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イゴール・タナベの「上京物語」と「俺の家の話」

MMAデビュー戦から5連勝中! イゴール・タナベインタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)

【UFCと契約】鶴屋怜の可能性が恐ろしいよ!

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――今日はパラエストラ東京で取材なんですけど、先程は激しいミットをやっていて。

イゴール グラップリングをしたあとに良太郎先生にミットをやってもらってます。

――キックボクサーの良太郎選手に。

イゴール 良太郎先生には打撃を見てもらってますね。良太郎先生がいるバトルボックスでもキックスパーをやっているし、あとは石井道場でフィジカルをやったり、ロータス世田谷でグラップリング、夜にランニングしたり……。

――格闘技漬けですね。MMAはやることが多いですか?

イゴール 多いですねぇ。柔術は柔術だけやればいいんですけど、MMAをやるとなると伸ばさないといけないところがいっぱいあって。同時に自分の得意の柔術をやり続けないといけないから、やることはかなり多い。ただ、ストライカーがMMAをやるときの難しさよりはまだちょっと楽かもしれないですね。

――グラップラーのMMA転向のほうがスムーズだと。

イゴール 打撃は良太郎先生が理解できるように説明してくれるから、順調に進んでるとは思いますけど。ボクの中では打撃になると「何をやっているかわからない」のが問題だったので。最近になってわかってきた気がします。なんで自分が打撃でやられてしまうのかがわからなかったんですよね。

――理由が見えてくることで不安が解消されて、いつしか自信がついてくるわけですね。

イゴール そうですね。やっぱり自分がなぜやられているかがわかったら改善できるんですけど、理由がわかっていないと改善もできないですね。良太郎先生に半年間ついてもらったことで、やっと一歩進んでいる気がしますね。

――ようやく「一歩」ですか。

イゴール いやあ、長いですよね。やることが多いし、いろいろな情報を自分の中で整理するのが難しいですよ。

――寝技や打撃、レスリングをどう組み合わせていくか。

イゴール ボクの中では打撃に自信がつくことは、打撃で勝負できるというわけじゃなくて、タックルがやりやすくなることだと思っています。

――あくまで寝技に持ち込む布石だと。理想とする選手にギルバート・バーンズを挙げてましたね。

イゴール ギルバート・バーンズはもともと柔術の世界チャンピオンだけど、打撃もできるみたいな。でも最近は打撃やりすぎじゃないですか(笑)。

――柔術世界王者の面影がないですね(笑)。

イゴール 逆に寝技やってないからちょっと悲しい。ボクはあくまで寝技で勝負したいですね。だから打撃がうまくなりたい。打撃で勝負できるようになると、寝技にも持っていきやすいんですよね。寝技しかできない選手だったら100%寝技に注意すればいいじゃないですか。でも、打撃もできるとなると打撃にも注意のパーセンテージを持っていくから。べつにバーンズみたいになりたいわけじゃなくて、バーンズは打撃も寝技もできる。それでいえばチャールズ・オリベイラも一緒ですし。「打撃がめちゃくちゃ強いデミアン・マイア」のほうがわかりやすいですね(笑)。

――柔術という武器だけで勝ち続けたデミアン・マイア先生のスタイルはUFCでは異常でしたよね。

イゴール いや、ホントに異常なことやってますよ(笑)。いまになれば、あのスタイルはもっと難しいですよねぇ。ボクも会ったこともあるんですけど、すごいいい人で。目指すべき選手のひとりかなと思いますけど。いまのMMAは打撃100でも難しいし、寝技100でも難しいですよ。そういう考えでMMAにも挑んでいるんで、(メルヴィン・)マヌーフとやったときは引き込みましたけど、あれは逆に引き込まないと殺されるから(苦笑)。

