血液透析と血液濾過の違い

血液透析(Hemodialysis, HD)と血液濾過(Hemofiltration, HF)は、どちらも腎不全の治療に用いられる血液浄化療法ですが、基本的な原理や方法が異なります。それぞれの違いを以下に詳しく説明します。

1. 基本原理

  • 血液透析 (HD):

    • 原理: 血液透析は拡散の原理に基づいています。血液と透析液は半透膜を隔てており、血液中の老廃物(尿素、クレアチニンなど)が濃度勾配に従って透析液に移動します。この過程で、老廃物や余分な電解質が血液から除去されます。

    • 方法: 透析装置に血液を通し、透析液と接触させることで老廃物を取り除きます。透析液は定期的に交換され、新しい透析液が供給されます。

  • 血液濾過 (HF):

    • 原理: 血液濾過は対流の原理に基づいています。血液は濾過膜を通過し、大分子や老廃物が濾過されて除去されます。圧力をかけて血液を濾過膜に通すことで、濾過液(フィルトレート)が生成されます。

    • 方法: 濾過装置に血液を通し、圧力によって血液成分を分離します。除去されたフィルトレートは捨てられ、必要に応じて置換液が補充されます。

2. 対象物質の除去

  • 血液透析 (HD):

    • 主に小分子の老廃物や電解質を除去します。

    • 水分の除去も可能ですが、主に老廃物除去に焦点を当てています。

  • 血液濾過 (HF):

    • 大分子や中分子の老廃物も除去します。

    • 水分の除去に特化しており、電解質バランスの調整も行います。

3. 装置と操作

  • 血液透析 (HD):

    • 透析装置と透析器(ダイアライザー)を使用します。

    • 透析液が必要で、透析液の管理が重要です。

    • 血液ポンプで血液を透析器に送り、透析液と接触させます。

  • 血液濾過 (HF):

    • 濾過装置と半透膜(フィルター)を使用します。

    • 透析液は使用せず、フィルトレートの除去と置換液の補充が行われます。

    • 血液ポンプで血液を濾過装置に送り、圧力をかけて濾過を行います。

4. 適応

  • 血液透析 (HD):

    • 慢性腎不全患者に広く適用され、定期的な透析治療が行われます。

    • 急性腎不全患者にも使用されますが、長期的な治療が必要な場合が多いです。

  • 血液濾過 (HF):

    • 急性腎不全患者、特に重症で集中治療が必要な患者に適用されます。

    • 慢性腎不全患者にも使用されることがありますが、主に急性期の治療に用いられます。

5. 治療時間と頻度

  • 血液透析 (HD):

    • 通常、1回の治療に3〜4時間かかり、週に3回程度行われます。

    • 治療の頻度と時間は患者の状態によって調整されます。

  • 血液濾過 (HF):

    • 持続的な治療が一般的で、24時間連続して行われることが多いです。

    • 急性期の治療であり、患者の状態が安定するまで続けられます。

まとめ

血液透析と血液濾過は、どちらも腎不全の治療において重要な役割を果たしていますが、その原理、方法、適応に違いがあります。血液透析は主に慢性腎不全患者に適用され、小分子の老廃物を除去するのに適しています。一方、血液濾過は急性腎不全患者に適用され、大分子や水分の除去に効果的です。両者の違いを理解することで、より適切な治療法の選択が可能となります。

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