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RIZIN沖縄は内容的にも金銭的にも「大負け」です■笹原圭一

毎大会恒例! 笹原圭一RIZIN広報のインタビュー!!  今回はRIZIN沖縄大会を11000字で振り返ります!(聞き手/ジャン斉藤)

RIZIN広報・笹原圭一のエンドルフィンマシーン的THE MATCH!!

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――前回はTHE MATCHの社長賞として2億円のボーナスがほしいと吠えていた笹原さんですけど、今回の沖縄大会のゴタゴタで大減俸されるんじゃないですか?

笹原 2億円減俸なのでプラマイゼロですね(笑)。

――「行って来い」なら安心しました(笑)。沖縄大会はメインの朝倉海選手の欠場が直前で発表されたことでけっこうな騒ぎになりましたね。

笹原 メインイベントがなくなるわけですから、どうやっても批判を浴びる覚悟はしていました。スポーツにケガは付きものなんですけど、だからって仕方がないでは済ませられない。それにRIZINでメインが直前で飛んだのは今回が初めてなんです。

――今回騒ぎが大きくなったのは、朝倉海欠場は内定していたのに、発表を遅らせてPPVやチケットを売ろうとしたんじゃないか……という疑惑ですね。

笹原 プロレス格闘技マスコミで最も斜に構えている斉藤さんはどう思われたんですか?

――……正直に言っていいんですか?

笹原 ぜひお願いします。

――RIZINだと、やりかねないイメージがあるなと。

笹原 ひどい!!

――いやいや、あくまで「イメージがある」ですからね(笑)。発表が遅くなればそういう疑惑を持たれるに決まってるから、わざわざヘタな小細工をするのかなあって。

笹原 なかなか途中経過って説明できないので「何か裏で工作してんじゃないか?」とか思っちゃう方もいるかもしれませんが……海選手とはギリギリまで出場の道を探っていたんですね。本人もRIZINで最もメインを張っている選手なので、その重要さがわかってるんですよ。

――ケガを抱えて試合をすることを美談にするわけじゃないんですけど、メインイベンターとしての責任感ってやつですね。最近のUFCでもガヌーやシェフチェンコの王者たちが「そんな状態で試合を!?」ということがあったり。

笹原 RIZINとしても試合を強制することも当然できないでし、そこの見極めは本当に難しいです。これが1週間2週間後に再試合ができる競技なら、話はまた変わってきますけど……。

――5月のLANDMARKに出場した倉本一真選手もじつは重傷を抱えて戦い抜きましたが、試合後に「ケガをして欠場するのも、やるのもどっちもプロだ」と言っていて。レスリングのときは「欠場=オリンピック断念」になるから多少無理してでも出るしかないのかもしれないけど、プロの場合は選択ができると。

笹原 普通に考えたら欠場を優先するんですけど、プロは試合の勝ち負け以外に背負うべきものが出てくるから強行する場合もあるってことですよねぇ。海選手も7ヵ所ぐらい病院を回ってなんとか試合ができる方法を探してました。RIZINにもお医者さんとの繋がりがあったりするので、拳のケガ治療の名医に診てもらったり、高田(延彦)さんや桜庭(和志)さんに腕利きのドクターを紹介してもらったり。いろいろ回ったんですけど、それでも試合をすることは厳しい。そのケガはRIZIN参戦以前のアウトサイダー時代に負った古傷なんですけど、根本的に手術をしないと治らないものだったんです。

――いままでは騙し騙しやっていたけど、今回ばかりはどうにもならないと……。

笹原 試合は当然無理だし、手術することになりました。ギリギリまで動いていたので、欠場の発表自体も遅くなってしまったことは本当に申し訳ありませんでした。メインイベントが飛んでしまった窮余の策として、希望者にはチケットとPPVの払い戻し、そしてPPVをRIZINストリームパスの会員になれば見られるようにしたんです。

――RIZINストリームパス会員費の500円で視聴できると。メイン消滅でチケット&PPV払い戻しはわかるんですが、実質PPV無料解放はビックリしました。

笹原 もうやるからには中途半端じゃなくて徹底的にやったほうがいいですよね。来場者には特典タオルもプレゼントすることにしました。PPVを払い戻しにしたうえに無料配信するのは関係各社との調整が必要になってくるので、すぐには発表できないんですよ。さっきも言いましたけど何か起きると「なんで黙ってるんだ!説明しろ!」と言われちゃうんですけど、当然裏側では泣きそうになりながら調整ごとをしているんですよ。

――ダラダラと問題をやりすごそうとしてるわけではないと(笑)。

笹原 まぁでも斉藤さんが「RIZINならやりかねない」と思っていることが、RIZINのパブリックイメージってことなんですよね。もうやめたくなってきたなぁ(遠い目)。

――笹原さん、あくまでイメージですよ、イメージ。

笹原 でも、そのイメージを斉藤さんのよう人が悪意を持って歪曲し、喧伝して騒ぎが拡大していくんですよ!

――ボクはそんなことしていませんよ!どちからかというと火事を目撃したいだけのタイプです。

笹原 でも我々にとっていちばん重要なのは本当にファンの存在なんですよ。どんなに素晴らしいカードを組んでもファンに見てもらないと意味がないわけですから。お客さんがどう感じてもらえるのかどうか。もちろん「PPV5500円が高い」とか「値段を下げろ」という意見も理解しています。

――現在のPPV5000円は新型コロナの入場規制もあることから値段を上げたという理由もありましたよね。

笹原 コロナはPPV価格を見直すきっかけではありますね。どこにジャンルもそうですが、いまはフルにお客さんを入れられるとはいえ、一度離れた客足が完全に回復してるわけではないですし、MMAシーンのファイトマネー事情を踏まえると、2000円や3000円は運営的に厳しいところもあります。逆に斉藤さんお聞きしたいんですが、プロレス方面のPPVやサブスクってどんな感じなんですか?

