転生のスクリプト
灰色の雲に覆われた町の空に、雷が、光っています。
その雷が、背骨を通って、上から下へ、体を貫きます。
雷に貫かれた人は、白目をむきながら、後ろへ、棒立ちのまま、倒れました。
何が起こったのか、周りの人は、何もわかりませんでした。
大都会の中心地で、スーツ姿の男性が倒れたのです。
男性の周りをよけながら、横目でチラチラ見ながら通り過ぎていくサラリーマンもいれば、野次馬のようにずっと見て騒いでいる女子学生たちもいます。
雨は降っていなくて、ただ雲だけがもやもやしている日でした。
生まれ変わりというのは、存在するのでしょうか。私は、あると思います。
だって、これだけで終わるなんて、むなしいですから。人は、きっと、長い間、長い時間の中で、何度も何度も生まれ変わります。
花が散って、実になって、実が落ちて、葉が落ちて、芽が出るように。
ええ、そうですとも。人間よりも短い命だって、一緒の地球に生きているんです。
長いようで短い、短いようで長い。そうやって、ゴムを伸ばしたり縮めたりするように、振り子時計が、行ったり来たりするように、ブランコを漕いだら、返ってくるように、寄せては返す波のように、渡り鳥が旅にでたら、また来年戻ってくるように。
出かけては、返ってくる。離れたと思ったら、また戻ってくる。その繰り返しなのかもしれません。
葉っぱから露が落ちて、朝になります。青空が広がります。雲が流れていきます。日が西に傾いたら、空が赤くなります。日が沈んだら、夜になります。一瞬一瞬、同じ景色はないのです。
毎日同じだとつまらないでしょうか?でも、毎日同じじゃない人って、どれくらいいるのでしょうか。ええ、そうですとも。毎日同じ人なんて、いないのですから。胸を張って生きればいい。そう言って、水色のシャツを着た白髪の外国人のおじさんは、ビスケットをミルクにつけて一口かじりました。
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