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読んだそばから忘れる

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毒にも薬にもならない読書の記録。
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2019年7月の記事一覧

2019年7月③:長嶋有『ジャージの二人』

◆長嶋有『ジャージの二人』(集英社文庫、2007年) 「小説は描写がすべて」学生の頃お世話になっていた先生がいつかの授業中にそんなことを言っていた。「まあ、それ(描写)しかないんだけど」そんなことも。あれは一体なんの話をしていたときだったのだろう。 長嶋有の小説を読んでいると、時々、描写の人だな、と思う。描写の人、といってもバルザックみたいなとにかく細かく細部まで!というわけではなく、なんといえばいいか、描写のセンスと言えばいいのか。 たとえば、犬が吠えるときの「わう」

2019年7月②:能町みね子『お話はよく伺っております』

私はミーハーだ。ナンシー関風に言うと「ミーハーなんである。」となるかもしれないが、今回の話にナンシー関は関係ない。ただの趣味だ。 ◆能町みね子『お話はよく伺っております』(文春文庫、2017年) ミーハーと自ら言っておいてなんだが、ミーハーとはなんぞ、と思い新明解国語辞典を引く(ちなみに第七版)。えーと、「程度の低いことに熱中しやすい若い人たち、特に女性。(軽い侮蔑を含意する)」とのこと。 おおお、なかなか手厳しい新解さんだ。しかも何か含みを感じる。「程度の低いこと」は

2019年7月①:片野ゆか『北里大学獣医学部 犬部!』

読んでも何からどうしていいのかわからず、ぼんやりしていた。 ◆片野ゆか『北里大学獣医学部 犬部!』(ポプラ文庫、2012年) 私は動物を飼ったことがない。子供の頃に親に向かって「動物を飼いたい」と言ったこともない。ただ「死んでしまうとかわいそうだから動物は飼わない」と母親が言っていたことだけは強烈に覚えている。「犬を飼いたい」「ペットがほしい」と言ったり考えたりした記憶はないから、「死んでしまう」「かわいそう」という言葉がよほど衝撃的だったのだろうと思う。幼い頃、なぜか漠