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2024.7.31パリ五輪フランス代表戦を振り返る

何をおいても日本が強豪フランスを99%敗北まで追い詰めたことが誇らしいし、いちバスケファンとしてリアルタイムでこの試合を視聴できたことが吾輩は本当に嬉しい。

間違いなくバスケ男子日本代表のマイルストーンの一つになる戦いだし、数年後には「リールの悲劇」みたいな二つ名とともにバスケファンの記憶に永く残る試合だったと思う。

一方で、だからこそ敗北という結果は受け入れられないし気持ちをどう消化していいのか全然分からない。

4点リードで迎えた終盤のあの場面。本当ならその3分後には「バスケットボール男子日本代表がフランス代表を破りオリンピック初勝利」というNHKの速報テロップが流れてたはずじゃないのか。

まるで負けたような気がしていないが、記録上は確かに負けているのだ。

あらためてどんな試合だったのかを振り返りながら、気持ちの整理をつけてみたい。


ウェンバンヤマを締め出す八村


ドイツ戦の記事の終わりでも書いたように、この試合のキーポイントのひとつは間違いなく「ウェンバンヤマにペイントで仕事をさせない」ということだった。

ゴール下から締め出してリングから遠い位置でバスケをさせれば、それだけ日本がリバウンドで有利に立てるからだ。

予想通りスリーだのミドルジャンパーだのをよく決めてきたバンヤマくんではあったが、ペイントへの侵入は八村がガッチガチにシャットアウト。バンヤマくんはその身長に比して体重が100kg足らずでフィジカルに課題があるので、ゴリラ八村相手のポジション争いに終始苦戦していた。

確かにあの規格外のサイズにしてオールラウンドなプレイができることこそバンヤマくんがNBAの寵児たる所以ではあるが、外から打たせる分にはフォーニエとかストラゼルとかのほうがよっぽど怖い相手だったで、日本としてはプラン通りの守りができたというところだろう。


河村とかいう支配者


この試合を支配したのが河村なのは誰の目にも明らかだった。

29得点6アシスト7リバウンド。

オリンピック史上、25得点5アシスト5リバウンド以上を記録したのは21世紀以降では河村でわずか3人目なのだとか。

ディフェンスのクローズアウトが甘いと見るやスリーを沈め、近寄ってきたらスピードで抜き去りレイアップを決める。

4Q残り8分以上を残して八村が退場し安堵したであろうフランス国民の心胆に、この試合で本当に恐ろしいのは誰なのかということをイヤというほど叩き込んだはすだ。 



ポップからスリー刺しまくるホーキンソン先輩


この試合、河村に呼応するかのようにスリーを次々と沈めたのはホーキンソンだった。

ドイツ戦のスカウティング結果なのか分からないが、フランスはポップしたホーキンソンに対するクローズアウトがまぁまぁヌルかった。その代償をフランスにキッチリ支払わせたホーキンソンの貢献は素晴らしかった。

NBAのDPOY相手にハイライト確定の鬼ブロックかます渡邉飛雄


たぶん、この試合の一番のハイライトの1つだろう。我慢出来ないので動画置いちゃう。マジで真夜中なのに「うおおお!」ってデカい声出してしまった。

相手はあのゴベールだ。NBAでDPOY(年間最優秀ディフェンス選手賞)に輝いた経歴を持つNBA屈指のビッグマンのボースハンドダンクをあそこまでクリーンにシャットアウトするBリーガーとかもう胸が熱くならざるを得ないじゃん。泣くじゃん。

ゴベールは、ボール下げたところのスティールを狙ってた渡邉雄太をかわした時点で2点を確信してたからダンクもジャンプも割とソフトだった。そこに死角から走り込まれてブロックが飛んできたもんだから、さすがに意表を突かれて力負けした感じに見えた。

