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令和のスポーツ冒険家! 安保瑠輝也「一歩踏み出しても、死ぬわけではない」

安保瑠輝也12000字インタビューです!(聞き手/松下ミワ)


――安保選手は超RIZIN.3のあと、フィリピンにあるマニー・パッキャオ邸を訪問されてましたね。

安保 ああ、行ってきました。

――凄い! どういうきっかけで家までお邪魔できたんですか?

安保 パッキャオ選手のマネジャーで、日本とフィリピンのハーフのエミルさんという方がいるんですけど、このエミルさんとつながって連絡先を交換したんです。

――それで訪問OKに。

安保 今回は試合後2週間は何もせずにオフにすると決めてたし、スダリオ剛戦、ショーン・ストリックランド戦と続いたんで、ちょっと夏っぽいことしたいなと思って。それで、とりあえずフィリピンに行くことにしてたんですけど、フィリピンに決めたのは、パッキャオ戦を経て自分がどんだけフィリピンで認知度が上がってるのか知りたかったんですよね。

――それは面白い発想ですね(笑)。

安保 最初はパッキャオさんと会う予定はなかったんですけど、エミルさんとコンタクトが取れて。そうしたら、パッキャオさんも実家のあるジェネラルサントスという場所からマニラの自宅に帰ってきてるというので、会わせてもらえることになりました。でも、最初は15分しか時間が取れないと言われてたんですよ。

――さすがスーパースターは分刻みのスケジュールで。

安保 15分でも時間を割いてくれたこと自体が凄いみたいなんですけど、結局は2時間、ボクシングとかいろんなことを教えてくれました。しかも、会う予定だった政治家さんを待たせて。

――まさにVIP待遇!

安保 あらためて本当に凄い人やなと思いました。だって、ボクがフィリピンに着いた瞬間、空港の職員さんたちが「あ、アンポや!」「アンポ、アンポ」と騒ぐんですよ。空港の検査も全部飛ばしてくれて(笑)。

――ハハハハハ! それだけフィリピンの方々も超RIZIN3を観ていたということなんですね。

安保 パッキャオさんが試合するときはフィリピン国民全員が観るレベルなんです。やっぱり国の英雄だから。現役時代の全盛期なんかは学校なんかを休校してテレビで応援してたりとか。国民で知らない人がいない人物だし、その人と戦った男なんで。

――めちゃくちゃいいポジションですね(笑)。ちなみに、SNSに挙げていた写真の豪邸はパッキャオ選手の家ということですよね?

安保 あれはマニラにあるパッキャオさんの自宅です。100億円くらいするんじゃないですか?

――ひゃ、100億円!

安保 結局、フィリピンには3~4日いたんですけど、人が多いところに行けば、常に「アンポ、アンポ」という状態でした。

――いやあー、この試合をやって本当によかったですね。

安保 自分でも驚いてますよ。

――パッキャオ戦が決まったのは鈴木千裕選手がケガしてしまったからですが、そこでチャンスを掴むって凄く持ってますよね。

安保 ただ、RIZINのプレパレーションでも話したんですけど、五味(隆典)選手と鈴木選手がボクシングルールで試合をしたあとぐらいから「……これ、チェンジあるな」と。ケガしているとは知らなかったですけど、まあ俗にいう格オタたちのSNSの反応を見てたら、そういう雰囲気はありましたよ。

――独自の嗅覚で。

安保 で、実際にチェンジがあると想定したときに、その人物を具体的に考えても、候補になるような人物はみんな超RIZINに出場してる。「あれ? これオレしかおらんな」という。

――榊原(信行CEO)さんが会見でも言われてましたけど、パッキャオ選手がRIZINで試合するとなったときに、いち早く手を挙げていたそうですね。

安保 もちろん。もともとボクシングは好きですし、そんな世界のスーパースターと戦えるなら、手を挙げるのはファイターとして普通の反応ですよ。パッキャオさんってフロイド・メイウェザーとの試合で史上最高額のPPV売り上げを叩き出してるでしょ。そんな選手と戦えるのは凄く光栄なことじゃないですか。

