見えない左眼
ここ数ヶ月バタバタと忙しなく毎日を過ごしていたが、
お盆になり暇ができたので実家に帰った。
久々に会った祖母の左眼は見えなくなっていた。
大丈夫なのかと尋ねたら大丈夫でないと答えた。
祖母の家に行くといつも始めに仏壇へ促されることになる。
小さい頃毎日のように訪れていた祖母の家は
大々的にリフォームが施されて昔とはまるで様子が違ったのだが、仏壇のある部屋はあの頃と変わらなかった。
チーン
お参りが終わり振り返り壁を見ると
よく寝る前にきつねに化かされた話をしてくれた曽祖母の遺影がこちらに笑いかける。
それ以外にも遺影があるが私の記憶にある人ではない。
リビングに向かうと叔母と祖父母がいて
梨をふるまってくれた。
祖母の家にくるとよく梨が出てくる。
甘くてみずみずしくておいしい梨だ。
ソファに座り何を話したらいいのか私が考えあぐねていると、叔母は従兄弟が全員結婚して子供も生まれて賑やかだという話しを始めた。
当然さはらはどうなのかと質問が飛んでくる。
こんなときなんて答えたら満足するのだろうか?
ぼうっとしていても
齷齪動き回っても
日々は進んでいく。
彼も、彼女も、私も、みな歳をとる。
祖母の左眼は今までどんな世界を映しだしていたのだろう。
そして残された右眼でどんな世界を見ていくのだろうか。
私は私の目を通した世界しか知らない、知る由もない。
東京に戻って来たさはらは
もうすぐライブです。
久々に人前で歌います。
きてね。
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