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再生医療等とは?

再生医療等に関する行政書士業務を行う上で、そもそもどのような治療が「再生医療等」に該当するのかを理解することが非常に重要です。
今回は、「再生医療等」とは何かを解説します。


再生医療等安全性確保法の目的

再生医療等安全性確保法の目的

行政書士の方には今更説明することでもないかとは思いますが、業務を行う上でまずは根拠となる法律がどのような目的で制定、施行されているかを理解することが重要です。
そこで、再生医療等安全性確保法の第1条の目的を見ると、大きく分けると以下の2つのことを定めている法律であることがわかります。

①再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置
②特定細胞加工物の製造の許可等の制度

①に「再生医療等」という言葉が出てきており、②の「特定細胞加工物」という言葉も「再生医療等」に用いる細胞加工物を指す言葉です。

そして、「再生医療等の迅速かつ安全な提供及び普及の促進を図り、もって医療の質及び保健衛生の向上に寄与することを目的とする」と目的にも「再生医療等」という言葉が使われており、この法律が「再生医療等」についての法的規制を定める法律であることがわかります。

用語の定義

再生医療等安全性確保法における用語の定義

再生医療等安全性確保法で用いられる用語の定義はこちらの画像のように定められています。
特に重要なのは1つ目の「再生医療等」と2つ目の「再生医療等技術」の定義です。
それぞれの定義は画像のとおりですが、ポイントとしては以下の通りとなります。

①細胞加工物を用いた医療技術であること
②「人の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成」、「人の疾病の治療又は予防」のどちらかを目的としていること
③政令で定められていること(実際には政令により除外される技術が定められており、それ以外であること)
の3つを全て満たす医療技術が「再生医療等技術」であり、再生医療等技術を用いる治療のうち治験を除くものが「再生医療等」である。

なお、画像の記載からは省略しているのですが、再生医療等技術の正確な定義には「細胞加工物として再生医療等製品(医薬品医療機器等法第二十三条の二十五 又は第二十三条の三十七 の承認を受けた再生医療等製品をいう。第四項において同じ。)のみを当該承認の内容に従い用いるものを除く。」という文言があります。
こちらは、再生医療等製品として承認された細胞加工物を承認された内容通りに使用する場合は既に安全性、有効性が確保されているため二重規制にならないように再生医療等安全性確保法の規制対象からは除外するという意味となります。
「再生医療等」から治験が除かれているのも同じ主旨となります。

再生医療等とは?

前項の「再生医療等技術」の定義をもとに、「再生医療等」とは何かを解説します。

再生医療等とは?

「再生医療」という言葉は明確な定義がないですが、事故や病気で失われた組織、器官(手足や臓器など)を再生させる治療法をイメージされるのではないでしょうか。そのようなイメージからすると、細胞を用いない場合でも、例えば薬を飲むと事故で失われた腕が生えてくるというような場合でも再生医療に含まれると考えられます。

一方で、「再生医療等」とは法律的に定義されており、一般的にイメージされる「再生医療」とは必ずしも一致しません。
例に挙げたような薬を飲むと腕が生えてくるというような治療法がもし実現したとして、「細胞加工物」を用いていないため「再生医療等」には該当しないのです。
一方で、がん免疫療法という自分自身の血液から免疫細胞を増やして活性化させた「細胞加工物」を点滴する抗がん治療がありますが、こちらは失われた組織、器官を再生させる治療法ではないですが「再生医療等」の定義には該当します。

再生医療等の定義

「再生医療等」とは、前項で説明したように定義されており、図示するとこちらの画像のようになります。
こちらの画像で、赤と青の四角が重なっており、灰色の四角を除いた紫色の範囲が「再生医療等」であり、再生医療等安全性確保法の範囲となります。

加工とは?


加工とは?

ここまでに解説してきたとおり、「再生医療等」に該当して再生医療等安全性確保法の対象になるかを判断する上で重要なのは「細胞加工物」を用いるかどうかなのですが、今後は法律上の「加工」とは何か?が重要となります。
再生医療等安全性確保法でいう「加工」とはこちらの画像のとおりで、端的に言うと細胞の性質を変化させるような操作を行うことを指します。


加工に該当する操作の例

こちらの画像は加工に該当する操作の例です。

・細胞培養という方法により細胞を増殖させる
透明なプラスチックの容器に赤色の液体を入れている写真や映像を見たことのある方も多いのではないかと思いますが、あれは細胞培養という方法で細胞を増殖させており、このような操作は加工に該当します。

・酵素処理による分離
多くの細胞は細胞同士がくっついて塊やシート状になっていますが、これは細胞の間に細胞を接着させるタンパク質が存在しており、その働きによってくっついています。
そのタンパク質を分解させる酵素を用いることで塊やシート状の細胞をバラバラに分離することができ、このような操作は加工に該当します。

・薬剤処理による性質改変
細胞を培養する際に薬剤を加えることによって性質を変えることができ、このような操作は加工に該当します。

・遺伝子導入
細胞に遺伝子を導入したり除去したり、遺伝子を構成する情報を編集する技術があり、このような操作は加工に該当します。


加工に該当しない操作の例

一方で、こちらの画像のような操作は加工に該当しません。
こちらについては詳細については割愛しますが、このような操作は細胞の性質を改変しないもので加工には該当しません。

政令による除外技術

政令による除外技術

最後に、政令により再生医療等技術から除外されている医療技術があり、これらに該当する場合は「再生医療等」には該当せず再生医療等安全性確保法による規制の対象外となります。
ただし、これらの医療技術であっても、遺伝子改変細胞を用いる場合、iPS細胞やES細胞を用いる場合などは除外技術に含まれず、「再生医療等」に該当し再生医療等安全性確保法の対象となります。

業務を行う上でのポイント

今回解説させていただいた「再生医療等」とは何か?というのは、再生医療等に関する行政書士業務を行う上で非常に大事な知識であり、正確に理解しておくことが重要です。
しかしながら、業務を行う上での大事なポイントは「わからなければ厚生労働省(管轄の地方厚生局)に問い合わせる」ことです。
再生医療に関する技術は急速に進歩していっており、200例を超える再生医療等に関する業務を行ってきた私であっても最先端の技術については「再生医療等」に該当するのか判断がつかない場合もあります。
「再生医療等」に該当するのかがわからない場合に、勝手に判断して手続きを進める、もしくは手続きが不要と判断して手続きをせずに治療を実施するということをしてしまうと、後から判断が間違っていた場合に取り返しのつかない事態となる可能性があります。
そのようなことにならないように、少しでも判断に迷う場合は厚生労働省(管轄の地方厚生局)に問い合わせるということを習慣付けておくことが重要となります。

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