萩原京平12000字インタビュー「平本蓮との再戦はお互いに勝ち上がってから」
――今回、東京に来られているのは、何か用事があったんですか?
萩原 用事というか、今週からまた練習を再開してるんでね。
――えっ、早いですね! 試合から1週間も経ってないのに。
萩原 それと、こういう取材も含めて。今日も午後にRIZIN事務所に行って撮影があるんですよ。
――つまり、勝者は忙しいと(笑)。
萩原 大変です(笑)。まあ、試合後2~3日ぐらいはけっこう余韻にも浸ってましたけど、それ以降は本当にいつもと変わらずなので。練習再開してからは、いつもと変わらん感じの毎日です。
――久しぶりの勝利だったのに、あんまり浮き足立ってないんですね。
萩原 どっちかというと、もう次のことを考えちゃうんでね。まあそういうもんっすよ、格闘家は。勝っても次があるんで。
――それにしても、RIZIN.41のボルテージというのは萩原選手の試合がMAXでした。
萩原 いやー、マジで凄かったです。開会式のときから歓声がめっちゃ聞こえてたし、試合中もやっぱり凄かったんでね。しんどいときでももうひと押し動けるじゃないけど、ファンの声援がやっぱり力になりますね。
――萩原選手の試合前までは、大阪出身選手の負けが続いていたので、現地大阪のファンもフラストレーションが溜まっていたんでしょうね。
萩原 それ、ボクも正直思てました。大阪勢が全員負けとったんで、ここで流れを変えなあかんなあと。
――そんな中、1ラウンドでいきなりカイル・アグォンの鬼タックルからバックに付かれたので、我々としてもちょっとしたデジャブじゃないですけど。
萩原 それ、めっちゃ言われましたよ(苦笑)。
――あのシーン、ご本人はどういう気持ちだったんですか?
萩原 正直、ぜんぜん落ち着いてました。今回から、試合前に岸本泰昭さんにずっとマンツーマンで対策をやっていただいてたんですけど、その岸本さんとやった打ち込みのカタチがそのまんま出たことが多かったので。ああいう状況になっても「これ練習でやったとこやな」って落ち着いて対処できたところもあったし、焦りはあんまりなかったですね。スタンドバックのときも細かい技術が出せたので。
――シチュエーションスパーの成果が出たんですね。
萩原 そうそう、それをずっとやってましたから。それに、ストライカーのボクがアグォンの試合を観た感想と、グラップラーの岸本さんが観た感想とでは、出てくる点がぜんぜん違ったというか。岸本さんにしか見えない観点での対策とかもしてくれて。「そこは、ぜんぜん気づかんかったなあ」というのがめっちゃあったんで。そういうところを集中的にマンツーマンでやってくれとったんです。
――対策がばっちりだったことで冷静だったんですね。
萩原 向こうもけっこう力を使ってるなあってわかったんでね。こっちはなるべく力を使わずに「このラウンドは捨てた」じゃないですけど、バック取られてからは無理に動かず、そこから攻撃を出すなりして相手の出方を見てました。1ラウンド目の攻防で相手がどうやってバックチョークを取ってくるのかもわかったんでね。
――逆に、アグォンは1ラウンドで極めたがってましたよね。
萩原 その感じ、めっちゃ出てましたよ(笑)。パワー使ってる感じは伝わってきたし、だいたいの攻め方じゃないですけど、「こう腕を取ってきたら、次こうしたいんやなあ」という流れがわかったんで。だから、2ラウンド目からはさらに落ち着いて試合ができましたね。
――1ラウンドが終わって、インターバルのときはどういう心境だったんですか?
萩原 「まだまだ行けるなあ」と。それも、今年から東京で練習させてもらってるんですけど、ロータス世田谷に週1回通ってて。そのときに青木(真也)選手と何回か練習する機会があっていろいろしゃべったんですけど、「RIZINはダメージ優先のルールだから、ずっと3ラウンドまで漬けられていても、一回ダウンを取ったらそれで勝ちだよ」みたいなことを言われて。「あ、それ間違いないなあ」と思って。
――ルールの解釈というか、勝ち方というか。
萩原 いままで、ルールというものをそういうふうに考えたことがなかったなあと思って。だから、それを理解してないときの自分やったら、1ラウンドから焦って動いていたと思うんですけど、青木さんに教えてもらったことが心にあったので、「1回ダウン取ったら勝てるわ」と。それがけっこう安心できた材料でした。
――じゃあ、2ラウンドでアッパーぎみの打撃が当たったときは「ポイントは取ったかな」と。
萩原 そうですね。あのときのもけっこうイヤがってたし、向こうのスタミナもだいぶ切れとったんでね。組んだときの力も弱なってたし。
――2ラウンド以降はバックを取られても、さらに余裕があったんですね。
萩原 極められるという焦りはあんまりなかったんですけど、逆に打撃が効いていてスタミナも切れとったんで、ボクが攻め急いだじゃないですけど、とにかく攻撃を出して相手にダメージを与えないとあかんというマインドになっちゃったんで、ちょっと雑な対応をしてしまいましたね。
――アグォンに逆にポジションを取られたり。
萩原 あとあと岸本さんやトレーナーの方にあかんところを教えてもらって「間違いないな」って確認できたんで。後半はちょっと行き急いだじゃないけど、そっちの焦りがあったかなとは思いました。
――ただ、いつもの萩原選手の試合と比べると、寝技をくぐり抜けて相手を立たせるシーンも目立ったので、逆に行きすぎないようにしているのかなとも感じたりして。
萩原 まあ、それも意識しとったんですけど、やっぱ組まれたときですよね。そこを「殴る」じゃなくて「離れる」にシフトチェンジしてやったほうが倒せる確率も高かったな……と、終わってから思いました。
――終盤、アグォン選手はかなりスタミナ切れの感じがありましたが、萩原選手はどうだったんですか?
