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リングス伝説の佐竹雅昭戦とは何だったのか■長井満也

割引あり
UWFやリングス、K-1まで、様々なリングで戦ってきた長井満也インタビューシリーズ第5弾! 今回は「リングス伝説の佐竹雅昭戦とは何だったのか?」です (聞き手/ジャン斉藤)

①「我が青春のスーパータイガージム、シュートボクシング
地獄の新生UWF新弟子編
長井満也インタビュー「いつのまにか解散してしまった新生UWF」
恐るべきプロレス団体リングスの真実

これまでのインタビュー


――毎回大好評の長井選手インタビューの第5弾です!

長井 こんな話で喜んでくれるのか不安なんですよ(笑)。

――いつも最高ですよ!(笑)。今回はリングス編の続きですが、前回はリングスにはいろんなタイプの試合があると。ハードなストロングスタイルだったり、競技的なものだったり……。ボクが聞いているのは、リングスの日本人対決で初めて競技的な試合となったのが、長井さんと木村浩一郎さんの試合だったと。

長井 そうだと思います。他の試合のことはわからないんですけど、たぶんそうです。

――当時の長井さんからすると、そういう試合をすることに何か特別な思いはあったんですか?

長井 ……うーん、あまりにも昔の話だから、何がどうだったかは思い出せないんだけど、木村選手との試合はボクが(ジュラルド・)ゴルドーに負けて、次の試合だったと思うんですよね。

――前回のインタビューで振り返っていただきましたが、リングスでプロデビューした長井さんは3戦目にゴルドーと戦います。ゴルドー戦は長井さんにとって初の競技だったわけですよね。

長井 やられちゃったんですけどねぇ。でも、ゴルドーとの試合でプロとしてやっていく自信というか覚悟が固まりました。木村選手との試合は前田(日明)さんから「どうする?」と聞かれたわけじゃなくて「これで行くから」と決定事項を連絡された感じでしたね。それはそうですよね、ボクはまだデビューしたばかりのペーペーだったわけですからね。

――木村選手との試合は競技でやるとあらかじめて決まっていたんですか?

長井 そうですね。ボクとしては変な言い方だけど、ゴルドーに負けるのと、木村選手に負けるのでは、同じ負けでも全然意味が違ってくると思っていたから。変な話、公開道場破りみたいなもんじゃないですか。

――木村選手はサブミッションアーツレスリングの王者で、FMWでプロレスデビューしてました。リングスには“外の人間”という立場での参戦です。

長井 ボクにとってはリスクしかなかったし、この試合で負けちゃったら自分の居場所はないから引退しようと思ってました(キッパリ)。この試合にどういう意図
があって組んだかは知らないですけど、自分が負けたらリングスもそうだけど、プロレスの世界に居場所はないなと。

――長井さんにとっては、思うところがあるマッチメイクだったんですね。

長井 まあでも、ファンの人って、そういう残酷なものを見たいじゃないですか。会社としてもそういう狙いがあったのかもしれませんですけど。ボクとしては、この試合に負けたらやめるという覚悟を持って用意をしてましたね。

――リングスって競技の試合で勝った選手を上で使っていくところはあったんですか?

長井 うーん……「リングスはどうだったんだろう?」といま振り返ると、たとえば自分が競技としての試合に勝っても、それによって自分のリングス内の待遇が変わったような感じは何もしなかったですね。それはプロレスとしてお客様を喜ばせる試合が仮にできたとしても同じです。競技の試合で負けてしまっても、それによって何か変わったのか、どう評価されたのかもわからないですね。どっちも“リングスの試合”ですし、それによってどう評価されるのか考えて戦ったことはなかったかもしれないです。リングスの最初の頃は日本人選手も少なかったし、山本(宜久)も成瀬(昌由)もデビューしてなかったから、日本人は自分しかいなかったところもありますけどね。

