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“奇跡の復帰戦”関原翔インタビュー 空白の726日間

大ケガ奇跡の復帰を果たした関原翔インタビュー!!(聞き手/松下ミワ)

「RIZINに潰れてほしくないから箱庭のままでいいよ!」■川尻達也クラッシャートーク

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――5月3日DEEPマサト・ナカムラ戦は、生死をさまよう大ケガを負った伊藤裕樹戦以降、2年ぶりの試合でした。見事な勝利で再スタートということで!

関原 ありがとうございます! というか、あの試合も序盤にちょっとトリッキーな打撃をもらって、じつはあんまり覚えてないんですけどね(苦笑)。

――そ、そうだったんですか!? 復帰戦の序盤も序盤だったので、クリーンヒットを受けたときはこっちもヒヤっとしましたが……。

関原 でも、復帰までの期間はずっと寝技の練習をやっていたので、その動きが自然と出てなんとか勝てたかなという感じでしたね。

――ひさびさにケージに立って感慨深い感情はありました?

関原 ケージに入ったときには試合に集中していたのでアレですけど、やっぱり後楽園ホールに会場入りしたときですよね。「ああ、2年前はここでブッ倒れたんだな~」とか思って。

――あの伊藤戦も後楽園ホールだったんですよね。

関原 しかも、ちょうど同じ5月だったんですよ。だから「ここでやり返すか……」という感じで。まあ、復帰戦なので自分も「最初の1分だけは気をつけよう」という話はしてたんですけど、見事にもらっちゃいましたねえ。

――でも、そこは覚えてないという。

関原 そうなんです。相手がミドルキックを蹴ってきて、ボクがそれをキャッチしてタックルに行こうと思ったときにもらっちゃってる打撃なんで。だから、1ラウンドが終わってセコンドに帰ったときに「ダウン取られたから」と言われたんですけど、「え、俺ダウンしてないよ」と。そのダウンした・してないの会話で1分間が過ぎちゃいましたね(苦笑)。

――ラウンド間にはドクターチェックも入って。

関原 だから「誰のチェック?」と聞いたら「関原さんだよ」と。それで会場の画面を見たら、顔がこんなに腫れてるから「あ、そうなんだ……」という感じでした。2ラウンド目以降の試合展開はちゃんと覚えてるんですけどね。

――そこからは、2年間やってきた柔術で優位に試合を進めて、判定3-0という結果でしたね。そして、試合後のマイクが本当に素晴らしかったです!

関原 あ、そうっすか?(笑)。

――「2年前に生死をさまようなケガをして、復帰できるかわからなかったけど、歩けない状態からコツコツやってきた」という内容でした。

関原 まあ、会場のお客さんも凄い声援をくれたんでビックリしました。入場したときにもワーッという感じでしたし、試合後はファンの方からもDMみたいなのが100件以上来て。「感動した!」とかそういう声はいろいろともらいましたね。

――DEEPのお客さん、優しいですよね。

関原 「ああ、みんなが応援してくれてるんだな」って。でも、ボク自身は一本極められなくて悔しいという気持ちしかなかったんですけど(苦笑)。あの試合は絶対に極めたかったので。

――ただ、顔の腫れも凄かったですし、試合後はそれどころじゃなかったんじゃないですか?

関原 だからすぐに病院に行きましたね。MRIとか全部受けて「大丈夫だよ」と。でも、あらためてMRIをとったら、昔にもいっぱい骨折をしてたっぽくて。鼻も何ヵ所も折れてるし、もうどこが今回の骨折かわからないみたいな感じでしたね。

――そうだったんですか……。でも、格闘家の方って、いつのまにか骨折していたことはよくあるみたいですよね。

関原 だから一応、今回殴られたところも折れてはいるんですけど、折れてる箇所が多すぎて、よくわからないという。じつは、鼻もここから下は骨がないんですよ、ほら(拳で鼻をグリグリしながら)。

――うわっ! 見てるほうが痛い!

関原 いや、もう痛くもなんともないんですけどね。

――ということで、今日はその復帰に至るまでの2年間のことをいろいろとうかがいたいなと思うんですが、まず2年前の伊藤戦は覚えてますか?

関原 あれはもう全部覚えてます。3ラウンド全部覚えているし、その後のことも覚えてますね。

――伊藤戦は3ラウンドの最後の1分が本当に激しい打ち合いになって。いつレフェリーに止められてもおかしくない状態でしたが、関原選手自身はどんな感覚だったんですか?

