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ボクは最初からあのレベルの平本蓮を見ていたんです■石渡伸太郎


RIZIN名古屋の解説を務めた石渡伸太郎インタビュー。一時期指導した平本蓮の勝利をどう見たのか?(聞き手/ジャン斉藤)


――今日は、石渡さんが解説を務めた名古屋のRIZIN LANDMARK 04についておうかがいしに来ました! 

石渡 よろしくお願いします。

――主に平本蓮選手と元谷友貴選手についてなんですが、2人とも一時期CAVEにも練習に来られてましたね。

石渡 だから「石渡から離れたから勝った」という意地悪な意見がたくさんあるかなと思ったんですけど(苦笑)。

――あー、ここ最近の石渡さんって冤罪に近いような絡み方されてますよね。

石渡 SNSで冤罪いっぱい受けているんですよ! 悪口言われたり、ガセを書かれたり。

――平本選手が欠場するんじゃないかという噂があったときに「平本蓮がケガ欠場すると石渡が言ってた」みたいな嘘のツイートもありましたし。

石渡 あれはさすがに悪質だから「開示請求する」とDMを送ったら「ごめんなさい、ボクは人から聞いた話を言っちゃっただけで……」という返事があって。まあ、謝罪できるならいいよということにしましたけど。

――ファイターを指導すると必ず結果がついてきますし、それでいろいろ言われるから大変ですよね。

石渡 まあでも、それで注目してもらっているうちに選手が出てくれば、それでいいかなと思ってますけど。デマだけはやめてほしいですよね。

――まずは、倉本一真選手と対戦した元谷友貴選手の強さについて石渡さんに教えていただきたいな、と。

石渡 まあでも、ボクからすると、こういう展開、こういう結果になるだろうなというのが普通に出た感じですね。正直、ふたりには差があるかなと思っていたので。

――ここ数試合の元谷選手の完勝ぶりには目を見張るものがあって。以前は下のポジションになることも多かったですが、ここ最近はことごとくテイクダウンを凌いでますよね。

石渡 最近は凄くスプロールがいいですよね。たしかに、前はわりと下になる瞬間があったり、パンチを被弾して下になる展開も見られたんですけど、最近はないですし。そういうのも含めてボクが今回の試合を観て思ったのが、打撃がぜんぜん欲張らなくなったなということなんですよ。

――「打撃を欲張らない」ですか。

石渡 たとえば『ストリートファイターII』で言ったら、全部が「弱パンチ」なんですよね。キックも全部「弱キック」で。それが凄くいいなあと思っていて。

――すべてが「弱モード」。

石渡 そこで、もっと威力を出そうと思ってちょっと迷った部分もあったと思うんですよ。正直、今回の試合もさんざん左を当てていたので、もうちょっと握りが深ければ倉本選手もダウンしていたんじゃないかなと思いましたし。でも、たぶんそこを捨てたんだと思うんです。

――それだと明らかにKOが生まれにくくなると思うんですが、それでも「弱モード」にするメリットがあるということですか?

石渡 ありますね。たとえば、パンチを打ったあとにグッと力んでいたら、逆にタックルを取られやすくなるじゃないですか。でも、元谷選手はポコンと当てているだけだから、またすぐ次に切り返せるんですよね。

――つまり、次の展開に向けて余力が残せる、と。

石渡 だから、打撃と組み技がつながったんだと思うんですよ。元谷選手って、もともとは威力ある前蹴りとかも蹴っていましたけど、いまはそのときとは違うバランスでやってると思います。だから、最近の好調ぶりはバランスの違いによるものだと思いますね。

――瀧澤謙太戦はKOされちゃいましたが、ここ数年はずっと安定してますね。

石渡 全体的に出力を落としているように見えますよね。極めに関しても、こだわってガッといくというよりは、ちょっと落としてますし。たぶん、それが凄くいいんだと思います。ファイターはずっと若い頃の感覚を追い求めがちですけど、年齢を重ねていく中で、元谷選手は打撃の威力をある程度捨てることによって、全体のバランスを取ったんだなと思います。

――やりながら、そこにたどり着いたという。

石渡 たぶん、考えてやっているんじゃなくて、やってるうちにしっくりきているのを感覚で覚えているというか。そういう感覚をスパーリングでつかんでいってたのかなと感じました。

――MMAは若さだけでは突っ走れないからこそ、そういう試行錯誤が必要なんですね。それにしても、元谷選手の最近の相手は厄介な相手が多いというか。今回の倉本選手もそうですし、太田忍選手も凄くやりづらそうな相手なのに、完勝ですもんね。

石渡 ボクも接戦にはなるだろうと思いましたけど、ふたりの間には大きな差があると見てました。

――接戦になるけど、大きな差があるって深いですね。

石渡 いい勝負をするのと、勝つのはまったく話が違いますから。たとえば、倉本選手は過去の岡田遼選手との対戦を見ても、パンチをもらって負けてますよね。ああいうディフェンス勘というのも、そうそうすぐに改善できるものじゃないですし。まあ、かなり練習を積んで自分の強みもわかっていると思うんですけど、今回の試合でもバックについたときにジャーマンを連発したじゃないですか。あの動きはまだMMAになってないなと思いました。

――というと、あのジャーマンはよくなかったんですかね?

石渡 元谷選手は完全にジャーマンを警戒して前にいってますしね。だから、ボクはいらなかったと思います。全体のつながりが壊れちゃうんで。だったらバックについてグラウンドコントロールすればいいのかなと。

――あそこでジャーマンは有効ではなかったと。

石渡 ほかの試合でもジャーマンを決めるシーンはありましたが、それを元谷選手クラスのトップどころにやっても「平気で対応するよ」と。なので、倉本選手のポテンシャルも間違いないと思うんですけど、まだ経験が足りない感じですかね。あと3年やったらヤバいかもしれないですけど。

――しかし、倉本選手や太田選手はレスリングではトップクラスの実力ですが、元谷選手クラスになるとそうそうテイクダウンできないですね。

石渡 もちろん、しっかり胸を合わせればブン投げれると思いますけど、なぜできないかと言われれば、それはMMAには打撃があるからです。

――そこはやっぱり総合格闘技なんですね。

石渡 だって、顔を叩かれますから。その恐怖心はなかなか拭えないですよ。そういう意味でも、もともとディフェンス勘の悪い人っていますから。ウチのアキラとかもそうですけど(苦笑)。

――それは、持って生まれたものだったりするんですか?

石渡 いやー、ボクはリズム感とかなんじゃないかなと思っているんですけどね。だから、だいたい歌を歌わせるとわかりますよ(笑)。

――えええ! そんな関連性が!?

石渡 いや、通じるものは少なからずあると思ってますね。だって、武尊選手とか歌もうまいじゃないですか。朝倉未来選手もうまいですし。やっぱり、みんな打撃ができる選手は歌がうまいんですよ!

――はー、目から鱗です! ちなみに、石渡さんは……?

石渡 ぼ、ボクは普通です……。

――ハハハハハ! ぜひ聞いてみたいです(笑)。<平本vsドミネーターの感想も語る続きはまだまだつづく>

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