萩原 もう1ラウンドあっても、ぜんぜん行けましたよ(笑)。そのへんは、前回と違って今回から走り込みもしっかりやってきたし、スタミナもついたなあと感じられましたね。
――そうだったんですね。我々は鈴木千裕戦以降、萩原選手がどんな練習していたかまったく知らないので、今回の試合ではいろいろ驚きが大きかったです。
萩原 もう、練習の仕方、取り組み方はガラッと変わりましたから。意識もぜんぜん違うし。細かい技術の話になるんですけど、修正点もめちゃくちゃ見つかったんでね。今回は収穫がデカかった一方で、まだまだ修正するところもあるし。まだまだ伸びるなあと思てますよ。
――そういう意味でも、今回対戦相手にアグォン選手を選んだことは大正解だったんですね。
萩原 大正解です! というか、自分的にはめちゃくちゃ自信があったんで。たとえばバックに付かれたときのディフェンスもそうですけど、いま急にああいう対処ができたんじゃなくて、正直あれぐらいのディフェンスというのは前からできとったんですよ。ただ、自分の意識の問題で試合に出せてなかったというか。でも、今回は持ってる技術を出せたかなあという手応えがあったんで、やっと噛み合ってきた感じです。
――以前、それが出せなかったのはどういう理由からだったんですか?
萩原 そこは調整の仕方であったりとか、気持ちの面でもブレてたんでね。たとえば、鈴木千裕戦でいったら「打撃で勝負する」という作戦やったんですけど、組みの練習をやってる中で「組みでも勝てるんちゃうか?」という考えが出てきて。で、そっちで勝負したところでテイクダウン取られたという感じやったんで。それに、調整がうまくいかなくて試合のときに力が入らへんとか、あんまりパワーが出えへんとかもずっと感じてて。そういうのも今回は減量から全部指導が入って、そのへんも全部改良されとったんで、すべてが噛み合ってきてちょっとずつ技術も活きてきてるのかなと思てます。
――なるほど。今回のカイル・アグォン戦は萩原選手が自ら指名したと聞きましたが、それってけっこうリスキーでしたよね?
萩原 でも、強いからですね、アグォンを選んだのは。
――いや、それが凄いです!
萩原 アグォンが候補に挙がっていた選手の中で一番強かったというのもあるし、正直ボクの中では弥益ドミネーター聡志選手とかより強い選手だと思っていて。いままでボクが試合した中でクレベル選手の次ぐらいに相性悪いというのは自分でも思てたんで。でも、そこに勝ったらいままでの負けも少しは挽回できるし、成長できたところを見せるにはいい相手かなと。
――ちなみに、ほかにはどんな選手が候補に挙がっていたんですか?
萩原 けっこうストライカーの選手が多かったですね。でも、いまストライカーと試合するとなっても、また取り組み方を変えていかなあかんというのもあったし、その成長を見せられる相手じゃないなあと。だから、ちゃんとMMAが強い選手とやりたいってことをずっと希望で言ってました。
――そういうストライカーを候補に挙げてくるというのは、RIZIN側としても萩原選手に勝ち星をつかんでほしいという気持ちがあったんでしょうね(笑)。
萩原 RIZINの上の人ともしゃべったんですけど、ボクもそういう主旨は感じ取りました(苦笑)。でも、正直「舐めんなよ」と思とったんですけどね。RIZIN側としては「同じくらいのレベルの選手に勝ってからアグォンにいったらいいんじゃないか」という話やったんですけど、まあまあ、それはこっちとしては違うということやったんで。
――そうやって萩原選手が頑なに「アグォン選手がいい」と主張してきたときは、RIZIN側も戸惑ったでしょうね。
マネジャー だって、ボク怒られましたもん。RIZINの人に「ちゃんと萩原選手に伝えてくださいよ!」と。
――ハハハハハハ!
萩原 フフフフ……。あいだに入ってくれてるのが、このマネジャーのシュウヤくんやったんですけど、シュウヤくんは「京平がアグォンとやりたいんやったら、俺はそれを通すから」と言ってくれとったんでね。
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