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RIZINに外国人を取り戻す■RIZIN海外事業部・チャーリー柏木信吾

RIZIN海外事業部・柏木信吾10000字インタビュー! 海外MMA団体の躍進とコロナの影響により招聘しづらくなっている外国人問題を語ってもらいました!


――まずはRIZINハワイ会見お疲れ様でした!

柏木 ……そんなこと、もう忘れちゃいましたよ。人間はツライ記憶を頭から消し去るという自己防衛本能がありますからねえ。

――ハハハハハ! やっぱりメイウェザーが出席するとなるだけでも大変なんですね。

柏木 今回はとくにヒドいんです! 海外チーム3名が現場で孤軍奮闘ですよ!

――あれをたった3人で!

柏木 本来なら笹原(圭一・RIZIN事業局長)さんも「ハワイに来い」と言われていたのに、頑なに拒否してましたからね(笑)。「パスポートの期限が……」とか「ワクチン証明が……」とかゴニョゴニョ言って。

――ヒドい言い訳(笑)。クビにしましょう。

柏木 何がなんでも行きたくないというのが全面に出てました(笑)。まあ、その気持ちはよーーーくわかりますけどね。ボクは、一番最初にその白羽の矢が当たってしまったので(苦笑)。

【編集部より】
最近の世の中はこの手のシャレというかジョークが通じなくて「仕事を放棄するとは何事だ!」と笹原さんにお叱りの声をぶつける方がいらっしゃるので、念のため笹原さんの言い訳インタビューもお読みください。

堀口恭司再生トーナメントが始まります■笹原圭一RIZIN広報

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――それだけ苦労してハワイ会見を強行したのは、やはりRIZINの海外進出の足がかりにしたいという狙いがあったからなんですか?

柏木 まあ、海外進出というよりは、もう連れてくるだけでいろんな人が注目してくれるフロイド・メイウェザーと仕事をするわけなので。だったらメイウェザーを利用して海外に向けたバズるような宣伝をやりたいというのが一つですよね。

――国内外問わず、とにかく話題になるように。

柏木 これまでのRIZINは、普通の会見をやって、大会やって……というテンプレートで淡々と進めていく感じがありましたが、やっぱり攻めのプロモーションが必要なんじゃないかと。ハワイ会見は、そういう話から始まりました。ズバリ、そこが榊原(信行)社長の言う「ブレイキングダウンに学ぶところ」というか。会見全体をバズらせるというよりも、たとえば会見の中の5秒がバズるだけでいいんですよ。今日のRIZIN.38の会見のように、30分の会見を淡々とやって1万3000人が見てましたという平均値が高い会見よりも、平均値が低くてもいいから突き抜ける瞬間が5秒でもあればという、その発想ですよね。

――格闘技の会見で1万3000人も見ているのも異例なんですけど、さらに上を目指すと。

柏木 そのために山場をつくって、しっかりバズってくれれば、そこが切り取られて何百万回も再生されていく。だから、ハワイ会見の目的はその2点ですよね。メイウェザーの有効活用と、攻めのプロモーションです。

――平本蓮選手の割り込み通訳もあり、日本ではけっこう話題になりましたが、現地の反応はどうだったんですか?

柏木 向こうの反応は……まあ、軽くウケてはいましたけど、平本選手のTシャツに不満が噴出してましたねえ(苦笑)。

――あ、何か英語で書いてましたよね?

