鰻女

バイトの途中、うなぎを奢っていただける事になり南平台まで歩いた。
後から調べると都内に何店舗か出している有名店であった。古民家を改装して造られた雰囲気のある店内に入ると、マスクをしていて定かではないがおそらく50代半ば程の女性が個室まで案内してくれた。上の鰻重を頼みしばらく待つと、その女性が席までお膳を持ってきてこう言った。

「こちらは若いうなぎなんですよ。」

私は(若いうなぎ)という言葉が気になってしまい思わず「若いうなぎ、若いんですか。いいんですか。いいですね...」と口に出してしまった。人の言葉を救い上げ、思ったことを口に出してしまう悪癖。28にもなって恥ずかしいと思ったが、その女性はフォローなのか何なのか「そうです。若いうなぎなんです、貴女の様に...ふふふ」と言い残し部屋を去っていった。
50代半ばの女性が放つ(若いうなぎ)の響きの官能なこと。

その鰻屋にはまた行こうと思う。


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