関原 単純に「おお、伊藤くん強えなー」って。ただ「こっちも負けねえぞ」という気持ちがあったんで、「お互いに出し合おうぜ」みたいな感じだったと思います。

――自分がめちゃくちゃ被弾していることもわかっていた、と。

関原 わかってましたし、意識もはっきりしてました。だから、レフェリーとも目が合って「止めないでくれ」とアイコンタクトして。「まだやれるぞ」というアピールですよね。ボクが打たれて、レフェリーが止めに入ろうとしたときに「まだいけるから」というのを目で伝えた感じでした。

――うーん、それだとレフェリーもなかなか止められないですよね……。以前、伊藤選手にお話をうかがったときも「関原選手の目が死んでなかったから自分も行かなきゃと思った」と言われていて。

関原 ああ、そうだと思います。伊藤くんとも目が合って、お互いに「来い!」という感じでしたし。伊藤くんもいい男なんでね。だから、最後の1秒まで勝つか負けるかじゃなく、ボクは勝つことしか考えてなかったです。

――試合後はそのまま病院に行かれたんですか?

関原 そのあとは、酸欠気味だったんでちょっと休んでて、病院に行ったのも救急車じゃなかったんですよ。普通に車で向かったんですけど、そしたらどんどん……なんか地球に吸い込まれていく感覚というか。

――地球に吸い込まれていく!? ど、どういうことですか?

関原 なんかもう普通じゃないな……と。もの凄く重力を感じて吸い込まれていくような。だから「これ危ないな……」と思いました。

――感覚としては、やはりどこか痛みがあったり?

関原 もう頭が落ちていくイメージですよね。で、救急じゃなかったし、夜だったんでドクターには最初「明日、診るから」と言われていて。だから「いや、いますぐ診てくれ」とお願いしているあいだも、だんだんしゃべれなくなってきてました……。

――病院は、どなたと行ったんですか?

関原 自分の両親と行きました。両親は試合も会場で観てくれていたんで。それで、そのあとドクターもすぐにMRIをとってくれて対応してくれて。

――そういうことも全部覚えてるんですね。

関原 覚えてます。あの試合はいっさい記憶は飛んでないですよ。

――その後、即入院ということだったんですか?

関原 そうっすね。その日は1日入院して……?(首をかしげながら)。

――え、そこは覚えてないんですか?

関原 いやー、なんか1回退院したかもしれないですねえ。というか、抜け出しちゃったかもしれないです。

――ぬ、抜け出した!? なんでですか?

関原 なんか、もう大丈夫かなって(笑)。

――ええーっ! めちゃめちゃ危ないですよ!

関原 でも、そのあとすぐに病院に連れ戻されました。なんか、病院のすぐ目の前の道で倒れてたみたいですね。

――やっぱり危ない……。

関原 そこでナースの方が発見してくれて、強制的にまた入院という。抜け出したときは「まあ大丈夫っしょ」みたいな感じで意識はあったんですけどね。でも、また入院になっちゃって。

――そのときって、もう検査結果とかは全部聞いていたんですよね?

関原 脳出血という診断でしたね。最初、CTには出血は写らなかったんですけど、MRIでは脳出血が発覚して。でも、最初はそんないきなり開頭手術するようなところまでじゃなかったんですよ。そのあと徐々に血が出てきてたらしいんですけど。だから、同じ硬膜下血腫でもいきなり手術しないといけないパターンと、ボクみたいに急性から慢性みたいな、緊急手術はしなくていいものもあるみたいですね。最初の衝撃で血が出てはいるんだけど。

――じわじわ出てくるということなんですかね。

関原 で、その日は手術もしてないし、実際に普通に歩けてもいたんです。でも、次の日に道で倒れていたというのは、たぶん脳からの出血が脊髄を伝って尾てい骨あたりに血がずっと溜まっていったみたいで。そのあたりに足の神経があるらしいんですけど、そこにぼっこり血が溜まっちゃって、それで足が動かなくなって倒れちゃったという。

――歩けなくなった原因はそれだったんですか……。

関原 血が徐々に降りてきたからですね。だから、背中のMRIとかでも血が全部脊髄に流れていく感じが写っているんですよ。

――それは結局、どういう手術をしたんですか?

関原 ええっと、結局は脳の手術はしてないですし、尾てい骨の血もずっと痛み止めの注射を打ってもらって、それで治ったという感じです。だから、手術したのは顔のこめかみとか、いろいろ骨が折れてたところだけでした。

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