――それもあって、いろいろとハードなことをやらされたわけですね。

長井 この試合に勝ったことによって次はどうなるのかっていうことは、前田さんの頭の中にあったかどうかは、話をしたこともないからわからないですね。

――競技で勝ったとしても試合内容がいまいちだったら、もしかしたらダメかもしれない。「プロとは何か?」という話ですね。

長井 だからリングスの試合ってすごい難しかったと思いますね。もちろんプロとしてお客さんに満足してもらって、次の大会もまた見に来ようと思わせる試合を見せなきゃいけないし、それとは別に競技としての強さを見せつけなきゃいけなかったから。

――どう評価されるかは考えていなかったですけど、木村戦に負けたら場所がないと。

長井 いやあ、そこは思いましたね。木村選手にもリスクがあったと思います。向こうも向こうでサブミッションアーツを背負ってくれてきたわけですから。もちろんいまの総合(MMA)のほうが技術も高いし、レベルも高い。でも、あのときの木村選手とボクがいまできるものをぶつけ合って、意地の張り合いもできた試合だったのかなと思ってますね。

――すごく熱い試合だったと思います! いまでは考えられないというか、この試合はラウンド制ではなかったですよね。

長井 30分1本勝負です(笑)。決着ついたのは28分とかそれくらいですね。

――長井さんのKO勝ち。ラウンドインターバルなしでここまで長い時間を動けるってすごいですよね。

長井 ボクが生まれ育ったところがラウンド制じゃなかったから、それがあたりまえだと思ってましたね。この試合の途中、15分くらいで足の靭帯をやっちゃったんですよね。もう動けないし、俺が一本取れるって感じでもないなと。でも、自分のほうが絶対にスタミナはあると思っていたから、25分経過まで粘って最後の5分でラッシュかけようと考えていたんです。見合っちゃうと相手を休ませちゃうから、とりあえず倒しに行かなくてもいいから、ボクが手を出せば向こうはタックルで返しにくる。タックルに入ってまた立ち上がるって、めちゃくちゃ疲れるんですよ。それを木村選手に繰り返させようと。

――現代MMAでもタックルの出しどころはポイントのひとつですけど、木村選手はタックルをやりすぎてガスアウトしてしまったと。

長井 それがよかったかどうかはわからないですけど、うまくハマったから自分が勝てたところはありましたね。

――ボクはだいぶ前に木村選手にインタビューしてるんです。木村選手からすると当時は大学生であまり練習してなかったけど、それなりに粘れたから変に自信がついてしまったと振り返っていて。でも、長井さんは戦術として試合を引き延ばしたところもあったと。

長井 その木村選手の記事を読んだことがあったんですけど、あれは木村選手がプロとしての木村浩一郎を守るためにコメントをしてたのかなと思いますね。それは試合後にボクと話したこととは全然違うから、木村浩一郎というキャラクターを守るためにああ言ってたのかなって。ボクとしては「どうぞどうぞ、そう言ってください」という感じでしたね。

――大人ですね(笑)。

長井 いえいえ(笑)。仮に大学生で練習できなかったとか、プロのリングではぶっちゃけ関係のないことじゃないですか。「本日、木村選手は大学生のテスト期間中のために練習ができてません!」なんて言えないし、負けた自分を守るための言い訳だからボクは全然何も気にしていないです。ボクはリングスでいろんな試合をいっぱいやって、いっぱい負けてきたけど、ルールがこうだったからとは言いたくないですよね。ぶっちゃけコンディションがどんなに悪くても強ければ勝てるじゃないですか。だから言い訳はしたくないですよね、勝っても負けても。

――木村選手をはじめとするフリーの日本人選手は、基本的に全員、競技の試合だったんですか? 正直、外部の選手がストロングスタイルタイプの試合に関わると面倒なこともあるじゃないですか。

・前田日明になんとなくリクエストしていたこととは?
・リングスジャパン同士の「競技」試合の難しさ
・逃げ出す新弟子たち
・リングス「プロテスト」の過酷さ
・佐竹雅昭戦とリング外の政治
・異常なプロレス団体リングスの恐ろしさ……1万字インタビューはまだまだ続く

【過去記事まるごとセット/2023年12月】
平本丈、川名雄生、新居すぐる、弥益ドミネーター聡志、磯部師範、松澤チョロ×松本晃市郎、シュウ・ヒラタ、小佐野景浩ほか。コラムもたっぷり!

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