マジでこのプレイは、大会だのリーグだのに関係なくこの1年間の世界中のバスケのハイライト合わせてランキングを作ったとしても上位に入ると信じてる。

これ以外にも、飛雄は18分の出場で6リバウンドと八村不在のコートでハッスルし続けた。

確かにオフェンスではまだまだ伸びしろがある選手だが、チームが自分に求めていることを理解してそれに全力を発揮する姿は本当に頭が下がる。素晴らしい活躍だった。



メタルマリオ吉井


ミッション遂行力の高さで飛雄と並んで特筆すべきなのが吉井だ。意味不明なほどのメタルマリオみたいなフィジカル魔神ぶりで、2Qではヤブセレ、ルソー、フォーニエのドライブをノーファウルで弾き飛ばし、3Qではゴベールからオフェンスファウルを誘発させるなど、スタッツに残らないところでほんとうによく貢献してくれた。

Bリーグでの出場時間がわずか10分そこそこの男が、日本代表にとってかけがえのない戦力になっていることに吾輩は感動する。


オフェンスでも格の違いを見せつけた八村とアンスポ退場の件


ドイツ戦では低調なショット精度に終始してしまった八村だが、この試合ではスリー、ミドルを次々と決め、28分で24得点とバキバキの活躍で格の違いを見せつけた。3人位に囲まれながら強引にねじ込んだシーンもあり中外で手がつけられなかったよねマジなんなのこの人頼もしすぎるんだけど

それだけに、2回のアンスポによって勝負どころの4Qをほぼ丸々残してコートを去ったときはテレビをそっと消してしまおうかどうか迷った

1つめのアンスポは議論の余地があると思うが、「このプレイでアンスポとられるのか」という線引きをこの時点で頭に入れておいて欲しかった。ちなみに2つ目の方はけっこうアンスポくさいアンスポだった。


フォーニエとストラゼルに見た開催国の意地


フランスとしては開催国でありヨーロッパの強豪国としてのプライドに賭けても日本には負けらんねぇんだ…!という意地を、4Q終盤の死ぬほど苦しい時間帯にフォーニエとストラゼルが2本のスリーで体現してみせた。

フォーニエがトップやや深めの位置から渡邉飛雄のタイトなコンテストより一刹那速く放った同点のスリーは、芸術的ですらあった(フォーニエのイケメン補正の可能性は否定できない)

そして、ストラゼルの「あのスリー」は、地獄の縁にいたフランスを蜘蛛の糸で一気に地上まで引き上げたミラクルショットだ。あれを決めきるというのは、敵ながら見事の一言。ただし吾輩はお前の顔は二度と見たくないがな。

やや力を落としてきている感があるとはいえ、やはりフランスはヨーロッパトップレベルの強豪国だということを思い知らされた。

NHK中継の「フルニエ」呼びの語感にいつまでも慣れない



レフェリング( ゚д゚)


たくさん文句はある。

◯「あのスリー」のディフェンスへのファウルコール
誤審というか、笛吹くような接触じゃないだろあれは。

ストラゼルがスリー放つ直前に、河村の左手がストラゼルの腰のあたりに触れているというのは、わかる。

ただ、それでハンドチェックのファウルを吹くには、あまりに影響の小さい接触じゃないか?ということだ。

確かにストラゼルのスリーの体勢は崩れていたよ。ただ、それはプルアップの勢いでそうなっただけであって、河村の左手が触れていたこととはほとんど関係がない。そこの接触と影響を正しく認識してジャッジできてなかったのではないかというのが、吾輩の個人的な意見だ。


◯ファウルコールの前にさ…
一旦、ペイント内のゴベールにボールが入ったやん。あそこで囲まれたゴベールが外にボール出すときに思いっきり軸足ブレッブレですねん。
どう見てもトラベリングです本当にありがとうございました。

それと、ストラゼルが「あのスリー」撃つ前に渡邉の(形だけの)コンテストかわしてベースライン側にドリブルしたじゃん?完全に突き出しのトラベリングです本当にありがとうございました。


いやね、わかるよ?


