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名取と会えますように


こんにちは、saiです。
前回の記事、たくさん読んでくださってうれしかったです。

今年も「さなのばくたん。」最高でしたね。
毎年そのイベント毎の大きなテーマがあって、今年も名取がイベントを通じて伝えたかったこと、贈ってくれたものを大事にしようと思いました。

名取のイベントや過去のアーカイブはこちらのページにまとまっています。レンタルで過去のイベントも見られますので最近名取を知ったよという方も是非!


今回も皆さんさなのばくたん。コラボレストランは回られたと思うのですが、僕も今年も名取と各店舗の皆さんが考えてくれたメニューを楽しませてもらってます。この時期が1年で一番楽しみな時期ですね。


イベント当日が終わった後も、まだまだコラボは続いております!
3月24日まで開催されていますので、まだ行けてないよ~という方は是非!
詳しくは下記ツイート(現ポスト)のツリーからどうぞ。

まだまだ期間中ですので、もしこれを読んで行きたくなったな~と思っていただけたら嬉しいです!

今回はそのコラボ店舗の一つ、エロイーズカフェ様で開催中の
「ばくたんミュージアム」で展示されているフィギュアのお話をしようと思います。
今回もまた長くなってしまうと思いますが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。





■今年のばくたんミュージアムはなにかが違う...!

今では毎年恒例となりましたが、今回もこのばくたんミュージアムに
これまで作った名取フィギュアをいくつか展示させてもらえることになりました。

今年のばくたんミュージアムのフィギュア展示の様子

今年は今までのスタチューの中では完全新作はなかったのですが、初展示の浴衣名取と、おはようシリーズから何点か新しいものを持ってきました。


初展示の浴衣名取
おはようツイートシリーズ
これまでのフィギュアたちも展示されていますよ
前回とは違った表情のフィギュアたちも
なにげにパレードのステッキも追加されてます


なんだかんだで増えてきたフィギュアたち。
そして今回珍しく上記に新作が少なかった理由ですが、”あるもの”に全リソースを注いでいたからなんですね。その”あるもの”とは...…



はい、みなさんもうご存知かと思いますが、等身大の名取がこの空間に遊びに来られるように全力を注いでいたからでした。


みなさんが名取を囲んでそれぞれ一緒に写真を撮ったり、その空間を楽しんでくれて嬉しかったです。
皆が楽しんでくれている様子をこそこそと見させてもらって、それぞれの思い出になってくれて本当に良かったです。

今回は、等身大の名取にこの空間に来てもらうにあたって工夫したことを
いくつかお話できればと思います。


■きっかけ

まずはそもそもこの等身大の名取をやってみようと思ったきっかけですが……

👀……

このデカアヘエビが全ての始まりでした。

このデカアヘエビも、毎年のこの展示の1年に1回の楽しみに何か新しい面白いこと用意したいな、というきっかけで作ったものでした。

そしてさなのばくたん。が開催されてからなんとなくこの等身大パネルをじっと見ていて……


(かわいすぎるだろうが)

これを間近で見た瞬間に、「名取ちっっっさ」「ほっそ」とかいうシンプルな感想と同時に、「手足とかあのアヘエビより細くね?」ということに気づき……

「いやアヘエビで出来て名取で出来ないわけがないでしょ」

というバカみたいな発想に至り、思いついたままにすぐさま相談してこの企画が始まりました。

ということで制作が始まったわけですが、今日は制作の手順や技術的なことは省いて、この等身大の名取をやるにあたって心がけたことやこだわりなんかを中心にお話ししたいと思います。実際の制作記は、また別の機会に。


■等身大フィギュアへの初挑戦

とはいったものの、実は当初から今に至るこだわりがあったわけではありませんでした。作っていくうちに生まれる悩みに対する選択が、こだわりになっていきました。

今回、自身初の等身大フィギュア制作になるのですが、普段作り慣れているスタチューサイズに比べ、等身大となると全く勝手は異なり、その進行は完全に見様見真似の素人作業になります。

いざ等身大用のモデルを作るときに、ただ単に普段作っている1/8スケールのモデルを8倍にすればいいというわけではないんですよね。

各所のエッジや毛先のシャープさを普段の何倍もシャープにしたり、現実の落ち影を逆算したシワのモールドにしたり……というのは、ただ引き延ばしただけにならないようにするための最低限の注意なんですが、現実問題としても自重に耐えられる重心設定や内部構造の設計だったり芯材や素材選びだったり。


ですが、僕がモデルを作るにあたって最も悩んだ部分は、そういった現実的な強度や細かい部分よりももっと大きな部分でした。


■カメラか、肉眼か、思い出か

モデルを作るにあたって、今回特別に名取がこんなポーズがいいな~というポーズで等身大用に自撮り写真を用意してくれました!
そのお写真をベースにモデリングを進めていきます。