――そして、カード変更会見のときの安保選手の表情がこれまたよくて。めちゃくちゃ戦う人の顔をしてました。

安保 まあ、あのときはスダリオ戦、ストリックランド戦と、ずっと戦って自信がついてましたからね。

――大勝負に抜擢されたからこその表情だと思ってましたが。

安保 まあでも、本当に「うわー、きたー!」みたいな感じじゃなかったですよ。「来たわ」「掴んだわ」みたいな、静かなる炎みたいな感覚ですかね。ボクは基本的にボクシングの練習には力を入れてるんですけど、そっから和歌山で1カ月ずっとこもってました。

――そして試合も凄くよくて。RIZINではメイウェザーの“圧勝”を2回も観ているので、今回もまた厳しい戦いになると予想していたんですけど。

安保 まあ試合に関しても、正直自分がやろうとしてたことの80パーセントくらいは出せましたね。でも、どういう言い方したらいいかな(考え込みながら)……。やってきたことは出せたなという感覚で、特別「よっしゃ! 凄いことをしたぞ!」みたいな感覚はボクの中ではないんですよ。

――え、そうなんですか?

安保 それぐらい中尾剛之先生とパッキャオ選手の映像を穴が開くくらい見て、「こう来たときは、こうする」とか対策を練ってたんで。パッキャオ選手の攻め方にはパターンがあるんですよ。まあ、それはどの選手もパターンはあるんですけど、ボクシングはまず駆け引きから始まる。いきなり右を打って当たるわけがないですし、その右をどのタイミングで、どのポジションで、どの足のタイミングで差し込むか……みたいな練習をずっと繰り返していたんで。

――本当に地味な練習をずっとやっていたんですね。

安保 だから、練習は楽しくなかったです。ワン・ツー・フックをバンバンバン打つみたいな練習は一切してなかったんで。ずっと動くものに対して追いかけていって、細かくでもいいからそこに的確に当てていく。パッキャオ選手の一番の武器はどこかというと、足なんですよ。

――フットワークということですよね。

安保 すぐその場所からいなくなって、すぐ前に入ってくる。ボクもそのスピードについていかないとダメですし、体格差だけを活かして止まって戦ってたら、そういう選手はみんなサンドバックにされてきてたんで。同じことしていたらボクも絶対そうなるじゃないですか。餌食にならない研究をしましたね。相手のしたいことをさせないことがまず第一、その先に自分がやりたいことができてくるんじゃないかなという感じで。

――やりたいことで言うと、安保選手のパンチもかなり当たってました。

安保 そうそう。右を当てていくとか、左を細かく当てていくとか。

――逆に、アッパーとかパッキャオ選手の攻撃を被弾したシーンもありましたが、そのへんの圧はどうでした?

安保 べつに、めちゃくちゃ効いたパンチとかはとくになかったですけど、ひとつ言うならここ(右腕の上腕あたり)。まだ、いまだに青いんですけど。

――本当ですね。そんなとこもらってましたっけ?

安保 いや、たぶんね、これはパッキャオ選手の家に行ったときにトレーナーのブーイさんに教えてもらったんですけど、ここって筋肉じゃないですか。で、試合が終わってからもここが一番痛かったんですよ。腕を下げた状態での生活が3~4日続いて。これパンチ一発ですよ? だからそれも戦略なんですよね。

――腕を殺すという戦略。

安保 そう。そしたら筋線が切れてガードも下がるじゃないですか。そういうことも教えてもらったりしましたね。

――試合のネタばらしじゃないですけど、それを聞けたのも有意義な時間ですね。

安保 最終的には、パッキャオ選手がこれからジェネラル・サントスで世界戦に向けてトレーニングをやっていくみたいなんで、そこで一緒にトレーニングしようみたいに誘われました。1カ月半くらい本当に行こうかなと思ってます。

――もはやパッキャオファミリーじゃないですか(笑)。

安保 なんか気に入ってもらいました。凄く。

――観戦していたライアン・ガルシア選手にも気に入ってもらってましたよね?

安保 ええっと、気に入ってもらってましたっけ?(笑)。

――試合後のインタビューとかも「アンポと戦いたい」と言ってたような。

安保 あれは、たぶん高揚してただけなんじゃないですか? いまは同じこと思ってないと思うんですよ。目の前でああいう試合を見て興奮したら「よっしゃ、オレもここに立ちたい」と思うのがファイターなんで。ライアン・ガルシアって26歳でまだ若いじゃないですか。来日してワーキャーされて気持ちよくなったと思ってるけどね。

――リップサービスの一環だったってことですか?

