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スパーの一本取られた・取られないのは、ホントにどうでもいい■水垣偉弥


北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥が語るRIZIN、UFCなどMMA雑談トークです(この記事はニコ生配信されたインタビューを構成したものです)


――今日は水垣さんをお呼びして、UFC、ROAD to UFC、RIZINといろいろおうかがいしますが……それにしても昨日は朝から夜までお疲れさまでした!

水垣 いやあ、もうアブダビ時間に対応したので完全に時差ボケです!

――ちなみに、この週末はどういうスケジュールだったんですか?

水垣 まず、22日(土)は昼前からの子供の運動会からはじまり……。

――あ、いきなりハードですね(笑)。

水垣 そのまま23:30開始のUFCアブダビ大会の解説に入りました。といっても、オンライン出演なので家の仕事部屋で解説をしていたんですが、そのまま朝を迎え、少し仮眠をとり、夜20時からのROAD to UFCの解説でAbemaに出社したというかたちですね。

――大変ですねえ。

水垣 いやあ、けっこうシビレる週末で、Dropkickのインタビューがそのアブダビ時間の締めくくりとなります(笑)。

――前もこんな感じでしたから、疲れ切った水垣さんを最後に取材するのがDropkickということで(笑)。まずUFCからですが、ピョートル・ヤンvsショーン・オマリーの話題から。オマリー判定勝利のジャッジが批判を浴びてますが、ぶっちゃけ水垣さんはどう思いました?

水垣 ボクはもう完全にヤンが勝ったと思って疑わなかったので、ちょっとビックリしましたねえ。

――全体で印象を残したのはヤンだったので、判定が告げられたときは世界中の人が「なんで?」と驚いてますよね。結果的にオマリーに判定がついた理由はどう分析されますか?

水垣 まあ、ボクシングかなあと。打撃の手数です。

――2ラウンドは三者ヤン、3ラウンドは三者オマリー。1ラウンドは割れて二者オマリーでした。

水垣 でも、1ラウンドにヤンが落としている理由があんまり見当たらなかったですよねぇ。2ラウンドはオマリーが打撃を効かせたシーンがありましたが、ジャッジはそのへんのボクシングでのインパクトを取ったのかなという。でも、そのあとヤンも効かせてるんですよね。さらにテイクダウンに成功しているので、ボクはヤンが打撃で取り返してプラスαもあったのかなと思っていました。

――3ラウンドは競ったんですが、みんなオマリーにつけてます。

水垣 ボクは3ラウンド目も若干ヤンかなと思ってました。オマリーも頑張っていて各ラウンドで競っているけど、結局ポイントをしっかり取っていたのはヤンかな。ただ、実際、その会場のケージサイドで観ているのと、画面で観るのとではまたちょっと印象が違うのかもしれないですけど……。

――いま聞いていて思ったのは、MMAとして高い評価をもらえる動きをしていたのは、どのラウンドもヤンなんだけど、手数とかそういう部分で細かく評価していくとオマリーにつけられても仕方がない……と解釈をするしかないのかなと。

水垣 そうですねえ。でも、この判定は久々に「うーん……」となりました。

――こういう判定が続くと、MMAというスポーツの魅力も損なわれる可能性がありますよね。

水垣 まあ、おそらくオマリーのジャブや、長い距離で打った手数を評価したと思うんですけど、そのあとのヤンのテイクダウン、パウンド、トップからの攻めが評価されてないですし、そのへんがちょっとなあ……という感じはしますね。

――この結果、オマリーがタイトルマッチ挑戦かという話になっていくと思うんですが、ちょっといまのままでは乗り切れないですよね。

水垣 試合後のインタビューでオマリー本人も「……ん?」と戸惑っていたように見えましたし。それがすべてを物語ってるのかなという気がします。なので、オマリーのタイトルマッチへのストーリーには、ちょっとクエスチョンマークがついたというのが正直なところですかね。

――そのバンタム級トップ戦線では、アルジャメイン・スターリングvsTJ・ディラショーの試合がありましたが、ディラショーが途中でケガしたとはいえ、アルジャメインの牙城が揺るぎない印象はありますよね。

水垣 しかも、オマリーは相性的にも悪いですよね。

――そして、メインではライト級タイトルマッチで、チャールズ・オリベイラがイスラム・マカチェフにまさかの一本負けという。もうUFCは本当に回転が早い!

