怒りの神龍誠インタビュー「あの人とは師弟関係ではないです」
――お久しぶりです!
神龍 お久しぶりです。
――タイに到着した当日なのに取材で申し訳ないです。
神龍 全然大丈夫です。
――まだ練習はされてないんですよね?
神龍 明日の朝からですね。
――宿泊先はジムのゲストハウスみたいなところなんですか?
神龍 いや、普通のホテルですね。でも、予約したところが写真詐欺でエアコンが効かない(笑)。本当は今日の夜から練習したかったんですけど、別のホテルを探す羽目になってしまって。
――到着早々!
神龍 それで体力を持ってかれましたね。1ヵ月も住むのにエアコンが効かないのはヤバイですよ。外を歩くだけでもめちゃめちゃ汗をかくし、暑くて寝られない。練習に支障があるんだったらホテルを変えたほうがいいかなと思って。
――返金はできるんですか?
神龍 1泊分だけ払って他はキャンセルできましたね。
――まあ、この手のトラブルはありがちですから「1ヵ月分はいただきます」は大問題ですよね。
神龍 さすがにマズイですよね(笑)。
――どちらに練習に行かれるんですか?
神龍 バンタオ(・ムエタイ& MMA)です。
――日本人ファイター御用達の。
神龍 イ・ジョンヒョン(RIZIN46)との試合前には、マネジメントのシュウ(・ヒラタ)さんとタイ行きの話はしていて。ジョンヒョンは勝つだろうと思っていたし、6月の超RIZIN3にも向けて行こうかなと。ツイッターを見ていたらヴォルカノがいますね。会えたらいいなと思って。
――元UFCフェザー級王者のヴォルカノスキーはバンタオ所属ですね。行き先はタイ一択だったんですか?
神龍 アメリカも考えてたんですけど、ファイトキャンプの関係で選手がいなかったりすることもあるので。そのへんの事情を考えたときに軽量級がまあまあ揃っていて、レスリングが強い奴が多いのがバンタオなんじゃないかと。
――たしかにアメリカに行っても試合に向けての練習ができなかったら意味ないですもんね。
神龍 練習相手も階級が合わなかったりしたら困るんで。アメリカもどっかのタイミングで行こうと思うんですけど。
――タイには世界中から選手が集まってくるそうですけど、チームメイトとしての配慮がないぶん、練習でムチャなことを仕掛けてくる選手もいるみたいですね。
神龍 それはそれで新鮮で面白いですよね。ボクのこともみんな知っているから日本にいたら、そんなことは起きないですけど。ひとりの選手として、海外の強い奴らと練習できることはワクワクしますね。
――いつも以上の緊張感をもって練習ができるというか。
神龍 その刺激はありますね。何かまた振り出しに戻った感じで「今日はコイツを倒そう、アイツを倒そう」みたいな楽しみがあります。
――やっぱり海外で練習することは経験としては大きいと。
神龍 まだやったことがないのでわかんないですけど(笑)、大きいんじゃないですかね。17歳か18歳のときにタイで1週間くらい練習したことがあるんですよ。そのときはTEPPENジムの合宿だったんですけど、やっぱり刺激はあったので。
――いま誰か日本人も来てましたっけ?
神龍 さっき外で●●さんに会ったんですけど……。
――あ、じつは来てるみたいですね。
神龍 同じタイミングで来るという話は聞いてて、明日ジムでも一緒になるかもしれないですね。
――クレベル・コイケがタイでキャンプを張ったときはいろんなジムに足を運んだそうですけど。バンタオ以外でも練習する考えもあります?
神龍 そうですね。やってみて合わなかったらタイガームエタイに行ってもいいのかなって。何でも試してみないとわからないじゃないですか。せっかくタイに来たし、週3バンタオ、週3タイガームエタイでも面白いのかなって思います。
――そこは何がなんでも計画どおりに進めるんじゃなくて、臨機応変に対応すると。
神龍 やっぱり何事も思ったとおりにはいかないですからね。いままで一番ショックを受けたのは神龍マスクを忘れたことで。DEEPの藤田大和戦(2022年5月8日)のときにマスクを持ってくるのを忘れたんですよ。
――入場するときのマスク。そんなにショックだったんですか?
神龍 もうショックすぎて……「ヤバイ、負けるかも」と思って、東京ドームシティのジェットコースターを乗りに行ったんですよ。
――なぜですか!たしかに後楽園ホールの隣にありますけど!(笑)。
神龍 ルーティーンが崩れたりしたときに精神的に影響があって負けたりすることがあるじゃないですか。
――ルーティーンにこだわるスポーツ選手って多いですよね。やることをやって、あとはいかに自然に勝負できるか。だから神経質なほど「いつも通り」を求めるのかなと。
神龍 だったら崩しちゃおうと。
――でも、試合前にジェットコスターに乗る人は初めて聞きますよ(笑)。
神龍 本当に試合直前に乗りましたよ。それで後楽園ホールに戻ったら、セコンドの人も「マジかよ!」ってビックリしてました(笑)。
――それで気分が晴れました?
