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新日本プロレスが丸ごと直輸入された『FORBIDDEN DOOR』■「斎藤文彦INTERVIEWS」

80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは新日本プロレスが丸ごと直輸入された『FORBIDDEN DOOR』です!


――今回はフミ斎藤さんにAEW対新日本の対抗戦を振り返っていただきたいと思います。フミさん、よろしくお願いします。

フミ よろしくお願いします。

――ざっくり聞きますけど、大会の印象はどのように感じました?

フミ 今回のAEWと新日本プロレスの合同興行の大会名は『FORBIDDEN DOOR』(禁断の扉)。以前にもお話したことですが「禁断の扉が開いた!」は、本来は当事者ではなくて第三者の評価というか観察、分析であるべきところではありますが。

――“禁断”としているのは自分たちに理由があるわけですよね。

フミ 今回は自分たちの手で「禁断の扉をこじ開けたぞ!」ということなのでしょう。『FORBIDDEN DOOR』は本戦が9試合、プレショーで4試合がラインナップされていて合計13試合。試合以外の登場人物を含めると出場選手50人数名。AEWの実況・解説のジム・ロス、トニー・シヴァーニ、タズ、エクスカリバーらが「スリーイヤーズ・イン・ザ・メイキング!」というコメントを繰り返していました。AEW設立発表が2019年の1月1日ですから、3年がかりでついにこのイベントが実現したという意味ですね。

――3年で新日本とコラボイベントができたと。

フミ 「石の上にも三年」じゃないけれど、それくらいネゴシエーションに時間をかけた大きなコラボレーションだった。現AEW世界ヘビー級チャンピオンのCMパンクが負傷欠場となったため、暫定世界ヘビー級選手権というかたちで新日本代表の棚橋弘至と、AEW代表ジョン・モクスリーがメインイベントで対戦。コラボイベントとしてはベストのカードをラインナップしたと思います。

――超満員のアメリカのお客さんたちは新日本のレスラーたちに相当詳しい印象がありました。

フミ 会場はシカゴのユナイテッド・センター。WWEがPPVイベントを、それこそサマースラムを開催するような大都市のビッグアリーナです。今回は1万6000人の観客が集まっていましたが、WWEのそれよりもマニア層、気合の入ったプロレスファンが多かったこともあって、新日本の選手たちに対してはすごく歓迎ムードだった。メインイベントの棚橋vsモクスリーも先に入場したがモクスリーで、あとから入場してくるのが棚橋という順番になっていた。これはAEWサイドの選択だった。

――それだけ棚橋を大物として扱っていると。

フミ 今回の『FORBIDDEN DOOR』の2週間前に行われたAEWのTVショーに棚橋ら新日本勢が登場して対抗戦の予告編をやりました。そのときモクスリーは「俺がプロレスラーになる前から目標としていたのがアンタなんだ」っていうことを棚橋に訴えた。要するにモクスリー自身にとって棚橋戦は夢の一戦だといことを連呼したわけです。この時点で棚橋のほうが格が上であるという“初期設定”が明らかにされた。「“チャンピオン”とかいろんなニックネームを持つ人はいるけれど“エース”という称号を持っているのは棚橋だけだ」「棚橋、アンタに勝って、俺がエースという称号を奪い取る」ということもモクスリーはアピールしたんです。

――“エース”という新日本のニックネームがアメリカにも届いてるわけですね。

フミ それくらい棚橋はものすごい大物として紹介されていた。ただ、会場にはマニア系のファンが集まっているといっても、PPVの一般視聴者層も想定しなくちゃいけないので、コメンテーター陣は、視聴者に対して親切な説明をするわけです。興味深かったのは、イベントの日付が日本時間では6月27日の月曜の午前でしたが、アメリカ時間では6月26日の日曜日の夜。そこで「いまから46年前の6月26日、アントニオ猪木とモハメド・アリが闘った」という史実についてもコメントしていた。

――すごいところを引っ張ってきますねぇ。

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