こっちは俯瞰で映像何回も繰り返し見られるからそんなこと言えるだけであって、選手と同じ目線で笛吹いてる審判が、あのクライマックスの場面でボールマンの足元に意識をおいてピー!トラベリング(腕クルクル)なんてなかなか吹けないんだろうけども。

ただ、それ見逃しときながら「あのスリー」のシュートチェックには笛鳴らすのかよ…と思うと、やるせない気持ちになる。


◯たぶん審判の感じる重圧もヤバい
 オーバータイムでボールマンの渡邉にフォーニエが接触した際、審判が笛鳴らしたにも関わらずすぐさま笛を訂正して渡邉のターンオーバーになり、フランスのスローインになった。

こんなバッチバチの接戦で笛吹いてる親藩のプレッシャーも相当なもんだろう。

でも笛取り消すのはわかるとして、なんでフランスのスローインになるのか、ちょっとよくわからない。



クロージングをド派手にミスってしまった日本


クソみたいな審判とは全く切り離して考えたいのが、「残り16秒4点リードの場面でのクロージングはかなりまずさがあった」ということだ。

◯クロージングで必要なこと
クロージングとはつまり、「終盤でほぼ勝ち確のチームが、相手チームのわずかな逆転の可能性を潰していく作業」であって、「やるべきこと」よりもむしろ「やってはいけないこと」をチームで共有することが不可欠なのだ。

当然、最もやっちゃダメなのはスリーポイントシュートへのファウルだ。なぜだめなのかは今回の試合結果が物語ってるので言うまでもないが。

次に、2ポイントであってもシュートファウルは基本的に避けるべき選択肢だ。FTを1本決められたあと、オフェンスリバウンドからのスリーで同点に持ち込まれる可能性がある。ただし、フリースローが下手なプレイヤーに対してあえて2点のシュートファウルをしにいくことはあり得るだろう。

◯で、どうすればよかったのか。
「ペイントゾーンでボールが入ってもガン無視して外のシューターにつく。」だ。

ペイントから決められてもまだ2点のリードがあるうえに、こっちのポゼッションになる。相手が仕掛けてくるであろうファウルゲームを無難にかわしてゲーム終了だ。

ところが実際には、ゴベールに対して河村がペイントまでヘルプに入ってしまった。かなりの悪手だった将棋AIだったら、日本の勝率が98%から70%に下がるくらいの悪手だ。

フランスからしたら、絶対にスリーを決めたい場面で、わざわざ日本がスリーへの警戒態勢を緩くしてくるのだから願ったり叶ったりだ。

◯次善策は「スリーも勝手に撃たせる」
最悪、スリーも勝手に撃たせてよかった。時間もある程度使わせたわけだし、決められたところでまだ1点のリードがある。

あんなにガチのシュートコンテストに行った時点で、皮肉にも結果的にフランスにチャンスを与えてしまった。

ここは、チームとしての経験不足が出てしまった格好だが、終わったことは経験として次の糧にするしかない。まだオリンピックは終わっちゃいないのだ。



FIBAルール改正しませんかね?


この試合で5回くらいは見たような気がするんだけど、シュートがリングにあたってまだ仮想の円筒の中にあるボールを掻き出すやつ。あれ、個人的には最悪バスケという競技が成立しなくなるレベルのプレイだと思ってるんだけど、OKとしているFIBAルール本当に意味分かんねぇ。



ベスト8への道


日本がブラジルに勝つのは絶対条件だが、仮に日本がブラジルに1点差で勝ったとした場合、次のいずれかの条件を満たせば、日本のベスト8進出が決定する。

  • 南スーダンがセルビアに18点差以上で負ける

  • スペインがカナダに20点差以上で負ける

どちらも、決して非現実的な可能性じゃないし、日本がもう少し点差をつけてブラジルに勝てば、それだけ有利に立てる。

最後まで全力を尽くしてくれ!
Go, Japan!!!

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