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「これは中毒になりますよ……」佐々木憂流迦、プロレスデビューを振り返る

「これは中毒になりますよ……」佐々木憂流迦、プロレスデビューを振り返る

夢とトラウマを与えたアントニオ猪木の「死」■菊地成孔

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――憂流迦さん、おひさしぶりです!

憂流迦 すごい久しぶりですよね。いつ以来ですか?

――直接お会いするのは、なんと9年ぶりですね。

憂流迦 えーっ、そんなに(笑)。なんかジャンさん、長髪になってるし、雰囲気が変わりましたよね。

――全日本プロレスの斉藤ブラザーズリスペクトからです!(笑)。憂流迦さんもMMAの時代と比べて身体がデカくなってますよ。身体を大きくするのは大変でした?

憂流迦 いやあ、めちゃ大変です。もともと大きくなりやすいんですけど、なかなか上半身に肉がつかなくて。腹回りばっかついちゃうんですよ。エキシ(11月13日/新宿FACE)のときも90キロ超えてたんですけど、腹回りがちょっと恥ずかしいなって(苦笑)。

――そこはもうちょっと仕上げたいところはあったんですね。

憂流迦 そうですね。でも、時間はかかりますし、いきなり完全体で出られたら最高なんですけど、なかなか難しいですよね。

――体重を増やせるけど、身体を作るのは別の作業ってことですね。

憂流迦 ホント別の作業です。もともと格闘技には胸筋がいらなかったんですよ。でも、プロレスでは胸にないとチョップを食らうと痛いじゃないですか。筋肉隆々まではイメージしてないですけど、どんな攻撃でも全部耐えられる身体に仕上げたいですよね。

――格闘家時代はフライ級やバンタム級の身体づくりでしたが、プロレスラーの今度はまた違った意味で節制が求められると。

憂流迦 それ、本当に思いましたね。やっぱりもう完全に土俵が違う。MMAの減量はキツイです。だってあれは相当削っているし、身体にダメージが残りますよ。内臓系もやられるし、よくないですよ(苦笑)。

――ついちょっと前までやっていたのに(笑)。

憂流迦 なんか信じられないですねぇ。いまは大きくすることが目的で、無理に減量してるわけではないから全然健康です。

――ノア道場で練習をされていたということですが、いつくらいから始めていたんですか?

憂流迦 いまから1年前ですかね。

――デビュー戦までの準備に1年はかかったということですね。

憂流迦 だって受け身はほとんどやったことなかったですから。なんとなく動けるけど、ちゃんとした受け身とか大事な基礎の部分が全然だったんですよ。受け身の練習は超大変です。MMAだと受け身を取ることがないというか、頭を守りながら落ちることはあるんですけど。

――全日系は受け身を超重視するから、その練習は相当ハードだって聞きますね。

憂流迦 たしかにしんどかったです。ノア道場のマットは硬いから、すっげー効くんですよ。受け身の練習だけで1日が終わったこともありましたし。

――うわー、キツくなかったですか?

憂流迦 でも、格闘技もしんどいじゃないですか。プロレスに受け身は絶対に必要な技術だし、「これくらいしんどいのはあたりまえなんだろうな」って。

――プロレスは派手な大技だから危険だというわけじゃなくて、何気ない動きや技を失敗しても事故になりかけますもんね。

憂流迦 プロレスはめちゃくちゃ危険ですね。疲れてきて受け身がブレたら大ケガするし、常に緊張感を持たないといけないですよね。これから連戦するときもあるので、常にテーマを持って臨むことで緊張感が途切れないようにしていきたいですね。

――ノア道場ではどんなペースで練習されてきたんですか?

憂流迦 週3~4日ですね。合同練習にも出ていますし、若手の合同練習にも参加してます。道場に行かない日はジムでトレーニングしてて。ボクは走るのがダメなので、ミットで有酸素運動をやってました。

――ノアの先輩レスラーと交流はあるんですよね。

憂流迦 あります。ただ、会うたびに思いますけど、「どこ攻めれば倒せるかな?」って考えちゃいますね……。

――えーっ、どういうことですか?

憂流迦 たぶん自分のクセなんですけど、みんな身体がデカいじゃないですか。普通にロックアップしたら絶対に負けるから、どう攻めれば崩れるかな……みたいなことを考えちゃうんです(笑)。

――格闘家の習性ってやつですかね(笑)。憂流迦選手のデビュー戦を見て思ったのは、いい意味で格闘家の色がなかった。格闘家が「格闘プロレス」をやらなかったところが興味深かったんですよね。

憂流迦 わー、嬉しい。それはめっちゃ嬉しいです。

――ご本人としても「格闘家」のイメージは消したかったんですか。

憂流迦 そうですね。でも、そこは格闘家からの転身なんで絶対に残るんですけど。エキシビジョンのときのコスチュームはファイトショーツだったんですよ。デビュー戦のときに全部変えたのは、この日からプロレスラーとして見てほしかったからです。

――ああ、なるほど。つまり「コスチュームを変える=格闘家の衣を脱いだ」ということだったんですね。

憂流迦 格闘家の残り香はありつつも、プロレスラーとして見てほしい。なので「格闘家の色がなかった」と言われるのはめっちゃ嬉しいです。レガースも付けないし、蹴りにも頼りたくなかったですし。

――格闘家のプロレスはどうしてもUスタイル寄りになりがちですね。

憂流迦 でも、それだとそのまま終わっちゃう気がしたんですよね。プロレスを続けていくために幅を広げたいなって。やっぱりボクがプロレスファンとして憧れていた武藤(敬司)さん、(中邑)真輔さんから強さは垣間見えるけど、それだけじゃないですよね。やっぱり違うじゃないですか。

――憂流迦選手のプロレスラーの夢に再び火を付けたのはその中邑真輔だったんですよね。ニューヨーク在住時に交流もあって。

憂流迦 もう完全に真輔さんのせいですね(笑)。お正月のグレート・ムタと真輔さんの試合を見に行って……あんなすごいものを見せられたらもうダメですよ。プロレスをやりたくなっちゃいましたよねぇ。あの試合はすごく美しいです。ボクは「きれい」なプロレスが好きなんですよね。ムタと真輔さんの試合はきれいを通り越して美しいです。入場からもうヤバくて、思わず「かっこいい!」って声が出ちゃいましたし。

――あの試合がきっかけでプロレスを始めたからには、いつかあそこまでたどり着きたいわけですよね。

憂流迦 そんなおこがしましいこと、言えないです!(笑)。そんなことは言えないですけど……まあでも、憧れのプロレスラーですし、ショッキングな感銘を受けたので目標にしちゃいますよね。

・武藤敬司リスペクト
・デビュー戦前は寝られなかった
・プロレスとMMAの寝技の違い
・猪木さんは動きが美しい
・ロープブレイクの緊張感 
・MMAのほうは……このあとへ続く

【過去記事まるごとセット/2024年1月】
菊地成孔、堀口恭司、佐々木憂流迦、笹原圭一、大塚隆史、水垣偉弥、事情通Z、シュウ・ヒラタ、斎藤文彦ほか。コラムもたっぷり!

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