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西川大和UFC契約の舞台裏/RIZINマッチメイク二転三転■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク

多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー。(この記事は10月1日にニコ生配信されたものを編集したものです)


――というわけで、前回のインタビューはいろんな意味で大反響だったんですけど、シュウさんのところにお叱りのDMは届かなかったでしょうか。

MMAシーン縦横無尽16000字!! シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク

前回のインタビュー

シュウ そんなことはなかったですよ。どちらかというと、理解の高い方が多くて。

――Dropkickメルマガの会員は“大人のファン”が多かったということですかね(笑)。

シュウ そうですね。罵詈雑言を浴びせてくるようなDMはそんなに来なかったんで、大丈夫でした。

――いつもは罵詈雑言のDMが飛んでくるわけですか?

シュウ はい(笑)。

――ハハハハハハハハ! 今日は罵詈雑言が飛ばない内容でお送り……できればと思っていますが。まずは西川大和選手がUFCと電撃契約されましたけど、シュウさんがUFCと交渉されたそうですね。

シュウ もともとマルスジムの(平)大門さんが西川選手のマネジメントしてたんですけど。海外のことですし、結果的にこちらがテイクオーバーすることになったんです。で、最近のUFCは1試合だけの契約の枠があるじゃないですか。

――異例のワンマッチ契約ですね。

シュウ 最近のUFCがなんで1試合契約をやるかといえば、UFC PI上海で選手を育成してるので、そこから出てきた選手にチャンスを与えなくちゃいけないと。そうなると1試合組んでみて、どんな感じか見るための処置なんです。いまやっているROAD TO UFCみたいに優勝したら必ず契約をもらえることは一切ないんですよ。じつをいうと、西川選手へのオファーは1試合契約、ウェルター級で中国人相手という内容だったんです。

――当初はライト級ではなく、そんなオファーだったんですか!

シュウ UFCからその内容で伝えられたときには「西川選手のマネジメントに連絡してもいいけど、その内容なら説得できないと思うから、UFCのほうで勝手にやってくれ」と(笑)。大門さんの連絡先を教えて突き放したんですよ。そうしたら、翌日UFCのマッチメイカーのショーン・シェルビーから「ライト級でケガ人が出たから、ライト級で話せないか」と。それならいいよってことで、ボクのほうから大門さんに連絡したんですよね。UFCがウェルター級のオファーの件で大門さんに連絡したのかもしれないですけど、その条件だとレスポンスがなかったのかもしれないです。

――1試合契約でウェルター級は条件としてどうなんだろう?と思っちゃいますね。

シュウ そうですよね。大和選手に関してはすごく前から注目はしてまして、世界を狙うんだったら、ウェルターよりもライトのほうがいいに決まってますよね。そういう話だったら責任を持って西川選手に話は持っていけますし、今回は4試合20ヵ月の契約にしてもらいました。

――話はとんとん拍子に進んだんですよね。

シュウ とんとん拍子というか、1~2日、日本のほうでの調整には時間がかかりましたけども。これは皆さんに言いたいんだけど、アメリカでも海外でもどこの国でも、こういった緊急に限らず、試合のオファーは基本的に遅くとも48時間のうちに返さないと、チャンスを失う可能性がすごく多いんですよ。

――「その選手がじゃないとカードが成立しない!」というマッチアップじゃなければ、待てないですよね……。

シュウ マッチメーカーのほうも急いでますし、なるべく早く決めたいじゃないですか。そうすると、各方面に打診のボールを投げるわけですよね。そのボールに早く飛びつく選手に決めちゃう傾向があるわけですよ。日本の場合は「この人に相談して……」とか「こっちの人にお伺いして……」とかやってるうちに、タイムリミットを過ぎちゃうことが多いんです。遅い、決められない。国外市場において、それでチャンスを逃した日本人は、どの業界でも多いと思うんですよね。

