血液透析導入基準

慢性腎臓病(CKD)が進行すると、腎機能が低下し、最終的には透析や腎移植が必要になる場合があります。この記事では、透析が必要になるタイミングとその基準について説明します。これを理解しておくことで、自分の体の変化に早く気づき、適切な対応ができるようになります。

1. 血液透析とは?

腎臓は体内の老廃物や余分な水分を排出する重要な臓器ですが、CKDが進行するとその機能が失われます。腎機能が正常の10-15%以下になると、腎代替療法(腎臓の機能を代行する治療)が必要になります。その一つが血液透析です。血液透析は、体外に取り出した血液を機械で浄化し、再び体内に戻す治療法です。

2. 透析導入のタイミング

日本では、透析を始める適切なタイミングを判断するために、厚生労働省が定めた「透析導入の基準」があります。この基準は、患者の症状、腎機能、日常生活レベルを総合的に評価して決定されます。以下にその基準を具体的に紹介します。

3. 透析導入適応の基準(厚生労働省)

透析を開始するかどうかを判断するための基準は、以下のような点数システムに基づいています。点数の合計が60点以上になると、透析導入が必要な状態と判断されます。

  1. 症状・所見

    • 水の貯留(むくみ、胸水)

    • 酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)

    • 消化管の症状(吐き気、嘔吐、食欲不振)

    • 心臓の症状(呼吸困難、息切れ、心不全、著明な高血圧)

    • 神経の症状(意識混濁、けいれん、しびれ)

    • 血液の異常(貧血、出血が止まりにくい)

    • 目の症状(目がかすむ)

  2. 腎機能

    • 持続的に血清Cr8mg/dl以上(あるいはクレアチニンクリアランス10ml/min以下)=30点

    • 血清Cr 5~8mg/dl(Ccr 10~20ml/min未満)=20点

    • 血清Cr 3~5mg/dl 未満(Ccr 20~30ml/min未満)=10点

  3. 日常生活の障害の程度

    • 起床できないほど高度な障害で30点

    • 著しい制限がある中等度の障害で20点

    • 運動・労働ができない軽度の障害で10点

さらに、以下の場合は10点が加算されます:

  • 10歳以下または65歳以上

  • 糖尿病、膠原病、動脈硬化疾患などの全身性血管合併症の存在

4. 透析導入の決定

透析を始めるかどうかの決定は、これらの基準をもとに、医師と患者が相談して行います。たとえ腎機能が正常の15%以上残っていても、尿毒症状、高カリウム血症、心不全などが適切な治療で改善しない場合は、透析が必要と判断されることもあります。

終わりに

透析導入の基準を知っておくことで、自分の腎機能の状態をよりよく理解し、適切なタイミングで治療を開始することができます。CKD予備軍の皆さんも、定期的な検査と医師との相談を通じて、自分の体を大切にしていきましょう。

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