その中で迷ったのは、画面の中での見え方と、現実に目で見た時の見え方、実際にスマホで写真を撮ったときの歪み方を踏まえた上での落としどころです。

最終的にどの結果に最適化するように逆算してバランスをとるか、終始悩み続けました。

これはどちらが正しい、間違っているという話ではないのですが、画面の中でその姿を見るのと、この現実空間で質量を持った姿を見るのとでは、それぞれに求められるバランスというのは異なってきます。

完成したモデル

例えば今回の名取で言うなら、頭の大きさ、手の大きさ、足の太さ、肩幅、腰幅など。後述しますが、実は等身大フィギュアの名取は、みんなが普段画面で見ている名取からはかなりアレンジされたバランスになっています。そのアレンジの加減にはとても悩みました。

例えば、その人の目の高さを基準に、人間の視界は端に行くほど歪曲します。もともと小さい名取ですから、そこに画面内での最適バランスをそのまま立体に起こした部位がさらに視界の端で小さく映ると、対面したときの現実感からはさらに離れてしまうことが予想されました。

逆に手や頭などの視界の中心に迫る部位はさらに近く迫って大きく感じます。それほどまでに、現実に起こされた”面”という情報の圧は迫るものがあります。
そのため、現実に目にしたときのための、対面したときのためのアレンジは必須と思われました。


■せんせえたちのためのばくたんミュージアム


そのアレンジ方針を固める指針になったのは、毎年のばくたんミュージアムの光景です。

2023年のばくたんミュージアムの様子

あの空間でどこに置くことが想定されるか、どの距離で撮影してもらえるか。対面したときの自然な距離、限界距離は何mなのか。想定される画角や対面したときの視野の歪みから逆算して全体のバランスを考えた時、毎年楽しんで知り尽くしたあの空間で、だれがどこでどのように楽しむためのものなのか、自ずと答えは固まっていきました。

最終的に選んだのは、対面したときの人間の目で見た時の印象に最適化されることでした。

しかしやはり等身大フィギュアですから、それぞれ思い思いの記念写真を撮られるだろうということもあり、写真での写り方も蔑ろにはできません。

広角のスマホで至近距離で撮影すると、画像では画面端に近い頭は伸び、差し出されて迫った手は大きくなり、顔や胴も放射状に歪みます。
そして、カメラで引きで撮るにしても、あの空間で正面で引ける距離には限界があります。

そして人間の目で見て一番現実感を感じられるバランス。
その全てのバランスを保ち、破綻のないバランスにすることはとても難しいことです。

それでも目で見た時の印象を最優先にしたのは、
「せんせえたちが名取に会える」という体験を何よりも大事にしたかったからです。


■すべての正しさの中から、正しさを選ぶ

このアレンジに踏み切るのはかなり不安がありました。みんなが普段見ている名取のイメージと離れてしまったらどうしよう、と。

たとえば、みんなが普段イベントや配信の画面で見ている名取のパーツ比率でいうと、本当なら頭はもう少し大きく、腰幅は狭く、手足はもっと小さいのが正しい比率です。

しかし、一度テストで画面内のモデルでの正しい比率の手足を出力して自分の手と比べた時に、そのサイズに現実感との大きな乖離を感じました。この時、全てを画面で見ている名取の比率で構成すると、おそらく現実世界で対面する際に現実感のあるバランスとして完成しないだろうと強く感じました。それは、今回やりたかった目的と大きく乖離することでした。
特に手と足だけは、せんせえたちが名取と手を合わせたときのサイズの現実感との乖離だけは絶対にさせたくなかったんです。


おてて

せっかくこの物理世界で質量を持った名取と対面できるのに、自身との現実的な大きさの乖離という隔たりがあっては、それは実感の欠如につながり、会いに来てくれたせんせえの思い出に深く残らないんじゃないか、
”名取と会ったことにならない”のではないかと思ったからです。

もちろん、それは決して普段見ている画面の中の名取の比率が現実離れしているという意味ではありません。

画面内でめいっぱいかわいく僕たちの目に伝わるために最適なものと、物理世界に質量を持った時に目の前に自然にあるためのものは、それぞれがまるで違って、それぞれがそれぞれの目的に最大限の最適化をされた正しさをもったものだと思っています。

2次元の世界でも現実世界でも、それぞれに最適なものがもたらす思い出が、僕たちの等身大の思い出になるからです。



なので、画面で見ている名取の印象から外れないように、かつ現実世界で現実離れした大きさや小ささにならないように、それでいて写真にも思い出にも残せるよう、各部位ごとに名取のイメージと現実感の間の限界ギリギリの大きさ、小ささを突き詰めました。


