落とし物

自分は否定されても仕方がない。そう思って生きてきた。

自分に向けられた言葉の刃。鋭利な刃物。言葉は、包丁よりも、きっと太刀よりも鋭く、深い傷を負わせる。

自己肯定感は一歩、また一歩と学校へ向かううちに落ちていく。そして代わりに自己嫌悪を鞄いっぱいに詰め込んで帰路につくのであった。

心はもうとっくに空っぽになっていた。自分を否定される度に、自分が悪いんだ、と思うだけだった。自分が世の中で一番醜く、価値のない人間だ、そう思って疑わなかった。

自尊心、自己肯定感、自己愛。落としてきてしまった自分に対する優しさは、あの時通った道を何度も何度も歩けば拾い集めることができるのだろうか。道中で唯一声をかけてくれた存在のもとに行けば紛失物として保管してあるだろうか。

とりとめのないことを考えては、消えたいとつぶやき、震える手で錠剤を流し込んでまた布団にもぐるのだ。

白くて小さな錠剤に頼って生きている。それを飲み込むことが、生きるために一番必要なことの様になっている。

自分を傷つけた者たちは何も知らず何も記憶に留めず生きていく。

そんな世界で生きていくのは、私にはまだ早かったみたいだ。静かに、息をひそめて、もう誰からも傷つけられないように、この命という最後の光源が消えゆくのを待っている。

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