現在地:中華BLとブロマンスという世界

※追記※2022年4月、ついに吹替版放送が始まりましたね!
現在はWOWOW放送でのみ視聴できますが更に色々な方が観る機会が増えると思うのでとても嬉しいです!
吹替で楽しまれた方はぜひ、字幕版でより深く楽しんで欲しい!(用語など、耳で聞いた音だけで理解するのが難しいものが多いので)
そして原音の中国語の台詞もぜひ楽しんで欲しいです。字幕版は嬉しいことに、配信がどんどん増えて今ではかなり気軽に観られる環境になっています!


中国のファンが放送1周年記念に海を越え各地で応援ビデオを流すという、
スパダリ石油王案件としか言いようの無い企画が発表されて驚いております。
ということで、今回は上記のスパダリ石油王を虜にしている「陳情令」について書きたいと思います。

陳情令(ちんじょうれい)とは

現在私がはまっている中華BL小説「魔道祖師」を原作とした実写ドラマです。
中国で動画再生回数64億回を超え、2019年のWEBドラマ再生回数1位を記録した作品です。64億……桁が違いすぎる。
全50話と、普段ドラマを観ない私にしてみれば世界百名山制覇に挑むほど果てしないものに思えますが、中国の時代物ドラマではこれがスタンダードのようです。

物語の大筋は「魔道祖師」をベースにしていますが、BLはドラマとして認められないという現実があるためブロマンスという形容がされています。
そのため、主人公の藍忘機(ランワンジー)×魏無羨(ウェイウーシェン)は知己の友として描かれています。
陳情令のあらすじ、登場人物相関などを確認するのは、公式サイトよりもWOWOWの特設ページがおすすめです。
全体の雰囲気は、Blu-rayBOXのプロモーションがわかりやすいです。

私はもうどう転んでも原作が大好きなので、陳情令については「プロのファンが全力で誠心誠意創作した公式同人作品」的位置づけで楽しんでおりますので、そういった視点で楽しんだ面の話をしたいと思います。
ネタバレと感じられる内容を多く書くかもしれませんので、視聴予定のあるネタバレ禁止な方はまたどこかでお会いしましょう。

ここが凄い

プロのファンが全力で誠心誠意創作した公式同人作品と形容しましたが、その理由についてです。
脚本を務めた楊夏さんは、原作の魔道祖師に惚れ込み版権を買い取り、制作会社の経営者を三年かけて説得。
キャスティングにも関わり、作品を世に届けてくれました。
制作が決定した当初はブロマンスでさえもなく、異性の恋愛ものとして大きく変更される話も挙がっていたそうですがファンが強く抗議したそうです。憶測ではありますが、楊夏さんはこのあたりでも経営陣と大きくぶつかったのではないでしょうか。
情熱に感謝しかできません。

また、制作陣・キャストのほとんどが90年代生まれの非常に若いプロジェクトだそうです。
俳優陣もこの作品が飛躍作になった方が多いようで、ドラマ初主演や経験の浅い方が多かったとか。

最も私の胸が震えたのは、youtube公式チャンネルに公開前のキャストや制作陣が意気込みを語る動画があるのですが、クランクアップした時点では、まだ本当に放送されるかどうか決まっていなかったそうです。
中国での規制ルールやポイントはわかりませんが、放送されない可能性も多く残っている状態だったようで、そんな中で作り上げていく苦労や不安は想像もできません。

キャストも原作を読み納得して出演を決めた方もいるそうで、特に魏無羨を演じたシャオジャンさんは、規制されていない原作を読まれたそうです。


原作との大きな違い

まず前述通り、藍忘機×魏無羨は原作のようなラブはしません。
ちなみに藍忘機×魏無羨は公式で「忘羨(ワンシェン)」と呼ばれます。
以降CP表記は「忘羨」とします。

魏無羨の弟弟子にあたる江澄(ジャンチョン)が、温情(ウェンチン)に恋愛感情を抱く描写がありますがこれはドラマオリジナルです。
魔道祖師に登場する主要女性キャラクターは魅力的な人が多く、制作側の事情があったとはいえ変更により彼女のキャラクターアイデンティティがぶれてしまうような気がしました。
しかし、しっかりと芯の部分を揺るがすことなく描かれており安心しました。ただ、江澄は原作だと全く温情に惹かれることなど無いので、非常に複雑な気持ちです。
これは宝塚の、なんとか異性間の恋愛要素を出さねばならん問題と近いものなのかもしれません……。