――どこまでしゃべっていいのかわかんないですけど、お伺いを立てなきゃいけないパターンが多すぎますよね、日本の場合……。

シュウ ものすごく多いですね。お伺いをしないために契約があるわけじゃないですか。契約がないのになんでお伺いを立てなきゃいけないの?って疑問なんですよね。もっと面倒くさいケースだと「わざわざ会いに行って挨拶しろ」とか、どこまで上から目線なんですかって思うんですよね。選手がいなければ大会は開催できないわけですから、本来ならばプロモーターと選手の関係は持ちつ持たれつであるべきだと思うんです、とくにローカル大会は。選手はチケットの手売りもしているわけですからね。本来ならばチケットを売るのはプロモーターの仕事で、その営業努力、工夫の足りない部分の皺寄せが選手のところに来ているという見方もできると思いますし。アメリカのローカル団体でいえば、UFCからのオファーが来たら、一方的に破棄できる項目が入ってますから、それが普通なんです。だってよく考えていただきたいんです。「ローカル大会=マイナーリーグ」ですよね? メジャーからのオファーをすんなり受けれらないマイナーリーグって、どんだけ厄介で、どれだけ選手の足枷になっているか、よく考えていただきたいです。

――基本的にメジャー行きを拒む契約はありえないですよね。お世話になったことで、義理立てで報告するのはわからないでもないですけど

シュウ ただ思うんですけど、アメリカのローカル大会も日本とそんなに状況は変わんないんですよ。手売りのチケットで稼いでる部分もありますし、ギャラだってそんなにいいわけではない。それなら試合に向けてちゃんと練習して、計量をパスして、手売りでチケットを売ってあげて、試合をしたら、もうそれでビジネスは終わりなんですよ。ドライかもしれませんが「お世話になった」という感覚を必要以上に持たなくていいわけです。試合を組むごとに「お世話になった」という足枷が付くんだったら、身動きできないじゃないですか。ですから、「お世話になった」という感覚は、もう捨ててもいいんじゃないかなとボクは思うんですよ。それがなぜか日本だけは、アマチュアからもうその目に見えないというか暗黙の了解というか、そういう足枷がつくんですよね。「デビューさせてやった」とか。そんなこと言われたらデビューできないじゃないですか? プロモーターの中には、俺が育ててやったのにとかいう人もいますけど、選手を育てるのは親、コーチ、練習仲間であって、プロモーターはその次ですよね。さらにはローカル大会なら、お金かけてスポットとか流して選手をPRしてとかもできないし、実際にやってないわけですから、選手側ももっと自分の正当な権利というのを考えていただければ、自ずと答えは出ると思うんですよね。たぶんですけど、ほとんどの方々は、それを頭では理解できてるとは思うんです。「どこかおかしい」「こんなの実社会ではありえない」と思いながらも、「昔からこうなんだ」という一部の上にいる人たちの考えに逆らって村八分になるぐらいなら、もうその長いものに巻かれますか、みたいな感じだと思うんです。

――対等の立場にあるってことを意識してほしいってことですね。

シュウ どちらかというと、コーチやスポンサー、練習相手にお世話になってるというのはわかりますよね。プロモーターなんて、ヘタしたら年に2回ぐらいしか試合を組んでくれないわけだし、デビューさせてやった、タイトルマッチのチャンスあげてやったなんて言ったら、試合するたびに貸しを作っちゃうわけじゃないですか。それって構図としておかしいと思うんですよね。

――次のステップの足かせ手かせになるのは、ひじょうによくないってことですね。

シュウ それから、もうひとつのポイントは、ローカル大会のチャンピオンシップやランキングがここまで重要視されるのは日本だけなんですよ。

――これはちょっと踏み込んではいけない領域の話になってきましたね(笑)。

・日本の団体の契約のここがおかしい
・平本蓮vsドミネーター戦の経緯
・本来は佐々木憂流迦vs元谷友貴だった?
・RIZINに「ドミネーターvs摩嶋のほうが面白くないですか」と聞いたら…
・細川バレンタインの「MMAファイター1000人」の件
・ベラトールはフライ級を新設するか?……などなど12000字の続きはこのあと続く!

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