ホームレスの問題について

先日大阪でみたホームレスについて少し書いたけど、あれからまた考えていたことを少し記録。

ホームレスにはドラッグ中毒者が多いと言う人が多いが、そもそもドラッグ中毒とホームレスはセットなことが多いと思う。


初めてカナダにきた時、カナダという国はリベラルで多様性に寛容で弱者にも優しいという噂を聞いていただけに英語が話せるようになったらカナダ人と社会問題に関する話をしたいという期待があった。

着いてすぐに通い出した語学学校での授業中にあったこと。

先生は白人の小綺麗な女性だった。

ある日のディスカッションのテーマ、”トロントの嫌なところ”。

『地下鉄やバス、ストリートカーなどの交通機関。』と誰かが言った。トロントの公共交通機関はしょっちゅう遅れる。突然運行中止になることも少なくない。トロントに住んでる人ならよく知ってることだ。先生は『私も同意します。頭にくるわよね。』と言っていた。

続いて他の生徒が『ホームレスが多い。』と。

そしたらその先生が、『そうですね、トロントはホームレスがとても多い。そして多くのホームレスはドラッグ中毒で、実はお金や住む所があったりする。私は絶対にお金を渡しません。なぜならそのお金はドラッグやお酒に消えてなくなるとわかっているからです。』と言っていた。

私はなんとなくがっかりした。日本でよく聞く反応と似たような感じだ。と率直に思った。

日本でホームレスの話題があがった時に結構な人が言ってるのを聞いた、『金持ちだけど経験のためにあえてホームレスやってる人がいる。』。本当にそういう人がいるのかもしれないけどいたとしても何万人に一人とかではないかなと思う。みんな目の前のホームレスの問題に直面したくないから、信じたいものを信じようとしているにすぎないのではないか。

話をもどす。仮にお金を渡したホームレスがそのお金をドラッグに全額使ってしまおうと、使い道まで干渉するのか。そもそもお金を渡す目的はサポートの気持ちを伝えたいからなのではないか。たとえ10カナダドルほどを渡したところでその人の人生をただちに劇的に変えることなんてできないんだから。

そもそも路上で物乞いをしなければならなくなってしまうほどにドラッグでボロボロになるなんて、その人の身に想像もつかぬほどとてつもなく酷いことがあったとは考えないのか。お腹は空くし、自分の身体もどんどん不潔になっていく、冬は寒いし夏は暑い、通行人には見下される、、ハイにでもならないとやってられない状況だと思う。

路上にいるということは怠け者で自分に甘い、というレッテル。あまりに考えが浅くないか。

その小綺麗な先生、語学学校は留学生にとってトロントでの新しい生活の入り口なのにトロントの大きな社会問題の一つであるホームレスに関して乱暴な説明をしたように思う。

私自身投げやりになりかけた時に、友達や通りすがりの他人の暖かい何気ない言葉で気持ちが救われたことが何度かある。

たとえそのホームレスが、自分が渡したお金をドラッグに使ってしまっても、いつかふとした時に思い出してくれたら、顔なんて覚えていないだろうけど、もしかしたらドラッグをやめて更正して生きようと思うきっかけの一片にでもなれたら嬉しい。ホームレスは社会の一部なのだ。関係ないことだと切り離すということは、自分が属する社会の向上にも興味がないということと同意だと思う。

昔タイやベトナムに旅行に行くのが友達の間で流行っていた頃、現地のタクシーに乗ってぼったくられたり、複数のストリートチルドレンに囲まれて気が付いた時にはお金を擦られていた、みたいな被害にあったとよく聞いた。当時付き合っていた弁護士の彼氏とその話題になった時に、『仮に海外でお金を騙し取られてもさ、そこが貧困が進む国だったら、物価の違いもあるしそのお金でしばらく貧しい人がいい暮らしできるなら、と前向きに考えるけど。(もちろん金額によっては落ち込むけど)』って言ったらその彼はものすごく嫌そうな顔をした。そして『君は本当にクレイジー。』と言った。『犯罪者にお金取られて喜ぶなんて。』と。お金を取ろうとする=悪い犯罪者、そんな単純に考える?いやでもそうなのかな、彼が正しいのか?私がおかしいのかも。結局結論がわからないまま終わった会話だった。

そして何年も経ってトロントに留学にきて再び直面した。カナダみたいな国に住んでいる人もレッテルを貼る。じゃあここでもやっぱり私はクレイジーなのか、ホームレスをサポートするような発言をしない方がいいのか、と困惑した。

カナダにきてもうすぐ10年になるけど、ホームレスのことを同じようにドラッグ中毒だからと切り離すカナダ人が意外に多い。夫もそう考える1人だと思う。

ここでトロントにあるホームレスの人々を支援する団体のホームページの一部内容を紹介したい。

カナダではどういう人がホームレスになっているのかについて

1. Womenー女性

女性の貧困やホームレスの問題の件数は上昇傾向にある。ホームレスシェルター利用者の27パーセントは女性。お年寄りの女性のうち16パーセントは貧困。カナダ全土で190万人以上の女性がいつホームレスになってもおかしくない貧困下に置かれている。

ホームレスの女性は路上で暴力や暴行の被害にあいやすく、多くの女性が路上に出るよりかはと不健康な関係(暴力を受けるなど)である相手に頼って生活をしている。

2. 1 in 4 Are Indigenous Peoplesー4人に1人は先住民

ホームレスになりやすいのが先住民。先住民の人口はカナダ全体の5パーセントにとどまるにも関わらずダントツに多い。極度の貧困、適切な支援がなされていない現実が先住民のホームレス化にさらに拍車をかける。

3. Children and Youthー子どもと若者

子どもと若者のホームレスの増加は警鐘を鳴らすレベルに達している。
わかりやすくいうと、シェルターにいるホームレスの7人に1人が子ども。ホームレス経験があるカナダ人のうち20パーセントの年齢層が13から25歳。

若者にとって家がないということはその若者の教育や健康問題に関わる。実際に、ホームレスの若者の多くは学校から脱落し、犯罪に関わったり、人身売買などの搾取にあいやすい。若者のホームレスの経験は、彼らの精神面、肉体面に生涯に渡る大きな影響を及ぼす。

4. The Number of Homeless Veterans is Growing-退役軍人のホームレスの増加

毎年退役軍人のホームレスが増えている。特にオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州で増加傾向にある。退役軍人は、兵役後元の生活に戻る際、不安障害やPTSD、薬物依存などの精神的困難に直面しやすい。十分な支援プログラムを受けないまま、退役軍人の多くは路上での生活を余儀なくされる。

5. Many Experience Hidden Homelessnessー多くの隠れホームレス

隠れホームレスとは、路上生活をしていないホームレス状態のこと。例えば、車内生活や、友達や親戚の家を転々としているホームレスの人々を指す。カナダ統計局の調査によると、子どもの時に虐待にあった人や障害を抱えた人は他者より隠れホームレスに陥りやすい。

リンクはこちら↓

https://www.fredvictor.org/2019/06/07/homeless-in-canada-important-facts-about-homelessness/#:~:text=There%20are%20many%20reasons%20why,and%20lack%20of%20affordable%20housing.


ホームレス問題を考える時に参考になればと思う。きっと六法全書では見つけることのできない情報だ。


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