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朝倉未来vs平本蓮に見えた打撃のプレッシャーとブランク■水垣偉弥

北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥が語る超RIZIN3です(この記事はYouTubeで配信されたインタビューを構成したものです)


――今回は超RIZIN3の感想をお聞きします!

水垣 よろしくお願いします。

――まずはなんといってもメインの朝倉未来vs平本連ですが、率直な感想はいかがでした?

水垣 すぐに平本選手のパンチが当たっちゃいましたねぇ。ボクとしては、もうちょい長く試合を見たかったところはあったんですけど。ただ、試合が始まってからKOするまで、平本選手のほうが余裕があったし、試合を支配してたような感じがしましたね。朝倉選手がどこで流れを変えにいくのかなと見ていたんですけど。開始1~2分の空気感は平本選手のほうがよさそうだなと。実際、平本選手が徐々に打撃でペースをつくって、着実にフィニッシュまで持っていったので。いきなりバチンと打撃が当たったわけじゃなく、最後のフィニッシュまでの布石があっての決着ですよね。

――あの短い時間の中で、平本選手が組み立てた成果なんですね。

水垣 最後もうまかったですよね。効かせるパンチのちょっと前にスイッチして右を打ってるんですよ。あれ、けっこうヒヤッとするぐらいのタイミングで当たってて。そこまで朝倉選手にダメージはなかったと思うんですけど、最後にダメージを与えた打撃は、同じようにスイッチするように見せかけて、結局スイッチせずに左を当てた。朝倉選手は惑わされたのかなと思いました。だから、平本選手はしっかり試合をつくったように見えましたね。

――解説の高阪剛さんは平本選手のステップの変化を見たうえで、このまま打ちに行くことを指摘してましたね。

水垣 あれは試合が始まった直後でしたよね。「ステップをやめて腰を据えて打ちに行く体勢ですね」という感じで言ってたので、ボクも「なるほど、たしかに」と頷きました。そこで思ったのは朝倉選手はMMAの試合は1年ぶりくらいですよね。打撃のブランクはかなり響くので、それも影響したのかなって思いましたねえ。

――いくらスパーしてもブランクを埋めることは大変だってことですか。

水垣 組みと打撃でいうと、打撃のほうが練習との乖離がけっこう大きいんですよ。本番でオープンフィンガーグローブで本気で殴り合うことを考えると……そこはボクも現役時代にけっこう悩みどころではありましたね。打撃のほうが試合間が空いちゃうとイヤだったなって。

――そこで工夫できることって何かあったんですか?

水垣 いっぱい殴り合うぐらいですかねえ。

――シンプル!(笑)。

水垣 試合に近い緊張感の中で殴り合うためにボクはボクシングジムに出稽古に行って、4ラウンドだけスパーしたり。相手のボクサーにもボクにもセコンドがついて、本当に試合みたいな感じで4ラウンド殴り合う。そんなことをいろんなボクシングジムでやらせてもらってたんですけど、実績のあるボクサーが用意されるから憂鬱でした……。

――憂鬱(笑)。それはボクシングジムにお願いするんですか?

水垣 そこはウチのボス(渡辺喜彦 )が渡辺ボクシングジムとつながりがあったので、よく行かせてもらいました。相手はチャンピオンクラスだったり、のちに東洋のチャンピオンになったりしてるんで、本当にボコられましたよ(苦笑)。他にも横浜光ボクシングジムで内山高志さんに挑戦したボクサーともやらせてもらったり。そうやって試合に近い緊張感を味わっておくことは大事でしたね。

――望んでやりたい練習じゃないけれども(笑)。

水垣 会長に「行くぞ!」と言われないと、なかなかできないですねえ(苦笑)。それでも14オンスのグローブでやるんで、やっぱりまだMMAの切り合いほどではないんですけどね。

――水垣さんとしては「その先の展開も見たかった」ということですけど、そこはテイクダウンの攻防だったりしますよね。

水垣 そこは平本選手のプレッシャーを受けちゃってたんで、簡単には入っていけなかったのかなと。朝倉選手にどういうプランがあったのか、もちろん打撃勝負がAプランで、それでプレッシャー受けたら場合はプランBも当然あったと思うんですよ。そこは見たかったんですけどね。

――MMAのヴガール・ケラモフ戦、オープンフィンガーキックのYA-MAN戦もそうですけど、朝倉選手にどういうプランがあったのかが見えないまま終わる試合が続きましたよね。一方の平本選手は、前回のYA-MAN戦からまた変わったところは何かありました?

水垣 確実にMMA慣れしてきてるところですけど、今回に関しては、どちらかというと「向こうも打撃勝負に来る」と読んでたんじゃないですかね?

――打撃勝負を想定していたと?

水垣 ボクにはそういうふうに見えました。もちろんテイクダウンディフェンスはしっかり練習してきたうえで、とにかくスタンド勝負で向かうという雰囲気に見えました。

――テイクダウンの攻防がキーになるという見立てでしたよね。

水垣 平本選手は思ったよりスタンドでプレッシャーをかけることができた。あれだけ相手にプレッシャーをかけられると、たとえ組みつかれたとしても対応できると思うんですよ。打撃に集中できた要因は、あの段階でだいぶプレッシャーかけられて、気持ち的に余裕ができて、自分の攻撃に集中できたからじゃないかなと。

――なるほど。格闘技はちょっとの攻防から一方的な展開になっちゃうから怖いですねぇ。

水垣 「ちょっと今日ヤベエ」「パンチ見えないな」とか思っちゃうと、やっぱりどんどん引いてきちゃうし、悪循環。常に自分に自信を持って、やるべきことを平常心でやることが凄く大事だと思います。それこそ朝倉選手は「ちょっとなんかヤバいな」みたいなプレッシャーを受けているように感じました。

――水垣選手も試合が始まった瞬間に「今日はヤバいな……」と焦ることってありました?

水垣 全然ありますよ。そうなったときにどうするかといえば、選手によって分かれると思うんですけど。それは引いちゃうタイプと、突撃しちゃうタイプ。ボクは後者でしたねぇ。UFCのコーディ・ガーブラント戦も、最初にガード上からパンチをもらったときに「パンチ超硬え! ヤベエ!」と。これはもうこっちが先に打撃を当てるしかないと思って打ち合いに挑んで散る……というのがボクの悪循環パターンで(苦笑)。

――でも、それはいい方向に転がることもあるわけですよね?

水垣 いやあー、あんまりいい方向に転がったことはないですよ。博打は大抵、負けます。ドミニク・クルーズ戦も格上の相手だから「先になんとかしないと」という気持ちから、追っかけ回してカウンターでタックルもらって秒殺されるし。だから平常心で自分を信じて、多少相手のパンチが強くても「大丈夫!」と自分のスタイルを貫けたらよかったのに……と思ってます。

――打つ手がないから破れかぶれになるということですから、そこは本当に博打になっちゃうってことですね。

水垣 結局、自分のスタイルが崩されてるんですよ。今回の朝倉選手はちょっと引いてたと思うんですけど、おもいきって前に出たとしても結局、自分が崩されてる状態なので、あんまりいい結果は出ないんじゃないかな……と思います。

――今回、朝倉選手がKO負けしたことでドランカーだったり、アゴの消耗を指摘する声もあります。

水垣 まあ、朝倉選手がドランカーかというと、そうではないと思うんですけど……

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