靴職人は昼夜逆転

この目の仕掛けも、このサイズだからこそできる、対面したときの特別な印象を感じてもらいたいという仕掛けでした。

これがせんせえがたにどう受け取ってもらえるかな、この選択が自分だけの独善になってないかな、と内心すっっっっごく不安でしたが、開催されてからはせんせえがたみんなが名取と手を合わせて遊んでくれたり、ジャンケンして遊んでくれたり(想定外)、「名取ちっさ」など思い思いに感想をつぶやいてくれたのは、語らずとも伝わったものがあったことを実感できて、
本当に本当に、本当~~~に嬉しかったです。


「よっ!」とのこと


安全ピンがガチの安全ピンなのが激エモポイントでございます
ちなみにプチ情報ですが、この腕章の文字は今回のために
名取が書き起こしてくれたものをステッカーにして貼った特別仕様です👆


■それぞれの等身大

今回の等身大フィギュアを作るにあたってこだわったことは長々と上に書いてきたとおりなんですが、あらためて等身大というものについて考えました。

等身大フィギュアというのはそれ自体が特別な存在ではありますが、
その形が絶対的なものではありません。同じ等身大フィギュアという括りでも、どこでどのように展示されるか、どういう形態でだれのために何のために作るかで設計もバランスも異なります。

「実物大」ではなく、「等身大」です。
等身大とは「人の身の丈と同じ大きさ」「誇張も虚飾もない、ありのままの姿。」とあります。


これによると、先に挙げた今回のこだわりは、誇張も虚飾もしまくりです。
でも、僕が伝えたかったものも、このフィギュアも誇張してはいけない絶対的な存在ではありません。


では何をもって、何のための等身大なのか、
それは見てくれたせんせえたちそれぞれの”名取と会えた”という思い出になること、せんせえたちそれぞれの思い出が本物の体験であったこと、それこそがありのままの、それぞれの身のままの等身大の思い出になるんじゃないかと思いました。

名取の高さに合わせてかがんでツーショットを取ること、手を比べて小ささを実感すること、ジャンケンして遊ぶこと(想定外)、僕が思いもしなかった思い思いの遊び方をしてくれること、それが僕にとってもせんせえたちにとっても叶うことが、何よりの願いでした。

せんせえたちみんなのおかげで、そのすべてが叶ったように思います。
そのすべての思い出が、みんなにとっての等身大の思い出でありますように。



■おわりに


普段僕が作るフィギュアは、僕が勝手にファンアートとして好き放題に作っているものです。
前回も書いたことですが、いつも1つしか作れないものだから、見てくれるせんせえたちに対してそのままのものを共有できない心苦しさがありました。

なかには製品化という奇跡を迎えてみんなのものになれたものもありますが、今回はまた違った意味で、みんながあの場所であの体験を共有出来たこと、あの体験こそがみんなのものになったんじゃないかなと思いました。
これからもあのフィギュアはみんなのものであり続けると思います。


なにより今回このフィギュアを完成に導いてくれたのは、
毎年あの場所を楽しみにしてくれるせんせえたちの存在でした。

その作業は、この身一つには本当に大変で、長く、肉体的にもつらいものでしたが、毎年のあの光景をこの目で見てきたからこそ、来年ももっと楽しんでもらいたい、新しい体験を持って帰ってほしいという一心で、なんとかやりきることが出来ました。

もちろん、ばくたんミュージアムは名取をはじめ多くのイラストレーターさんによる公式ヌォンタート、デザイナーさんのセンスや工夫、遊び心、TRIBALCON.の皆さんや施設の皆さんの力の結集で成り立っているものです。

僕はスタッフでもなければ企画者でもない、普段からみんなと同じように名取を楽しんでいるいちファンが、あの一角に作品を置かせてもらえているという今考えても本当に自分でも意味が分からない立場のいちせんせえです。

それを続けさせてくれたのは、毎年あの場所を楽しみにしてくれている名取とせんせえたちのおかげにほかなりません。

今回の等身大フィギュアは、そんな活動を続けさせてくれた名取とせんせえたちに対しての感謝のかたちです。

また次の機会をいただけることがあったら、これからも名取に会いに、遊びに来てくれたら嬉しいです。

またまた一方的な思いを綴った上に長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。

まだまだコラボ自体も開催期間中ですので、これを読んで気に入ってくださったら、是非名取に会いにお越しになってくだされば嬉しく思います。
そして僕たちが大好きな名取さなを、ラ・チッタデッラをもっともっと好きになってくれたら嬉しいです。

これからも変わらず、名取が贈ってくれたものを楽しんでいきたいと思います。それではまた。

sai

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