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金原正徳「クレベル戦が決まってから対策を練るレベルでやってない」

RIZIN44でクレベル・コイケ戦が決定した金原正徳インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)

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――今日(8月13日)の夜からタイへ練習に行かれちゃうんですよね。

金原 はい。今日の夜から行っちゃいます。

――ジム(リバーサルジム立川ALPHA)のほうは大丈夫なんですか?

金原 大丈夫です。任せられる人がいるのでジム自体は大丈夫です。

――今回初めて金原さんのジムに来たんですけど、目の前に第1回極真世界大会王者・佐藤勝昭先生の道場が……。

金原 あ、ウチができる前からありましたから。挨拶には行きましたし、ジャンルが違うので、そんなに相手にされてないと思います(笑)。

――でも、キッズ空手って集客が強いですよね?

金原 めちゃくちゃ強いです。空手をやってた子がこっちに流れてくることもありますよ。礼儀作法だったりがしっかりしてて。ボクはあんまりそこらへんは気にしないんですけど(笑)。子供たちが挨拶しないで入ってきても気にならないタイプです。ボクがそこまで教えることでもないのかなと。

――MMAって空手やキックと比べると緩い感じがありますね。

金原 ボクの育ちも縦社会じゃなかったので。先輩を立てる感じではなかったし、逆に後輩が立ててくれなくても気にならない。ウチのジムはゆとり教育です(笑)。

――いまの時代だと、それが心地がいい人もいますよね。

金原 そうですね。それがイヤなら、他のジムに行ってくれればいいし、ウチはこのスタンスでやってますんで。ボクは会員さんを強くしたいっていうよりも格闘技の楽しさを感じてほしいんですよね。真剣に強くなりたくて物足りない人はそういうジムに行けばいいと思ってます。

――今回のタイ行きはクレベル・コイケ戦に備えてのものですけど、タイのどちらに行くんですか?

金原 プーケットです。タイガームエタイとグラップリングのジムに行こうかなと思います。

――タイで練習する予定のクレベルとニアミスしそうですよね。

金原 道端とかで会うんじゃないですか(笑)。

――いまやプーケットは格闘家天国ですもんねぇ。

金原 日本人でもタイガームエタイに何人かいるみたいですし。今回タイに行くのはボクは1人になりたいからで。じつは日本にいるほうが練習環境は全然よかったりするんですけどね。

――へえー、海外より日本のほうがいいと。

金原 日本のほうが全然いいと思います。でも、日本にいると、ジムのことだったり、家族のことだったり、余計に考えることが増えてきちゃうので。いくら他の人間に任せても気になっちゃいますよね。そこは気にしないで練習したいってことがタイ行きの理由の6割ぐらいを占めてます。残りの4割は、格闘技って知らない人と練習するとケガするリスクも高くなるじゃないですか。

――タイ現地からも被害報告が届いてたりしてますねぇ。

金原 そこを乗り越えた奴が試合で勝っていけると俺は思ってるんですよ。練習でダメになっていく選手っていっぱいいるじゃないですか。そういう人たちって運命的なものを持ってないと俺は思ってるんで。きつい練習でケガしないでリングに立てることが本当の強さ。俺はケガで試合を飛ばしたことは1回もないですね。

――でも、何かしらケガを抱えてリングに上がってるわけですよね。

金原 それはみんなそうじゃないですか。ケガなくリングに上がってる人は誰もいないと思いますよ。

――ケガで欠場するってことは、ギリギリのラインを超えてしまったということですね。

金原 そういうことだと思いますね。ボクはたとえケガが理由で負けたとしてもリングに立つのが仕事だと思っているので。歩けないとかじゃなければケガをしてても試合はしますね。