また「陰鉄」というアイテムが物語の鍵を握っているのですが、それにまつわるエピソードにもドラマオリジナルが散りばめられています。
このあたりは原作を知っていれば比較して楽しめる点でもあります。

そして魏無羨が亡くなり、再び現世へ甦るまで。
原作は十三年。ドラマは十六年。
年数差の理由は確認できていませんが、忘羨が再開したときの藍忘機は三十代半ばです。

それはそうと、オフショットはめっちゃJKじゃん……ってなるので、これだけでもちょっと観てください。

見どころ

間違いなく忘羨のふたり。キャスト完璧。世界ありがとう。

正直原作そのまま!とは体型など厳密に言えば違いはありますが、もうそれはそれ。
陳情令の忘羨はこのふたりしかいない。
もうこれは観てくれとしか言いようがないですが、原作が好き!と前のめり且つドラマを観るのが大の苦手な私が
全50話を完走し、全て購入すれば5万を超えるBlu-rayBOXを予約した理由は間違いなく忘羨を演じたお二人の力なのです。

まず魏無羨を演じた肖战(シャオジャン)さん。
魏無羨は、わんぱくでやんちゃで可愛くて、知的であり、誠実で優しく、
しかし志を貫くためなら残酷でもあり……日向にありつつも陰の色気もあるというような、非常に複雑な魅力のキャラクターです。
私の不安と期待を一気に吹き飛ばしたのは、まるで花畑が生まれるような笑顔。もーめちゃくちゃ可愛い。
そりゃ藍湛(ランジャン:藍忘機の名)も大好きになっちゃうよ。うさぎと戯れるシーンが本当に可愛いです。
また、訳あって詭道(鬼道・邪の道などとも表現されている)の使い手となった夷陵老祖(魏無羨の号)が登場する回は、
陰の色気が大爆発なので、未亡人みたいな綺麗なお兄さんが好きな人は溜息が出ると思います。

そして藍忘機を演じた王一博(ワンイーボー)さん。
藍忘機は寡黙なので、本当に喋らなくて。
台本の忘羨の台詞の差を見せてくれているオフショットがあるんですが、忘1:羨9くらい喋りません。
少ない台詞と表情や所作で、誠実で凛として美しく強い藍湛を見事に演じられています。難しかっただろうな……。
個人的に大好きなのが、前世の魏無羨と夷陵の地で再開し「ある人」について告げられたときに表情の演技。
あと原作設定で藍湛の身体からは、常に檀香が香っているのですが、一博藍湛は間違いなくいい匂いがしている。
ちなみに、藍忘機の号は含光君です。

お二人の演技と一千万点のキャスティングの奇跡が、この作品に太い柱を通していると思います。
あと、小苹果(意味:りんごちゃん)というロバ、仙子(意味:妖精)というもっふもふハスキー犬、藍湛が大切にしている白うさぎちゃんたち
可愛い動物も見どころです。後半にならないと会えませんが、仙子がほんとうに可愛いです。

また、古代中国をモチーフにしている本作、特に藍忘機の所属する姑蘇藍氏の本拠地「雲深不知処」や
魏無羨が拾われ育った雲夢江氏の本拠地「蓮花塢」の美しさ。
各仙家の設えやそれぞれの武器などの細かなデザインは観ていて楽しいです。
主人公ふたりは色々とお着替えしていますので、衣装にも注目。魏無羨はおしゃれさんなイメージなのかな。日本の江戸でいう傾奇者的な。
公式チャンネルに制作の裏側の動画があるので、ぜひ観て欲しいです。


おたく的「待って…」ポイント

おたく、感情が昂ぶると「待って…」と言いますよね。私の中の、陳情令「待って」ポイントをご紹介します。

BLでは検閲を通らないためブロマンスという設定になっていますが、脚本と演出のテクニックで原作の大切な場面を
間接的に表現してくれている!と胸を押さえずにいられないシーンが多々あります。全て観る側に委ねられていますが、色々と解釈できて楽しい。

魏無羨が転生し、数々の困難の真っ只中。ふたりが心を通わせる回。カメラが引いていく遠目に、魏嬰(ウェイン:魏無羨の名)が衣服の帯を解く姿が映ります。
これは目視するのは難しく、スローで拡大しないと無理ですが検証動画を上げているファンがいますのでそちらで確認可能です。
翌日は魏無羨が寝不足でうとうとして、唇が何故が切れて瘡蓋が出来たような痕があり(実際には撮影中に怪我されてしまったという情報も見たので、あくまでこじつけです)、普段は黒色の下着を身に着けているのに、その時だけ白の下着を身に着けている(藍湛の下着は白です)。

……これは……初夜では?!