神龍 晴れましたねぇ。あそこをきっかけにいろいろ崩せた自分もいるんで。そこまでルーティーンにこだわらなくなったし、精神面でも強くなったのかなって思いますね。
――超RIZIN3の扇久保博正戦は記者会見から大騒ぎになっていますけど、精神的にきてないですか?
神龍 全然大丈夫です(笑)。
――神龍選手はかつてパラエストラ千葉(現ブラックベルトジャパン)所属で扇久保さんとは先輩・後輩の間柄ですけど。まさかこういうトラッシュトークが展開されるとは想像していましたか?
神龍 いやあ、していないですね。「どういうパターンで来るのかな」と思っていて。ボクはRIZIN46のときに「あえて言わせてください。扇久保先生、俺はあなたを超えます」と言ったんですけど。まあ端から見たら師弟関係に見えると思うので……。
――ちょっと待ってください。「端から見たら」ということは神龍選手本人は師弟だとは思ってないってことですかね(笑)。
神龍 思ってないですね(キッパリ)。でも、師弟だと思われるなら、そういう関係としてやってもいいのかなと思ったんですけど。それは扇久保さんが望まなかったんで、ああいう風になりました。
――このあいだのRIZIN46のやりとりも「俺を殴れるのか?」「扇久保先生!」ってお互いに言いたいこと言ってるだけで、噛み合ってない面白さがあったんですけども(笑)。神龍選手の「扇久保先生」というマイクは事前に考えていたんですか?
神龍 いや、言うつもりなかったですね。他に言いたいこと、考えてたんですけど、やっぱり試合をやったあとだと飛ぶじゃないですか。
――興奮状態ですもんね。
神龍 ちょっとした煽りも入れようかなと思ったんですけど、飛んでいるのにやって変な感じになるくらいだったら「これでいいかな」みたいな。
――RIZIN46は“師弟対決”のいい雰囲気が伝わってきたんですが、記者会見でああいう風に挑発してきたのはどう思いました?
神龍 いや、びっくりしたっすよね。「やめた理由を言ってみろ!」と言われて喋ったら「喋るな!」って(笑)。
――ハハハハハハハ!
神龍 一応先生だから「はい」みたいな感じになっちゃいましたけど(苦笑)。
――いまだに先生という意識はあるんですね。
神龍 実際に「扇久保先生」って呼んでいたし、そこでブチ切れる感じではなかったですけど。
――扇久保さんのああいう一面を初めて見たんですか?
神龍 いや、あんな感じで言ってきますよ、「マコト!」って。そこは変わってないですよ。
――神龍選手がジムをやめた理由は扇久保さんが言ったように「親と一緒に来るな」と言われたことに反発したからなんですか?
神龍 それもイヤな理由ではありますよね。「次の日から親を連れてくんな」って言われたのは、DEEPの和田竜光戦(2018年4月28日)で負けたあとで「だから負けたんだよ」みたいな感じで言われて。でも、お父さんは自分のことを見てくれる先生だったし、プロ練になるとみんな練習してボクのことを見てくれないから。お父さんは本当に立ってるだけなんですよ。ボクが休憩で水飲みに行ったときに「こういう風にしたほうがいいんじゃないの?」って小声で言うくらいで、べつに圧かけるようなことは一切してないですよ。そんなお父さんをああいう風に言うのはムカつきますよね。だから反発して、扇久保さんに「連れて来るな」と言われた次の日にもお父さんを連れて行きました。
――そこは譲れなかったわけですね。扇久保さんからすると家族がいると指導しづらいところがあったんじゃないかなと思います?
神龍 いやあ、パシリにできなかったんじゃないですか(笑)。
――いいように使えないと。
神龍 いまだから言えますけど、トイレ掃除にしても……扇久保さんのことは取材してるんですよね? どういう風に言ってるんですか?
――ええと……なんか告げ口してるみたいでイヤですね(笑)。
神龍 言ったほうが面白くなりますよ。
――まあ扇久保さんからすると、目にかけてる選手、光ってる選手に別のことをやらせたというか。扇久保さん本人は若手時代、鶴屋(浩)さんにそう命令されて嬉しかったから、神龍選手にもトイレ掃除をやらせたとは言ってますね。
神龍 ……それ、絶対に後付だと思う(笑)。
――後付けですか!
神龍 だと思いますよ。だってあのとき「オマエは一生トイレ掃除しとけ!」って言われたんですよ。会見後の他のインタビューでは「毎日トイレ掃除しろって言われた」と答えてるんですけど、そこまで言う必要はないのかなと思ってて「毎日」にしてました。でも、そのあとSNSでさらにお父さんのことを言ってきて、ホントにムカついたのでこっちも言いますよ。当時言われたのは「毎日トイレ掃除しろ」じゃなくて「一生トイレ掃除しとけ」です。
――神龍選手としてはブレーキを掛けたんですね。
・目にかけていたら「●●●」なんて言わない
・ジムに溶け込めなかったのは……
・お父さんのことは言ってほしくない
・扇久保さんに優しくしてもらった思い出
・いまだにどうすればわからないこと……11000字インタビューはこの後へ
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