――格闘技と合わせても圧倒的なのはWWEの「WWEネットワーク」ですね。月額9.99ドルでPPV主要大会まで見られます。新日本プロレスの新日本ワールドも999円ですべて見られたんですが、ビッグマッチはPPVで別料金を取り始めてきました。あと新日本ワールドでは他団体の興行をPPV配信してるんですよ。藤波辰爾デビュー50周年興行やTAKAタイチの後楽園ホールをPPV3000円とか。

笹原 RIZINの5000円より安いんですけど、プロレスの1興行でPPV3000円以上取るってなかなかですよね。

――新日本とAEWのコラボイベントは4980円でしたし、それなりのイベントは5000円が基準になるのかなと。ただRIZINの場合は興行数が増えてるじゃないですか。RIZINの連続ドラマとして堪能している人は全部見たいから、毎回この価格はちょっと……となるんじゃないですかね。

笹原 たとえば年間5回☓5500円と、年間12回☓5500円では違ってきますよね。最近開設したRIZINストリームパスで年間コースなんかを作って経済的負担を軽くする考えもあります。

――今回の沖縄大会みたいにストリームパス会員になれば、フリーで見られる大会もあるかもしれない。

笹原 いろんな選択肢はあります。そこはなるべくストレスなくRIZINを楽しめるように考えたいですね。

――ある格闘家がツイートしてたんですけど、RIZINはTHE MATCHで大儲けしたと。売り上げはすべてRIZINに流れてると思ってるんですよ(笑)。

笹原 そんなわけないですよ!(笑)。

――普通に考えれば、大会に協力したK-1、RISE、配信したABEMAにも取り分はあるし、那須川天心や武尊をはじめとする選手たちのファイトマネーも払う。「RIZINはめちゃくちゃ儲かってるのに、PPVでも暴利を貪っている!」という雰囲気があるのかもしれないですね。

笹原 この流れでこんなことを言うと更にイメージが悪化すると思うですけど、プロモーターの正義って何だと思います?

――なんですか、藪から棒に。まさか「お金です」とか言わないでくださいよ。

笹原 いやお金です。お金しかないです。

――ついに開き直りましたね(笑)。

笹原 いやそういうことじゃなくて、ファンが見たいものを実現させることがプロモーターじゃないですか。それが実現すれば、たくさんおファンの皆さんに観ていただいて、それが選手にも還元される。だから判断に迷った時は、プロモーターは金で判断しろ!金になるほうを選べ!と佐伯さんが言ってました(笑)。

――「佐伯さん=弁当」だったのに(笑)。「お金になる」ってことは、つまりニーズがあるってことですよね。「金=悪」はプロレス格闘技に限っていえば、天龍(源一郎)さんがSWSに移籍したときの『週刊プロレス』の金権プロレスバッシングがいまでもこびりついて……

笹原 つまり当時の編集長だったターザン山本さんが悪い(笑)。

――実際はどんな物事も金がないと始まらないことをわかっているから、逆にみんな清貧さを求めるのかもしれないですね。あと朝倉未来とか選手のリッチな感じに憧れるファンはいるけど、主催者がリッチになるのは搾取感がある(笑)。

笹原 「経営者=錯取」ってタイガーマスクの世界ですよ!

――まずタイガーマスクの虎の穴の説明が必要になってきますよ。ぶっちゃけRIZINは儲かってるんですか?

笹原 2015年に立ち上げてから、まだまだ投資の真っ最中ですよ。

――以前は年3~4回だったのにここ最近は大会回数が増えてきたということは、徐々に軌道に乗っているってことですかね?

笹原 いままでは投げるばっかだったものが健全に回り始めてきたって感じです。どうしてもお金がかかるんですよ、興行を打つのは(しみじみと)。

――必ずしも毎回プラスになるわけでもないでしょうし。

笹原 興行の世界に身を置いていると、「勝ち」「負け」という言葉をよく使うんです。今回の沖縄大会は勝ったか負けたかといえば、金銭的にも内容的には大負けです。

――さすがに大負けですよね……。

笹原 でも、意味のある負けってあるんですよ。負けるにせよ、意味のある負けにしなきゃいけない。そういう意味では、さっきは「プロモーターは金!」とか言いましたけど、ぼんやりした勝ちよりも、大敗を選んだほうが良いときもあるわけです。

――なるほど。負けたにせよ、PPVを開放したりして記憶に残りましたね。

笹原 地獄のプロモーターは、ここの勘所がすごいんですよ(笑)。まあでもTHEMATCHが大成功で終わったあとの沖縄がこんな感じでドタバタしちゃうとは、興行ってホント難しいし、いまは禍福は糾える縄の如しといいうか、人間万事塞翁が馬というか、そういう言葉が頭に渦巻いています(笑)。

○ヤン・ジヨンの素顔
○朝倉海欠場、昇侍登場の経緯
○山本空良vs○○○をやりたかったが……
○山本美憂vs大島沙緒里の判定
○鈴木博昭vs平本蓮、メインの難しさ
○配信の巻き戻し機能は著作権問題でNG?
などなど11000字インタビューはまだまだ続く!

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