水垣 早すぎます(苦笑)。あらためてハビブ・ヌルマゴメドフの長期政権の偉大さを感じるというか……ただ、ここでスーパースター軍団と一巡して、今回は叩き上げふたりのタイトルマッチに決着がついたことで、ライト級はまた新しい扉が開いたんじゃないかなと思いますね。そこに、今度はベニール・ダリウシュとかが挑戦したら、ますますスーパースターたちの時代がすぎた印象を感じますよ。

――もうちょっとオリベイラにも幸せな時間を過ごさせてほしいなと思ったんですけど(笑)。

水垣 とくにライト級は層が厚いですよね。でも、ボクは個人的にライト級が一番好きで、体重、スピード、パワーといろんなもののバランスが取れている階級だと思っているので、本当に面白いです。

――オリベイラもそうですし、マカチェフもそうですけど、8連勝とか9連勝してようやくタイトルショットを手にするという。

水垣 どんだけ層が厚いんだという感じですよね。

――先週のUFCでは平良達郎選手が2戦目にして一本勝ちを見せていて、いい感じで上がっていってますよね。

水垣 1戦目に比べて硬さもなくなってました。とくに、1戦目の1ラウンド目はめちゃめちゃ硬かった気がしたんですけど、2戦目はもう少し順応したかなと思いますし、いい勝ち方でした。

――こうなると、次はランカーとの試合でもいいぐらいですか。

水垣 同じフライ級のムハマド・モカエフがいいかたちで上がってきてますけど、ふたりとも層の薄いフライ級において期待の選手じゃないですか。それを、ここで潰し合いさせちゃうのか、ふたりとも育てていくのか……UFCがどういう判断するのかなという感じですね。

――UFCにおけるフライ級は選手層もそうですし、カードもちょっと図りにくいところってないですか?

水垣 まあ、単純に選手が少ないですからね。アメリカ人も、ブラジル人も、ロシア人もそうですけど、フライ級は少ないですよ。だから、これからROAD to UFCとかでアジアから選手が集まってくると、このへんは本当にアジアの階級になる気はします。本当にランカーとほかの選手の差があまりない気もしますし、トップ10の上から下までもそこまで明らかな差はなさそうな気がします。

――たとえばマネル・ケイプと平良選手が戦ったらどうなるか興味深いです。

水垣 ああ、それも面白いですよね。

――ライト級の選手が5連勝以上しないとタイトルマッチが回ってこないみたいな状況と比べると、だからこそフライ級はチャンスがあるんだろうなという気がしますし。あとは、平良選手って体格負けしないところも大きいですよね。

水垣 あの階級だと平良選手はけっこう大きいほうだと思いますし、本当にチャンスがありますよ。日本人にとって一番大きいチャンスがある階級だと思います。

――さて、次はROAD to UFCの話題ですが、松嶋こよみ選手が残念な負け方をして、解説の水垣さんの顔が死んでるように見えました。

水垣 その発言、ツイッターで見ましたよ(苦笑)。実際、テンションが下がっちゃってたので、もう隠せなかったですよねえ。

――この試合の判定も微妙でした。

水垣 いやー、ボクは正直、松嶋選手が勝ったと思いました。解説でも言ったんですけど、1ラウンドを取って、2ラウンドも松嶋選手かなと思ってました。3ラウンドはちょっと受けてしまった部分はあったと思うんですけど。

――相手に取られていてもおかしくない内容というか。

水垣 そうなんですよ。1ラウンドも2ラウンドもどちらも競ってる試合ではあったと思うんですよね。だからこそ、3ラウンドをしっかり取っておきたいなというのは正直ありましたよねぇ。

――ほかの階級でも、今回アンシュル・ジュビリというインドのライト級の選手もそうですし、アジアからどんどん強い選手が出てきてますよね。

水垣 いやあ、本当にびっくりしました。インド、それからインドネシア。ライト級はトーナメントの両脇が韓国の選手だったから、そのまま韓国人が勝って決勝で当たるのかなと思っていたんですけど、本当に予想外すぎて。ちなみに、インドの選手(アンシュル・ジュビリ)は本来なら1回戦で宇佐美正パトリック選手と戦う予定だった選手なんですよね。

――たしかにそうでした! あれって、一見“かませ”じゃないかという感じがありましたが、まさに未知の強豪だったという(笑)。

水垣 いや、ボクも絶対に勝てた相手だから、パトリック選手の欠場はもったいないことをしたなあ……と思っていましたが、蓋を開けてみたら勝負はわからなかったなと。キム・ギョンピョ相手にあの試合ができたとなると……パトリック選手はまだ経験値的にMMA歴が浅いですから、突破口が開けたかどうかはわからないですよね。ただ、ボクシング勝負になった場合は相性的には悪くなかったと思うんですけど、彼って一応グラップラーみたいなんですよね。

――え! あのインド人選手はグラップラーだったんですか?

水垣 ボクのリサーチによると、彼はマトリックスFCという大会から上がってきてる選手なんですけど。

――マトリックスFCって最高の団体名ですよ!(笑)。

水垣 そこの戦績を調べると完全にグラップラーなんですよね。だから「打撃なんてできないよな」と思っていたら衝撃が走りましたよね。インドは人口が多い国じゃないですか、今後UFCがマーケットとしてそういう国を狙っていって、インドにUFC PIなんかをつくって発掘していくような雰囲気になるとちょっと怖いです。とんでもない選手が出てくる可能性ありますよ。

・中村倫也vs風間敏臣はどちらが有利
・野瀬翔平覚悟のシーン
・クレベルに勝てるのは朝倉未来か
・牛久絢太郎の狙いはなんだったのか?
・オリベイラvsマカチェフからクレベル攻略を考える
・計量失敗談義
・スパーの一本取られたは、ホントにどうでもいい……14000字インタビューはまだまだ続く

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