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橋本真也を最後に取材した男・松澤チョロが語る「ゼロワン時代の破壊王」

この記事は2021年10月に発表された記事をnoteに掲載します。

元『紙のプロレス』編集者・松澤チョロの脱線プロレスシリーズ。今回のテーマは破壊王こと橋本真也です!(聞き手/ジャン斉藤)


松澤 いや~、楽しみだねぇ!

――なんですか、いきなり!

松澤 今度の10・9『LIDET UWF』旗揚げ戦ですよ!

――えっ、そんなに楽しみなんですか?

松澤 だって、日付が10・9で橋本vs飯塚がメインとかテンション上がるでしょ!

――たしかにメインは橋本(大地)vs飯塚(優)ですけど、破壊王でも引退した飯塚孝之さんでもないですからね。

松澤 まあそうなんだけど、中野(巽耀)さんも出るし、組長ではない藤原(ライオン)さんも出るし、パッと見、当時のUWFっぽい(笑)。『紙プロ』やめてから10年近くなるけど、チケット買って行ったのは巌流島とSEI☆ZAと、このあいだの『LIDET UWF』プレ旗揚げ戦ぐらいだもんなぁ。

――いくらなんでも偏りすぎですよ(笑)。しかも巌流島なんて招待券がそこらへんに転がってそうでしたし。

松澤 まあ否定はできない。今度の『LIDET UWF』のメインに出る橋本大地って、プロレスラーになる前の中学生の頃から知ってたからね。ほとんど話したことはないんだけど。

――松澤さん、破壊王ファミリーの取材とかちょくちょくされてましたからね。

松澤 そう。橋本大地くんは線も細かったし、プロレスラーになるとは全然思ってなかった。プロレスやることになってからも、ぶっちゃけ長く続かないだろうなぁと思ってた。それがいまでは大日本プロレスのチャンピオンにもなってるし、本人には申し訳ないけど、いい意味での誤算というか。

――正直、デビュー後も途中でやめちゃうんじゃないかって思ってた人は多いでしょうね。

松澤 いま29歳みたいだけど、大日本に落ち着くとも思わなかったし。今時の感じでドラゲー系のカッコいい系の身体になるのかなーと思ってたけど、 そこは橋本真也の血は争えないところで身体にちゃんと厚みも出てきてるし。破壊王の3人兄妹の中では一番下のひかるちゃんがトンパチっぽいところあったので、女子プロレスラーになったら「女・破壊王」になるんじゃないか……なんて期待してたんだけど。ひかるちゃんがいま何をしてるのかは知らないけど、もうすっかり大人なんだよなぁ……(しみじみと)。

――松澤さんは元・奥さんの橋本かずみさんと、いまだに繋がりがあるんですよね。

松澤 かずみさんは「ハピまる」という仮想通貨というか、いわゆるネットワークビジネスの世界で結果を出して活躍されてて。俺も勧誘されたことがあるんだけど(笑)。

――誘う相手をおもいきり間違えてますよ!(笑)。

松澤 その世界のことは詳しくないけど、そのパンフレットを作るお手伝いもしたり。破壊王の晩年は婚約者だった冬木薫(冬木弘道・元夫人)さんのインパクトが強いんだけど、やっぱり、かずみさんの存在感はデカいよなぁ。いまはYouTubeもやられてるし。

――あの夫妻って、まず浮気が事実上の公認って、いろんな意味でおかしいじゃないですか。

松澤 昔の芸人の女房っぽいところがあるよね。まあ、いまとなっては芸人も浮気は許されない風潮だけど。

――破壊王の不倫エピソードってホントにヤバイやつがありますよね。大地くんの保育園の先生との話はまだ表に出せる話で。

松澤 それがまだマシなレベルだもんねぇ。

――そういった破天荒な旦那を支えてきたわけですから豪傑ですよ。

松澤 たしかに。冬木薫さんはのちに、結婚詐欺で捕まったんだよね。自分のお父さんのお葬式代を振り込んでもらったけど、それがウソだったとか。

――破壊王やマスコミ数人が冬木薫さんの取り合いになったという話がありますよね。それほど魅力的な女性だったと。

松澤 俺は会ったことはないんだけど、ミステリアスな美魔女感はあったよね。冬木薫さんはあちこちで悪く言われてて、実際に捕まってるから仕方ないところもあるし。

――冬木薫さんとはもう誰も連絡は取れないみたいですね。冬木薫さんの破壊王本の担当編集者でさえも。

松澤 ああ、読んでないけど破壊王の思い出を振り返る本でしょ。

――『破壊王の遺言』ですね。冬木薫さんに送った破壊王の愛のメールが画像のまま30ページに渡って掲載されている破壊力満載の本で。

松澤 うわあ……。その本のAmazonのレビューを読むと、破壊王は冬木薫さん以外にも4人の女性と交際してたんでしょ。英雄色を好むって言うけど、さすがに好みすぎ!(笑)。