――ハハハハハハハハ! 寝技に拘ってるわけではなくて。

イゴール あのときから打撃の練習はしてたし、ちゃんと壁レスの練習もしてたんですけど。MMAは寝技だけじゃ絶対やっていけないのがわかってるから。

――発展途上ながらいまのところ1ラウンド5連続一本勝ちで。

イゴール 前回の試合(安西信昌)がボクにとってすごい大きかったですね。打撃を出した数は少なかったんですけど、その中でも成長を感じられたというか。ちゃんとカーフ(キック)も入れたし、だからこそタックルもあんなにスムーズに入ったと思うんですよね。

――打撃と組みのコンビネーションがうまくできてるんですよね。

イゴール そうなんですよね。ちょっとずつ自分の形を見つけてきたというか、そうなればあとを固めるだけなので。ボクの中では自信ついた試合。「もしかしたらMMAでやっていけるかもしれないな」って。

――ここで?(笑)。

イゴール そうそう(笑)。

――最近まで自信なかったんですか?

イゴール いや、自信はあったんですけど、やっぱり安西選手というUFCでもキャリアがある相手にスムーズに勝てたので、これで世界もいけるなと思います。

――今度のストラッサー起一選手も世界を知る男ですよね。

イゴール ボクの中でミスのない試合をしたいですね。ミスのない試合が1ラウンド一本に繋がると思うんで。RIZIN最初の試合で阿部(大治)選手とちょっと打ち合ったじゃないですか。そのときに自分の中では「打撃できてるんじゃない?」と自信があって。試合後、良太郎先生に「今日の打撃どうでした?」って聞いたら「よく言って10点」と(笑)。

――実質0点じゃないですか!(笑)。

イゴール 先生からすれば全然できていない(笑)。もう勘違いできないなと思って「俺は寝技の選手で、打撃も寝技のためにやっている」と。打撃がどんだけできても、あくまでも寝技に持ち込むための打撃ですね。

――自分の軸足はどこにあるのかと。

イゴール 打撃がうまくなってもコーチから「この試合は打撃でやったほうがいい」と言われたら、そこは信じて殴りますけど。いまはホントに先生から「オマエはストライカーじゃない」と言われるんで。打撃の練習は頑張ってるから成長しているし、みんなに褒められるけど、勘違いしないように。「寝技のための打撃だぞ」って言われるんです。

――ちゃんと釘を差してくれるんですね。

イゴール めちゃくちゃいいコーチですから。おかげでここまで辿り着いてます。

――大晦日の試合で驚いたのは、動画でも公開された減量風景ですね。ウェルター級初挑戦となった今回は最終日に7・5キロも落として。スケジュール的にタイトだったところはあったんですよね?

イゴール そうですね。もちろん毎回7・5キロ落とすつもりはないし、もう二度とあれはやりたくない(苦笑)。本当にきつかったです。リカバリーできたからよかったんだけど、失敗していたら大きな負けに繋がってたと思うんで。あの試合はどうしてもやらないといけなかったです。いま家を建てていて、その初期費用で……。

――一軒家を建てるための資金!

イゴール 初期費用がどうしても必要だったから。ミドルでできればよかったんですけど、もしくは80キロのキャッチ。でも、ウェルター級じゃないと難しいと言われて。

――安西選手もRIZIN大晦日に出られるからとはいえ、体重で妥協しないで適正体重で、という判断があったらしいですね。

イゴール それは当然ですよね。こっちも試合機会を逃すわけにはいかないと思ってウェルター級でやりました。

――あのハードな減量は一軒家のためだったと聞くと、また違った重みが出てきますねぇ。

イゴール 自分のことだけを考えてたらやってなかったんですけど、そこは家族のことを考えて。それにいつかウェルター級でやろうとは思ってたんですけど、どこでやるかわかんない。調整が大変だから、ずっと先延ばしにしてたかもしれない。ここでウェルター級でやれたのはよかったです。

――初期費用もできたし(笑)。世界を目指すうえでウェルター級という考えは前からあったんですか?

・世界と戦うにはウェルター級
・上京を決意したのは奥さんの妊娠
・MMA転向は生活のため
・バーベキュー論
・ボンサイvsピットブルの乱闘のときは…1万字の続きは会員ページへ

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