安保 まあ、ドービングで1年間試合できないし、ライアン・ガルシアが本当にRIZINで試合するかどうかも不確実なんで、あんまりべつにそんな期待しないです。ただ、パッキャオ戦もそうやけど、目の前の戦いを逃げずに本気でこなしてたら……本当はいろんな戦いに対してビビる気持ちもあったけど、それに正面から全力で行ってたら、こういうチャンスを掴めたんじゃないかなと思います。

――今回、凄く印象的だったのは安保選手が「こんなに応援してもらえてうれしかった」とコメントされてた部分で。やっぱり今回はいままで感じてきたものと違う感じがありました?

安保 ありましたね。やっぱ、うれしかったです。オープニングセレモニーの登場シーンで名前呼ばれたときとか、凄い歓声があったりするとめっちゃうれしいなと思って。いままでは「なんか……応援しにくいヤツやな」みたいな感じやったと思うんで(苦笑)。

――正直どう応援していいかわからない雰囲気があったりして。

安保 もちろん、いまもそういう感覚を持ってる人はおると思うんですけど。ただ、自分から「応援してくれ!」というつもりはないです。オレは自分の発言や行動も含めてトータルとして試合が面白い自信があるんで。なんか目が離せないヤツという自信があるんですよ。だから、常識みたいな中で小さくまとまってまで応援されたいとは思わないです。それは自分が幸せじゃないんで。

――その振る舞いはいろんな声が飛んでくるSNS時代では難しそうですよね。

安保 だから、あんま面白くないですよね、日本を見てても。正直、ボクはそう思います。

――ところで、安保選手といえばK-1に違約金を払って、現在はRIZINを中心に参戦されてますが、当時はどういう感じで次の舞台を決めていったんですか?

安保 RIZINを選んだ理由か……。いや、まずね、ボクはK-1をやめてRIZINというよりもブレイキングダウンに出ようと思ったんですよ。実際にブレイキングダウンに出たじゃないですか。

――元K-1のシリル・アビディとの階級超えマッチでしたよね。

安保 そのときの多くのプロファイターってブレイキングダウンを嫌ってたじゃないですか。まあ、いまもたぶん好きな人は少ないと思うんですけど。そこが逆にオレはチャンスやなと思ったんですよ。

――へえ~、それはどういうチャンスだと?

安保 だって、いろんな人が見てたじゃないですか。いまも見てるし。たしかに汚い喧嘩とか罵り合いとか、普段プロファイターがしないようなことをやってますけど、結局それで数字が取れるってことは、人はそれを求めてるし。見たいと思ってるってことですよね。そして最終的には戦う。オレはその戦いに価値があると思ってるんで。結果ストーリー性があって、その試合にそんだけのビューがつくならば、ファイターとして名前を覚えてもらおうという思いでしたね。

――知名度を取りに行ったみたいなところがあるんですか。

安保 存在を知ってもらうために戦ったという感じです。実際、シリル・アビディ選手と戦って得られるものも大きかったし。あの試合もなんか凄く叩かれましたけど、やっぱり自分よりめちゃくちゃデカイ選手で。たぶん35キロぐらい差があったんですよ。

――アビディは元K-1ヘビー級の選手ですもんね。

安保 そんな相手を舐めれるわけないですし、逆にみんなはオレのこと舐めてる。ただ、オレからしたら得るものはバカデカイんで。だから「勝手に舐めとけ」って話なんですよ。

――ブレイキングダウンという場に出ることは、得るものがめちゃくちゃ大きかったということなんですね。

安保 ブレイキングダウンに出ることによって存在は異質になりますからね。ちょっと変なヤツというか。オレは「ワン・オブ・ザ・カインド」なんで。唯一無二なんで。パッキャオ選手にそう言ってもらったんでね。

・あのときのK-1では「夢」が語れなかった
・スポンサーよりファイトマネー
・平本蓮と榊原CEOに騙された?
・スダリオに退くわけにはいなかった
・名指しされたらスルーできない……12000字インタビューはこのあとへ続く

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