切ないね、

昨日、トーキョーの天気は不安定だった。カラっと夏らしい日照りだと思ったら、とたんに真っ黒な雨雲が押し寄せて、シャワーのような豪雨になったり、カミナリも鳴っていた。とも思えば、また晴れ。予測できない天気に、一日中振り回される。そんな感じ。

昨晩新宿で、大学時代の仲間たちと再会。卒業して2年が経つのだけど、全員で顔合わせるなんて、卒業してはじめてだ。
今日明日出張で関西から来る子がいて、たまたま奇跡的に昨日会えたのだった。

学生時代、毎日ばかみたいに飲んで歌って遊んでた。時間はありあまるほどあるけれどお金はないから、王将やサイゼリアでお酒を飲んで、朝までずっと笑ってた。遊びも課題も就活も旅行もたくさん共有して、遊んで遊んで遊びまくっていた。

「今だけだよねこんな時間」なんて未来を思ってつぶやきながら。

仕事を終えてわたしは向かう。先に飲んでた子たちと合流して、その後6人集まる。新宿の居酒屋さんは、わりかしお高めだった。ビール一杯580円。
でも、学生のように、お金がないよ〜なんてつぶやく子は一人もいなかった。
久しぶりに顔を合わせた友達とは、久しぶり、元気だった?なんて言葉を掛け合うことが少し気恥ずかしいような、会っていない時間がうそみたいな、ああ、あの頃の日常のつづきかなって感じがした。昨日も会ってたような感覚に陥る。
でもやっぱりみんな顔つきが落ち着いていて、ここは京都じゃなくて東京で、それなりの時間が経ったことを感じずにはいられない。

ビールで乾杯して、料理を注文する。
「会社は?」「楽しい」「仕事は?」「大変」そんな言葉を掛け合って、10分もすると沈黙がテーブルを何度も通り過ぎた。周りの席の話し声に耳が占拠される。
「なんか俺たち、話すことねえな」
多分みんなの頭の中にあった言葉を、一人がつぶやいて、苦笑した。
そうなのだ、わたしたち今話すことが見つからない。

さんざんお互いのことを知っていて、いまさら最近どうよ?なんて上っ面な会話をするような間柄ではない。
かといって、思い出話を話すほど、時間は経過していない。
学校や授業とかの、共通言語も今はない。
話すことを探しても、見つからないのだ。

わたしたち、あんなに毎日顔合わせてさ、なに話していたんだろう、なんて。
LINEのグループチャットは気づいたら100件くらい溜まっててさ、何事かと思ってみたらすっごいくだらない話題ばかりで。
飲みにいこう、って誘いに、今日は家にいたいなんて言ってもなんだかんだ連れ出されたり、カラオケに行けばももクロの曲で踊り狂って朝を迎えてさあ。卒業旅行は浴衣も乱れてずーーっと日本酒飲み続けて人狼ゲームに罰ゲーム。ほんとうに、ばかみたいに一緒にいた。

顔を合わせたらあの時間に戻れて、またばかみたいに大騒ぎできる気がしたけどそんなことなくて、みんなそれぞれ明日の仕事のことを思いながら飲んでた。それでもまだ若いから人生や思い出を語ったりはしないけど、だからこそ余計にみんなが遠い気がして。

友達は終わらない。たくさんの時間を一緒に過ごした思い出は生きる。
でも、これからは交わることなくそれぞれを生きる。
なんだか切なくて、さみしくて、でも仕方のないことで。

2時間ほど飲んで、最後に写真だけ撮って「じゃあね、また」って別れた。
またね。それがいつかは分からないけど、またね。
新宿東口の人の波に、みんなが消えていく。
1日中振り回された不安定な雨雲は過ぎ去って、夏の夜らしい風がほおを撫ぜた。

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