――破壊王は自分は浮気するけど、かずみさんに対しては「浮気をしたら一族郎党、根絶やしにする」と吠えてましたからね(笑)。その冬木薫本に対抗したのか、かずみさんがShow大谷プロデュースで『火宅の人 プロレスラー・橋本真也の愛と性』という本を出して。

松澤 えっ、かずみさん本ってShow氏がやってたんだ。

――かずみさんの話す破壊王エピソードはホントに面白いのに、Show大谷さんの原稿構成術が低すぎてまとまりのない内容になってるという。

松澤 あちゃー。こないだジャン斉藤はShow氏のYouTube番組に出て、Show氏のことを「ポンコツ」呼ばわりしてたけど、しばらくぶりにShow氏の酷さを喰らったって感じだよね。

――秋山成勲が桜庭和志戦を振り返るYouTube動画をアップした件で、ボクがShow大谷さんのYouTubeで解説するというやつですね。ところが企画したShow大谷さんが、その動画をちゃんと見てなかったというとんでもないオチで(笑)。

松澤 ホント凄いよ。案の定みんなから叩かれてたけど、そのわりには視聴回数はそんなに回ってなくて。Show氏のチャンネルの中ではいい数字なんだろうけど。

――残念なことにボクの最近の仕事の中では一番、業界関係者から反響がありましたから、業界関係者しか見てないってことですね(笑)。

松澤 それはそれで凄い! でもなんだかんだShow氏はこの業界の中では息長く活動してるよね。自分なんかは全然凄さが理解できないんだけど、なんかしら才能があるってことなんだろうね。

――松澤さんがShow大谷さんに対して一番酷いこと言ってますね。

松澤 いやいやいや、生き残ってるのはなんかしら才能があるってことでしょ。ミステリアスすぎるけど。

――『紙プロ』時代に思ったのは、Show大谷さんはボクらと違ってちゃんと挨拶ができるなって。 

松澤 そんな才能!?(笑)。たしかに挨拶は大事だと思うけど。

―― PRIDE時代のある記者会見のときに、集まったマスコミ全員に名刺を配って自分を売り込んでて。フリーランサーとしてはあたりまえのことですけど、挨拶すらできない我々とは違って社交性はあるなって思いました(笑)。それでいて猪木さんをはじめとする、当時の権力者の懐にすっと入っていける図々しさ。

松澤 入ろうと思っても入れるもんじゃないからね。そこはかわいげより図々しさだよね。『週刊プレイボーイ』なんかでもそれほど面白い記事でもないのに、ずっと使ってもらってるもんね。

――だから松澤さんが一番酷いこと言ってますよ! そういえば、ある人と成功体験の話をしていたら「大谷さんがよく過去を振り返って懐かしむんですよね」と言っていて。 猪木さんと一緒にいた頃の話かなのかなと思ったらTBSの情報番組『ワンダフル』にShow大谷さんがレギュラー出演していたことで。

松澤 ああ、Show氏は『ワンダフル』の格闘技コーナーやってたねぇ。東幹久とかと一緒に。

――「『ワンダフル』の頃はよかったなあ……」ってしみじみ懐かしがっていたそうなんですよ。Show大谷さんにとって『ワンダフル』が人生の頂点なんだなあと。

松澤 まあプロレス格闘技関係者で地上波のレギュラー持つってなかなかいないから、そこは素直に凄いと思うし、本人的にもワンダフルライフだったんだろうなぁ。そういえば、ワンギャルを猪木さんに紹介したとかそういう話もあったよね。

――そんなワンダフルな話はともかく今日は破壊王です!  松澤さんが入った頃の『紙プロ』は破壊王のことは取材できなかったですよね。

松澤 そうだね。新日本プロレスは取材お断りだったから。1・4事変(99年1月4日/橋本真也vs小川直也)も、『橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退SP』(00年4月7日)もマスコミとして取材できてないんだけど。

