「水曜日のコロッケそば」第一夜/富士そば・新井薬師店
コロッケそばの魅力は何といっても、その庶民性。いや、もっと言えばジャンク性。一級品の日本食としての「そば」の醍醐味とは、そば粉の香りと甘辛のだし汁のコントラスト。そしてしゃっきりした喉越しを味わうこと。化学調味料や喫煙で鈍った自分の舌には、おこがましいほどの一品だったりするのです。しかし、一方では、立ち食いそばに代表される下世話なファストフードとしての「そば」も、またひとつの姿。黒々としただし汁に、コシも何もない麺に、しなびたかき揚げだの、油揚げだの、脂っこいタネを乗せ、熱々ですする!(一級品のそばは「たぐる」であるので間違いなきよう)そんな立ち食いそばのメニューの中にあって、B級、下世話、ここに極まり!というのがコロッケそばなのです。
だからこそ、最初の一歩は、ありふれた、どこにでもある、平凡な店から食べていきたい。と、いうことで、まずは自宅に最も近い、駅前の「富士そば」です!(味の均一化を至上としたチェーン店のため、店舗による味の差を比較するほどのことでもないのですが)
⚫︎富士そば・新井薬師店
11月も後半にさしかかり、風は完全に冬モード。コートを着ていないと寒さ厳しい季節になったので、まさにコロッケそばのオンシーズンです。熱いそばに、油っぽいコロッケを乗せて食べるわけですから、夏よりは、こういう寒い時期の方がお似合いです。しかも本日は雨。冷え切った体を温めてもらいたい!
まず、「そば」としてのポテンシャルだけど、俺は、わりと立ち食いチェーンの中では富士そば推しなんです。麺はやわらかめだけど、ぬめり感なく(新井薬師店では注文後に茹でるので3分待つ)、ひじょーにタンパク(笑)食品としての迫力が一切ない無個性さ。そこがいい。無駄に主張しない麺こそ、立ち食いそばにはふさわしいと思うからです。つゆも甘さひかえめですっきりシンプルで、「味もそっけもない」美味しさ(矛盾してるけど)が富士そばのいいところなのです。また、ほうれん草とか、わかめなど、具の盛りが他チェーンよりもいいのではないかと思います。
さて、コロッケそばですが、コロッケは丸くて平べったい形状。パン粉も細かめの、よくある冷凍食品の惣菜的な佇まいです。中も、安物のお弁当でならメインをはりそうな、ジャガイモ主体。たまにコーンや細かい人参が入ってるあたり、いかにも「よくある惣菜コロッケ」です。そばは茹でたてとはいえ、コロッケは冷め切ったもの。表面のサクサク感とか望むすべはありません。こうなれば、序盤から、どぶんとつゆに沈め、衣の油をつゆに引き継ぎつつ、コロッケを温めながら食べるのが良いと思います。コロッケをかじりながらそばを食べ進め、4分の1ほどになったら最終的に、つゆに混ぜ込んで「じゃがいも風味」のつゆにしてフィニッシュというのがコロッケそばの醍醐味です。実際、富士そばのコロッケは味がプレーンな分、溶かしてしまうのにも適しています。コロッケの他にはネギと、予想外に多めのワカメが色を添えています。ワカメ+そばで、食べ進めることも出来そうな分量が嬉しいですね。
通にもなれば、ここに生卵を投入して「コロ玉」そば、というのも良いでしょう。とにかく、ひたすらに「コロッケそば」の基本形を堪能できる。それが富士そばの「コロッケそば」です。
住所/中野区上高田3-41-8 駅前共同ビル1階
アクセス/西武新宿線新井薬師駅南口
TEL/03-3389-5858
営業時間/24時間
定休日/無休
コロッケそば:390円
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