わたしはトイレと共に歳をとる

日付が変わると、わたしは一つ歳をとります。
何年も何十年も生きてきたものですから、
これといった真新しさもなく、
きっと明日になろうと特別何か変わるわけでもないのでしょう。
寂しいようですが、そういうものです。

いろいろなことがあった一年でした。
人生で初めて自分の限界を知り、
多くのことに挑戦して、その度何かを得たり、代償に自分自身をすり減らしたり、挫け、もがき、そして笑った一年でありました。

この歳最後にやるべきことはないか
そう考えた結果、
わたしはトイレでひたすらに便座を磨いていました。
ふとトイレの汚れが目に入ったのです。
このトイレのままで歳をとっていいのか。
別にいいはずなのですが、わたしはピカピカのトイレで歳をとりたくなったのです。
というわけで、わたしは必死にトイレを磨いています。
家にある掃除道具を駆使して見えない裏の裏までピカピカに、ピッカピカにしてやるのです。
擦りにこすり、泡を吹きかけてはまたこすり、舐めれるほどピカピカになったトイレを見て、さすがに舐めたくはないなと思いました。
ピカピカになったトイレは眩しいくらいです。
時計を見ると12時17分。
わたしは一つ、歳をとっていました。
ピカピカのトイレと共に歳をとっていました。
明日目が覚めるとまずはトイレに行くことでしょう。
そしてトイレを見て思うのです。
きっと素晴らしい歳になると。

2024.05.01.sai

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?