイルに合わせて選択ができるのは非常に強みとなっています。
このようにお客様の要望をすぐに実現できるのは、お客様との距離が近い当社だからこそだと思いますね。電動アシスト自転車が必要なお客様のために販売・修理をして、『ありがとう』と直接言っていただけると本当にうれしくなりますし、社員みんなで挑戦し続けてよかったと心から思いますね。

もちろん、大手企業の電動アシスト自転車も素晴らしいですが、私はお客様の声を形にする、そんなビジネスが性に合っていたんだと思います。


当社は方針として業界の展示会へ出展しません。ママチャリ自転車を買う時って、店舗に行ったとしても展示会には行きませんよね。
お客様に直接届けたい想いを持っているので、一般のお客様が少なく業界に精通した方が多くいる展示会には行かないんです。
展示会には出展しませんが、スーパーやショッピングセンターで試乗会イベントを定期的に開催しています。買い物などのついでであれば、多くのお客様に現物を見て試乗していただけます。また、試乗した方から『こういう自転車が欲しい』『電動アシスト自転車のこういうところが不便』などと意見を聞くことができるので、当社にとってもいい機会になっています。


また、当社の電動アシスト自転車は、堺市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。パンクしないノーパンクタイヤを採用した自転車を提供しています。非常に多くの方に選んでいただき、返礼品の中でも人気商品になっています。

堺市は自転車の街で、なにより永らく会社を営んできた地でもあります。この堺という街に貢献しながら、より多くのお客様に当社の自転車をお届けしていきたいと思っています。




お客様の生活をアシストできる自転車を作り続けたい

今後も常識にとらわれず、お客様のメリットとなるような良い製品を届けていきたいです。トライ・アンド・エラーを繰り返し、新たな挑戦を続けていきます。

過去に中国で7年間勉強していた時、格差社会であることに大きな衝撃を受けました。日本は格差がある国ではありませんが、高価なイメージがついている電動アシスト自転車のイメージを払拭して、誰でも乗ることができる乗り物にしていきたいとも思います。
子どもの送迎をする親や、ペダルを漕ぐ力が小さくなってきた高齢者、急な坂に囲まれた場所に住む方、日常的に重い荷物を運ぶ方、電動アシスト自転車でラクラク移動したい方…。どんな方でも格差なく利用できる社会になっていくよう、当社は今後もお客様のニーズに合わせた製品をつくっていきます。



お客様の声・ニーズに合わせたD2C(メーカー→消費者)ブランド電動アシスト自転車メーカー「株式会社PELTECH」。価格はもちろん、デザインや性能にもこだわったPELTECHの電動アシスト自転車を見たとき驚きが隠せませんでした。日用品や家電などをオンラインで購入することが当たり前になった現代で、今後電動アシスト自転車のオンライン購入もさらに拡大していくはず。その中で出てくる新たな要望をもとに実施される、製品・サービスの改革に今後も注目です。


株式会社PELTECH
電動アシスト自転車PELTECH(ペルテック)公式オンラインショップ (shop-pro.jp)

堺市イノベーション公式Instagram
【堺市イノベーション】(@sakai_innovation) • Instagram写真と動画

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