また三拝(婚姻を交わす儀式)を交わすシーンが無い替わり、魏無羨の養親の仏前に参る際に三拝をすることで、二人はドラマでも同侶となります。
結婚おめでとうね……。

手首を縛られ捕まっている人たちの縄を藍湛が切りますが、その切り方も魏嬰だけ特別仕様です。怪我しないようにね……。

そして、なりよりもラストシーン。
中国や他国では、ふたりは別れ、違う地で過ごすエンディングですが、日本版は……。
各国のファンに、最も幸せなエンディングと評されたようです。
日本のスタッフに熱狂的ファンがいて、この原作を想わせるエンディングに再編集されたとか。熱い。

その他にも、藍湛と魏嬰はおんぶされたり抱っこされたり、酔っぱらっていちゃいちゃしたり、原作をベースにしてとっても素敵に演出、演技されていますのでぜひ観て「待って…」となって欲しいです。

ストーリー上、魏無羨の前世は辛い場面が続きますが、現世は可愛くコミカルな場面も多いので安心して辛い想いをしてください。


知っていると更に楽しめる気がするポイント

やっぱり原作を読む方が、何万倍も楽しめると思います。
戦闘シーンなどはやはりドラマだと迫力にかけたり、少し間延びしている場面もあります。
(ドラマでの戦闘シーンへの物足りなさは、アニメで完全に払拭されるのでアニメもおすすめですが、また別の機会に)

脚本上、説明の無い部分や「義城編」と呼ばれているファンに深く愛されている章がありますがドラマでは僅か2話で纏められており、2話でもここまで表現してくれた喜びもありますが、勿体ない気持ちもあります。
忘羨の公式カップリングが大好きな私ですが、義城編の重要なキャラクター宋嵐と暁星塵の非公式カップリングも好きなので。

中国ではドラマの演者に吹替えで声をあてるのが通常で、これは演者の出身地による方言の問題があるからだそうです。
ちなみに魏無羨は、ボイスドラマを担当している路知行さん。
私は路さんの魏無羨が「藍湛」と呼ぶ声が大好きです。
めちゃめちゃ可愛いんですよね……魔道祖師の声と陳情令の声はまた違った魅力があるのでそこも楽しめるポイントです。
路さんは、BLボイスドラマ声優界で「万年受け」と呼ばれているとかなんとか……。
藍湛はアニメを担当している邊江さんです。こちらも落ち着いた良い声です。

また、藍湛は七弦琴を魏嬰は横笛を武器として使います。
藍家は元々、音楽(琴や笛、歌など)に長けているという設定です。
ドラマではっきりと出て来ませんが、藍湛が魏嬰を想い作った曲がありまして、その曲名は「忘羨」です……。
色々な事情で途中からドラマでは曲名変更になったようですが、1話でのクレジットは「忘羨」のままですよ!
ちなみにドラマのEDテーマ曲「无羁」は、忘羨キャストのお二人がデュエットしています。とても素敵な曲です。(現在は無事に曲名は「忘羨」表記になっているようです。嬉しいなあ。)
その他、キャラクターテーマソングなどもSpotifyやAppleMusicで配信されています。


勧善懲悪をテーマとして王道でありつつも、古臭い感覚にならないのは墨香銅臭先生のキャラクター作りのおかげだと思います。

同性愛が検閲で引っ掛かり規制されてしまうというのは、どう考えてもあり得ないし、規制されたからこそこの作品が生まれた。という評価は私は違和感があります。
しかし、制約の多い中で生み出された陳情令は、BL作品のドラマ化での常識を打ち破った作品と中国でも評価されているそうなので、今後に期待したいですし、このような制約が無かった場合、更に素晴らしい作品が生まれていた可能性があることはずっと胸に留めていたいと思います。

機会あればぜひ、陳情令に触れてみてください。

視聴に関する情報まとめ

※2022年4月現在の情報です。随時変更される予定がありますので、各自ご確認ください。WOWOWオンデマンドはドキュメンタリーやコンサートなどファン必見の番組もたくさんですよ!

WOWOWオンデマンド
・陳情令(字幕版)
・ドキュメンタリー
・オーケストラ
・コンサート
・陳情少年 座学中(バラエティー)

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