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RIZINフェザー級チャンピオン・鈴木千裕13000字インタビュー

ケラモフを破りRIZINフェザー級チャンピオンに輝いた鈴木千裕13000字インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)

【因と縁のRIZIN】斎藤裕「クレベルに勝てば、ケラモフ戦のラインに……」

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――絶望から始まったRIZINですが、まさかこうなるとは思わなかったです!

千裕 あのときは地獄でしたよ。何回やめようとと思ったことか……二刀流のチャンピオンになると信じてくれていた仲間もいましたけどね。

――RIZINデビュー戦で負けたのに、そのあとチャンピオンになったのは鈴木千裕選手が初めてだから、相当すごいことです。試合後はフワフワしているということで実感が湧いていない印象でしたけど、アゼルバイジャンから帰国されていかがですか?

千裕 ちょっとずつ湧いてきましたねぇ。チャンピオンとしての自覚は勝った瞬間からあったんですけど、アゼルバイジャンのときはアウェイだったこともあって変な感じで。めちゃくちゃいい国だったんですけどね。

――国外だったことで現実感がなかったんですかね。負傷した親指の具合はどうなんですか?

千裕 まだ痛いですね。親指でパウンドを打っちゃったんで、ちょっとずつ治療していく感じで。

――検査はまだしてないんですか?

千裕 今週、行きます。いまは時差ボケがヤバくてずっと寝てますね(笑)。

――アウェイ感はすごかったんですか?

千裕 入場してコールされるときに「ブー!」で、相手のケラモフ選手がコールされると大歓声。まあそれはそうだなって。日本だと誰でも受け入れるというか、外国人だからってブーイングはないんですけど。アゼルバイジャンでは試合以外で何かアウェイ感があったわけではないですね。

――千裕選手が勝った瞬間、会場は静まり返ってましたよね。

千裕 それも初めての経験ですねぇ。普通はあんな勝ち方をしたら大歓声ですよね。でも、「負けたの……?」ってシーンとしちゃって。でも、こっちは勝ったんだから関係ねえ!って感じですよ(笑)。いつもどおりに行こうと。

――ケラモフ選手は母国開催ということもあっていつもより緊張していたという話も聞こえてきますが、対峙して何か感じることはありました?

千裕 当然ボクも緊張していましたし、前回のケラモフ選手の試合(朝倉未来戦)は日本じゃないですか。ケラモフ選手はやってくる側なので、そこは今回とは違ったんでしょうけど。

――ホームのプレッシャーがあるか、ないか。

千裕 でも、ケラモフ選手のコンディションはアゼルバイジャン開催ということで過去最高によかったと思うんですよね。自分の国で減量できるわけですから。自分のことでいえば、いつもと違うこともあってコンディションはよくなかったですね。

――アゼルバイジャンには試合の何日前に入ったんですか?

千裕 3日前ですね。日本からアゼルバイジャンまで18時間かな。ボクはウォーターローディングといって1日に7リットルの水を飲まなきゃいけないから、飛行機の中でずっと水を飲んでましたからね。

――怪しい(笑)。飛行機の中はどう過ごしてたんですか?

千裕 ずっとイメトレです。機内食じゃなくて自分で持ち込んだ減量用のお弁当を食べながら。リカバリーするにしても日本とは勝手が違うじゃないですか。

――アウェイの厳しさを感じたわけですね。

千裕 まあでもそんなに関係ないっすけどね。みんな大変だっていうけど、時差5時間なら5時間早く寝ればいいだけだし、食事もレトルトになっちゃうけど日本から持っていけばいいだけだし。そんなことで勝敗が左右させられちゃうような、甘ったれた練習はしてないですよ。関係ない。

――さすがです!(笑)。でも、減量の不安はありませんでした?

千裕 全然大丈夫です。一度ダメだったフライ級のときと違って学生じゃないし、いまはちゃんと減量トレーナーも付いているし、練習できる時間もしっかりあるので。片手間じゃないからそこはもう大丈夫です。

――プロとして取り組んでいるってことですね。最初に右ストレートを当てられたじゃないですか。テイクダウンされることは想定していたそうですが、打撃はどうだったんですか?