柏木 「Who is F◯◯kin' MMA Beginner」、つまり「この中でMMA初心者は誰だ?」と。それをメイウェザーの味方についている彼がメイウェザーの後ろで着ているわけですよ。だから、メイウェザーの仲間内からは「なんなんだ、あのTシャツは!」と。

――ハハハハハハ! それは誤解されても仕方がない(笑)。

柏木 というか、そもそも会見で「F◯◯k」と書いてあるようなTシャツ着てくるなという話なんですけどね(苦笑)。

――ごもっともです!(笑)。

柏木 でも、逆にどうでした? あの会見の印象としては。

――いや面白かったですけど、もっとハワイ感を感じたかったなというか。メイウェザーの用心棒が朝倉未来選手を突き飛ばしてましたけど、それもビーチや海でやったりとか。

柏木 「わざわざハワイでやったのなら……」ということですよねえ。もちろんやりたいことはたくさんあったけど、やっぱり自分のブランディングにこだわりを持っている人たちがあれだけ集まったわけですから。たとえばボクらのほうで「こういう会見やろうぜ」「いいね、それでいこう」となっても、メイウェザーに「NO」と言われたら終了じゃないですか。

――メイウェザーのことだから急にビーチで会見はやりたくない、とか言い出しかねないですし。

柏木 そのメイウェザーは会見に遅刻してきましたし(笑)。「向こうから歩いてきてます」というあいだにも会見の進行が変わってますからね。まさに孤軍奮闘ですよ。

――あと、現地ではトライアウトも行われていましたよね。

柏木 トライアウトはエンセン井上さんがもの凄く動いてくれて。だから、映像が入るか入らないかとかに関わらず、最終的にはちゃんとしたトライアウトとして着地させられました。ハワイの選手は基本的にレベルは高いですから。そもそもハワイアンの選手は好戦的なので。闘争民族というか、そういう遺伝子を持ってるファイターたちなので迫力もありますよ。トライアウトにはマックス・ホロウェイも来ていて、彼のジムから2名出たりしてましたね。

――その中から何名かはRIZINに上がる可能性も?

柏木 今回トライアウトをやったことによって、選手たちもある程度見ることができましたし、最終的に9人合格したんですけど、全員参戦できるかどうかは別にして、ハワイ大会のアンダーカードの選手だったり、ある意味、片側の選手は確保できているので、ハワイでRIZINはやりやすいのかなと思ってます。

――1年後のハワイ大会に向けて着々と動いているという。

柏木 運営としてはもう動いてます。今回、ハワイ州の上院議員であるグレン・ワカイさんという方ともお会いして、彼がスポーツ推奨というか、スポーツを通じて経済効果、経済発展を目指すという政策を全面に出している方なので、今後RIZINがハワイに来ることによる効果みたいなことを話したら、「ぜひ、来てほしいしそのための協力はする」と。だから、そういう意味では今回の動きの中でも収穫はあったと思います。

――以前、ベラトールがハワイ大会を開催したときに現地の観光局からかなりサポートがあったという話もありました。

柏木 まあ、観光局というのはある程度の予算を持ってますから。そこを使ってというのは当然あります。だから、ベラトールともうまく話してスケジューリングしないと、そこの取り合いになっちゃうのはマズイですから。その点、今回はスコット・コーカーもハワイに来てくれたので、そこはちゃんと話はできたんですけども。

――そもそも、ハワイはベラトールの“島”ということですもんね。

柏木 ハワイはUFCがアプローチしたけど開催はせず、ONEもアプローチしたけど開催せず、ベラトールが来てうまくやったという感じなので、そこにボクらが入っていくとなると、やっぱりうまく調整しないと。

――ハワイ開催というのは、運営側にとってはけっこうやりづらいものなんですか?

柏木 ハワイやりづらいですよ(しみじみ)。やっぱり島国なので、みんながみんな仲が良さそうなんですけど、そうじゃない何かもあったりして。あとは、今回会見をやるにあたっていろんな業者さんに発注しましたけど、当然“外地プライス”というか。

――お高いわけですね。

柏木 「たっけー!」って感じです(苦笑)。まあ、そこも含めて調整は必要ですよね。

――ところで、先ほどトライアウトの話もありましたが、RIZINに参戦する海外選手って魅力的な選手が多いなという印象で。

柏木 ああ、ありがとございます。

――今回のスーパーアトム級トーナメント参戦選手も、凄く印象に残る選手でしたよね。

柏木 たしかに、彼女たちはいい選手でしたね。ボクとしてはちょっと時期が早かったですけど。

――そういう選手というのは、どういう感じで見つけてくるんですか?