――海外に練習に行かれたのは、RIZIN初参戦のビクター・ヘンリー戦以来なんですよね。

金原 あのときもタイガー・ムエタイでちょうど1ヵ月間かな。ビクター戦は負けたからあんまりジンクスはよくないですよ(苦笑)。

――あのタイ行きはファイター人生の最終章として気合いを入れ直す意味で……。

金原 そうですね。バンタム級で減量もキツかったし、あのときも1人になりたくて。最後に勝負……その最後が10年くらい続いてますけどね(笑)。

――「今回が最後の作品」が続くジブリの宮崎駿みたいですね(笑)。

金原 あの試合で負けて、いったん引退を決めたけど、階級をフェザー級に変えてね。

――それ以来の海外練習ということは、それなりの覚悟を持ってクレベル戦に臨むってことですね。

金原 そうですね。いままでの相手がどうこうってことじゃないですけど、本腰を入れなきゃいけない相手だと思うし、入れるにふさわしい相手だと思ってます。

――今回クレベル戦が決まるまで、いろんなプランがあったみたいですよね。

金原 はい、ありました。

――じつは◯◯戦が最有力候補だったとか。

金原 ああ、ボクもそういう頭になっていて。

――その対戦相手でRIZINからオファーがあると思ってました?

金原 うーん……思ってなかったし、最初は「イヤだ」って断ったんですよ。

――えっ、いったんは断ったんですか? 

金原 だって「なんで俺がそこなの?」みたいな。

――それは格下とやりたくないってことですか?

金原 そういうことですね。笹原(圭一)さんと話し合って「じゃあ、やりましょう」と納得したんです。だって、現役で残り何試合もできるかわからないのに、いまさら話題性だったりとか……ボクは話題性は欲しいと思ってないんで。そこは古くさい考えかもしれないですけど、そのへんは気にしないで試合で盛り上げればいいと思ってるタイプなんで。前回の代々木LANDMARKだって話題性は上の2つ(牛久絢太郎vs朝倉未来、斎藤裕vs平本蓮)だったけど、榊原さんはボクの試合(山本空良戦)をMVPに選んでくれたし。試合を見せれば間違いないってところは揺るぎないですね。

――でも、いろいろあって内定していた◯◯戦は流れちゃったってことですか。

金原 そうみたいですね。ボクとしてはありがたいですけど。

――じゃあ9月10月に試合はないって感じでした?

金原 いや、札幌でクレベルの計量オーバーがあって、榊原さんのコメントだとクレベルは年末まで1試合挟むみたいな話だったので「これ、クレベル戦があるな」って正直思ったんですよ。そのときはまだ◯◯戦のほうが進んでたんですけど、佐伯さんから「もしかしたら……」みたいな感じで言われて。

――クレベル戦のオファーは「やっぱり」って感じですね。

金原 もう断る理由はないですよね。どれだけ自分ができるのか。RIZINにはケラモフはいるけど、これ以上の相手はいないじゃないですか。

――クレベルとは過去に練習されていたことのやりづらさはないですか?

金原 そこはクレベルに限ったことじゃないですけど。芦田(崇宏)にしてもHALEOで一緒にやっていたことはあったし。クレベルはファイターとしてのやりづらさのほうが大きいかなと。クレベルってRIZINに上がって以降、日本人全員一本で極めてるじゃないですか。それはすごいことではあると思うんですけども、逆に簡単に極められすぎじゃないかって思ったり。RIZINのフェザー級ってストライカーがすごく多いんで、クレベルみたいな極めの力が強い選手だとみんな極められてしまう。もちろんクレベルが強いのは前提ですよ。だけど、さすがに極められすぎかなって。

――それはずっとモヤモヤしていたところなんですか?

金原 ずっと思ってました。正直RIZINフェザー級の選手ってアベレージはそんなに高くないですよね。打撃がものすごく強いものを持っているとか、腰がすごい強い選手がいるとか、光るものや世界に通じる強いものを持っていると思うんですけども。その武器が通じなくなったときにアベレージで勝ち続けられる選手はそんなに多くないと思ってます。

――アベレージというのはなんでもできるってことですね。武器がひとつだけしかないと、相手は絶対に弱い部分を戦略的に突いてくるから、世界と戦うのは限界がある。

金原 そうですね。そういう経験をすることで自分の弱さを知った選手は修正できるんですけども。いまのRIZINの日本人選手で海外に目を向けている選手って、あんまりいないと思うんですよ。コロナで日本人選手対決がどうしても増えてきた中で、みんなシェアが狭くなってしまっている。

――いまは外国人と対戦しないとトータルの強さは磨かれないところはありますか?