――『紙プロ』は平成・新日本プロレスを批判するスタンスでしたけど、平成・新日本の象徴である橋本真也というプロレスラーは大好きだったわけですよね。

松澤 そこは単純に破壊王がずば抜けて面白いからだよね。 RADICALになる前の、小さい判型の『紙プロ』で破壊王が表紙になったりしていたし。

――そこは読者としてわかりづらいところがあるんですよね。 RADICALはアンチ新日本プロレスで小川直也推しだったから。

松澤 ああ、なるほど。小川直也は1・4事変のインパクトが強いけど、それ以前と『紙プロ』はどういう関係だったんだろうなぁ。 当時小川のマネージャーだった澤野慎太郎さんと会長(山口日昇)は昔からのつながりだったから取材できたってことなのかな。

――破壊王が新日本をやめてゼロワンを立ち上げてから『紙プロ』も取材できるようになって。

松澤 俺が取材した中で、やっぱ一番のスーパースターは破壊王だったよ。オーラあったし取材となると緊張したなあ。

――「破壊王」というニックネームはもともとあったとはいえ、愛称として定着させたのは『紙プロ』ですよね。

松澤  たしかに『紙プロ』界隈では「破壊王」呼びがあたりまえになってたけど、違和感を感じる人はいたのかもしれないね。ちなみに会長の小川直也に対する「オーちゃん」呼びは違和感あったなあ。変なこだわりで自分は一回も「オーちゃん」表記使ったことない。

――「オーちゃん」って佐山聡先生が付けたあだ名でしたけど、小川に「オーちゃん」って呼びたくなる愛くるしさはないという(笑)。

松澤 そうか、佐山さんが名付け親だったね。前回は原稿チェックの話をさせてもらったけど、破壊王が一番インタビューで鍛えさせてもらったというか。 破壊王は原稿内容なんてどうでもいいという人だから、原稿チェックなんか一切しないわけですよ。

――あれだけ言いたい放題でノーチェック。

松澤 『週プロ』や『ゴング』、『東スポ』なんかでも基本原稿チェックなしでしょ。ゼロワンには広報がいたから一応原稿を見せていたとは思うんだけど。破壊王ってめちゃくちゃ言うから、その原稿を任せられるプレッシャーが……。

――「どこまで載せていいのか?」 という判断を鍛えられたと。

松澤 そうそう。もちろん下ネタとかを含めて、ガチの発言をどこまで載せていいものか。 問題発言を載せて騒ぎになるのはイヤだし、かといって面白いから削りたくないし、破壊王からすれば主張したいことかもしれないし……そこのさじ加減の難しさ。

――『紙プロ』の破壊王インタビューってリズム感がいいし、キャラクターもすごく伝わってくるんですよね。

松澤 そこは会長や吉田(豪)さんがやってきた破壊王のキャラ付けもあるんだろうけど。 そこまで編集が作りこまなくても破壊王は破壊王なんだよね。俺は取材したことはほとんどないんだけど、長与千種や大仁田厚って取材でスイッチが入ると、マスコミ用の喋りになるって話でしょ。破壊王の場合はどんなときでも、破壊王の言葉に聞こえたかなあ。

――バランスがいいですよね。 真面目なところは真面目だし、必ずギャグを入れてオチもつけてくるしで。

松澤 基本はジャイアンタイプ。俺はかなり取材してるほうなんだけど、俺の名前が松澤チョロだということは最後までさ知らなかったと思う。かずみさんのYouTubeで「付き人伝説」というテーマで話してたんだけど、ジェット(若鷹ジェット信介)さんは「ハゲ」、浪口(修)さんは「アホ」としか呼ばれてなかったと。

――大物にありがちですね(笑)。

松澤 付き人関連で好きなエピソードは、破壊王は織田信長好きで、一国一城の主を目指す野望タイプ。信長だったらサル(豊臣秀吉)が脇にいなきゃ、ということで尻尾をつけている葛西純をゼロワンに入れて「サル!」「殿!」というやり取りをしたっていう(笑)。

――ハハハハハ! 葛西さんはゼロワンにはいい思い出なさそうですけど、破壊王は別みたいですよね。

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