柏木 それは階級によってもいろいろと変わるんですけど、たとえば今回のスーパーアトム級って世界的にもそんなにやってるイベントが少ないですよね。ボクが知っているかぎりでは、RIZIN、ONE、インビクタと、あとは最近カナダに新しくできたPAWCという団体があるんですけど、ラーラ・フォントーラなんかはそこのチャンピオンなんですよね。

――ああ、なるほど。

柏木 なので、やっぱり日々のリサーチと、アトム級をやってる団体のマッチメーカーともつながるようにしています。あとは、ストロー級でやっている選手のマネジメントに「49キロまで落とせない?」というような交渉もしますね。そのほか人気の階級に関しては、もういろんなマネジャーとつながるようにしていますし、自分の中で選手のグループ分けがあって、ちゃんとMMAで強い選手グループ、打撃や寝技など一芸が光る選手グループ、あとは成長過程の選手の情報も持っておくという。

――要は、特定の日本人選手を出さなきゃいけないときに、その選手に当てる選手としていろんな情報を蓄積している、と。

柏木 そうです。その中で、やっぱりボクとしては強い選手を世界中から探してくることがモチベーションにつながりますし、だからボクはグランプリが凄く好きなんですよね。ただ単に強い選手を呼んできて、日本で試合してもらうことができるので。そこで、結果としてグランプリに参戦した選手の中から世界に通用する選手が出てきてくれているというのは、ボクの中では一つの答えというか。トフィック・ムサエフ、イリー・プロハースカ、マネル・ケイプ、あとはカリッド・タハもUFCに参戦していますし、女子でいえばマリア・オリベイラもUFCで戦っていますから。やっぱり、グランプリに出た選手でUFCやベラトールに参戦している選手は多いので、それは非常にうれしいですよ。

――ちなみに、朝倉海選手と沖縄でやるはずだったヤン・ジヨンも柏木さんですか?

柏木 そうです。ボクですね。

――いま世界のMMAのレベルが上がっているからかもしれないですけど、普通に強かったですよね。

柏木 いい選手ですよね。とはいえ、ちゃんとやったら朝倉選手が地力勝ちするだろうなとは思います。

――そういう意味では、今回のラーラ選手もアナスタシア・スベッキスカ選手も、あと2~3年やったらビッグプロモーションと契約しそうだなという絶妙さもありますし。

柏木 もちろん、そこを狙ってピックアップしていますね。というか、本当はボクもあと1年ぐらい待ちたかったんですよ。ただ、ラーラなんかはこれで1年ぐらい待っていたら、どっかのタイミングでコンテンダーシリーズに出るだろうなと思ってましたし。いまのUFCはメジャー、マイナー、トリプル、4軍ぐらいまでできているじゃないですか。こっちも早めに契約しないとすぐに持って行かれてしまうんで。それこそ、ラーラはRIZINに上がらなかったらコンテンダーシリーズでほぼ決まりのような選手だったので、今回勝っても負けてもRIZINで育てればいいかなという気持ちがありました。

――いまRIZINで試合を見られるのは貴重かもしれない。

柏木 アナスタシアに至ってはIMMAFの世界チャンピオンですからね。いまのIMMAFってどんどん大きくなっていて、レベルがめっちゃ上がってきてるんですよ。もう各国に責任ある組織があって、いま150カ国以上が参加しているんですよ。

・ベラトール、ONE、PFL…脅威的すぎる海外団体の資金力
・外国人選手がウケるのは4回目から説
・コロナ危機とPRIDE幻想の消失
・RIZINは「下町ロケット」……などなどインタビューはまだまだ続く!

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