金原 全然あると思います。日本人相手だと、アベレージが高くなくても、なんとかなっちゃうんですよ。それが結果として出たのが未来vsケラモフじゃないかなって思いますけどね。

――未来選手ってこの手のタイプの外国人と戦ったことがないから、ぶっつけ本番的な厳しさが出たところはありますね。

金原 未来ってRIZINでテイクダウンされたことは1回もないんですよ。お尻がついたときがあったんですけど、完全に寝かされたことってないじゃないですか。それだと自分の弱点を担うことができないんですよ。

――練習で経験してもダメなんですか?

金原 試合とは全然違います。練習だとなんとかなっちゃうんですよ。

――練習相手も決まってたりしますし。ケラモフのヒジを食らってチョークを取られてしまったのは想定外の出来事にパニックじゃないですけど……。

金原 それもあると思います。練習でやられたことがなかったり、いままで経験しなかったことでのパニックだったり。そういう流れになってしまったんじゃないかなって気がしますけどね。でも、それはいい経験だと思います。それを彼が今後どう捉えるかによって、今後の格闘技人生は大きく左右してくると思いますし、これでダメだと思ったらこれで終わりだと思うし。この経験を次に活かそうと思ったら全然活きると思うし。2010年代くらいの日本のMMAファイターって、全部できる前提の人が多かったと思うんですけど、最近はあんまりそうじゃなくなってるなって。

――アベレージが低くなっている原因はなんですか?

金原 ボクらは時代に流されず、ちゃんとMMAをやってきた人種だと思ってるんですよ。やっぱりその時代時代にファイトスタイルの流行ってあるじゃないですか。五味(隆典)さんがPRIDE武士道のときはボクシングMMAが流行ったり、あるときはボクシング・レスリング、またあるときはグラップリングが流行った。そういうものに流されないで、アベレージを高めるスタイルを確立してきたところは大きいと思いますけどね。

――流行りに惑わされないで、どの部分も強化してきたってことですね。クレベルやサトシに日本人選手だけがガンガン極められてしまっている現状は、日本人のグラップリングの対応力が下がっているということですか?

金原 だと思いますね。みんなクレベル対策としては、打撃で勝負してテイクダウンを切って……みたいなことを言ってますけど、本質はそこじゃないなって俺は思ってます。テイクダウンされることは全然あるし、1回でもテイクダウンされてしまったら、おしまいなのかなって。そうじゃなくて、テイクダウンされてもちゃんと対応する。ちゃんと立つ、もしくはグラップリングで勝負する。切る・逃げるだけじゃなくて、ちゃんと勝負するのがボクの考え方。客観的に見てたときにフェザー級で、それができるのは俺しかいないって思ったんですよ。

――それって、クレベルとの試合が決まってから対策を練るんじゃなくて、普段から積み重ねが……。

金原 そうです、そうです。クレベル対策で1ヵ月2ヵ月グラップリングやって、テイクダウンを切れるほど甘いもんじゃないですよ。ナメんなって話です。

・クレベルはRIZIN参戦以降、別人になっている
・キックは練習がつまらなかった
・YUSHIへの挑発は……
・山本空良戦のマッチメイクはイライラした
・クレベルはケラモフと相性がいい
・クレベルよりグラップリングが強い人たちと普段練習してる
・同世代の選手が変わらず練習をやり続けてからここまでこれた……14000字インタビューはこのあとに続く

【過去記事まるごとセット/2023年9月】
金原正徳、福田龍彌、水垣偉弥、長井満也、太田忍、サーバル、高橋“SUBMISSION”雄己、シュウ・ヒラタ、タケ ダイグウジ、高木三四郎 & 松澤チョロ ほか。コラムもたっぷり!

過去記事まるごとセット/2023年9月

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