千裕 そこも想定してました。ストレートを打ってきた瞬間、アゴを引いて額にポジションを変えたから、脳が揺れるとかダメージはなかったです。アゴだったら危険ですけど、アゴをちゃんと引けばオデコに当たるんで。

――それはケラモフの打撃が見えていたってことですね。

千裕 見えてました。すぐにリターンしようとしたらすぐにテイクダウンにきて。あれはうまかったですねぇ(しみじみと)。

――あのテイクダウンは見事ですよね。

千裕 ケラモフ選手の練習を見てるとスパーリングをいっぱいやってるんですよね。だからスパーの慣れが出てるというか、たぶん相手が攻撃したらテイクダウンするという動きが身体に馴染んでる。勝手に身体が動くんでしょうね。それは練習をすごくしてるんだろうなって。

――千裕選手はケラモフ相手ということで、今回はレスリングを強化されてきたんですよね。

千裕 いつもよりは力を入れましたね。レスリングの高谷(惣亮/ロンドン&リオ五輪代表)さん、あとは日大レスリングの選手たちが協力してくれて。

――4部練までやっていたという話ですよね。ある日のスケジュールは朝1時間の階段ダッシュ、10時からボクシング練習1時間、14時30分からキック3時間、21時からレスリング1時間30分……身体と精神がよくもつなあと。

千裕 まあ、いつもどおりだったりするんですけど、そこは覚悟ですよ。それがボクの仕事だし、勝つためにはなんでもやるしかないんで。

――ケラモフにテイクダウンを許しても、ちゃんとガードに戻したことが勝利を引き寄せたところがありますね。

千裕 やっぱり総合格闘技なので、普通に全部できないと勝てないですよね。倒されてもそこから立ち上がる。ポジションを変える。そこはクレベル選手のときに学んで。あのときは倒されたあとにポジションを変えられなかったんですけど、今回は修正できたから、少なからずあのときより強くなってます。

――クレベル戦の反省が活かされてると。

千裕 常に格闘家は何かを改善しながら毎日生きているんで、昨日より強くならないといけないですし、一歩でも強くなっていかないといけないんで。

――朝倉未来戦のバックチョークの動きも当然参考になったんですか?

千裕 そうですね。あのバックチョーク、狙われるなと思ってました。テイクダウンされて、中途半端に立とうとするとバックを取られるんでガードポジションに戻そうと。そこから立とうとすればいいし、その中の攻防で何か見つければいいんで。そうやって構えられる余裕を練習することで作りました。倒されて「ヤバい、ヤバい」って焦るんじゃなくて「倒されても全然大丈夫。じゃあどうやって立とうかな」っていう余裕。そこを作れたことが大きいですね。

――練習を重ねることで次の一手が用意できたし、ピンチに慌てない精神力を身につけたと。

千裕 そう、用意してるんですよ。テイクダウンされてもべつに焦ってない。全然冷静だったし、じゃあ次は何をやろうかと。あたふたしない心の強さと自信を身につけてきたんで。

――そうして衝撃のフィニッシュシーンが訪れるわけですけど……あの蹴り上げは作戦でもなく、なんとなく思いついたそうですね。

千裕 やっぱり戦いの中で答えを見つけるのがボクのスタイルなんで。そこは頭の隅に知識としてあったんですよ。沖縄へ練習に行ったときにパラエストラ沖縄代表の松根(良太)さんから「RIZINは蹴り上げがある。蹴り上げの殺傷力は非常に高いから、バンバン蹴ったらいい」って言われてたんですけど。そういえば松根さんはあんなことを言ってたな……と。

――テイクダウンされたときに思い出したんですか!(笑)。

千裕 そうなんですよ! で、ケラモフ選手はパウンドを打ちたいフェーズだなと。パウンドを打つために上体を起こす動きを察したんで、三角絞めをかけるふりをしたんです。そこはクレベル戦の対策にも繋がってるんですけど。クレベル選手が三角にきたら、すぐに上に胸を張って上体を起こしてリセットするっていう練習をいっぱいやってきたから、相手の動きがわかるんですよ。

――クレベル対策を練ったことでケラモフ打倒の道筋が!

千裕 フェイクの三角を仕掛ければ上体を起こしてくれるだろうと。実際にそうなったので、おもいきり蹴り上げたんですよね。だから松根さんのアドバイス、あとクレベル戦の三角対策が合わさったことでの蹴り上げですよね。

――蹴り上げって普段の練習では試せないですよね?

千裕 無理っすねぇ。でも常にイメトレしてたからできるんですよね。たとえばランニングするときも常に試合のことを考えて「空間が空いたらやってみよう」とか。だからドンピシャで当たったんだなって。

――蹴り上げだから、手ごたえという表現ではないですけど。感触はありました?

千裕 足ごたえがありましたねぇ! パンチで倒すときの感覚はあったんで「これ、効いてるかもしれない」って。ケラモフ選手の身体が降ってきたときに足でガッチリ支えて追撃して終わらせようと。

――カメラの角度だからだとわからなかったんですけど、ケージサイドのお客さんが撮った映像だと、ケラモフが蹴り上げで失神してるシーンがよくわかるんですよね。下から殴ってる瞬間、ケラモフの意識が落ちていることはわからなかったですか?

千裕 いや、落ちてることはわかってました。間違いなく落ちてました。でも、手を緩めたら意識が戻ることもあるので。ここで決めようと思って、できるかぎりのパウンドを打とうと思って。

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