【シチュエーションボイス】自分を作った博士の死と同時に、アンドロイドは恋に気付く【フリー台本】

「もう一度、好きだと言わせてください……」

博士の死と同時に恋心に気が付くアンドロイドのシチュエーションボイスフリー台本です。

性別の指定はありませんので、ご自由にお使いくださいませ。

【あらすじ】

自分を作った博士と二人暮らしのアンドロイド。二人にはある習慣がありました。それは一日の終わりに「好き」と囁くこと。理由は分からないながらも、その言葉を言う内に、アンドロイドの胸には何かが芽生えていきましたが、それには気付かないままでした。ある日の朝、いつもの時間になっても起きてこない博士が気になり部屋に向かうと、博士は既に事切れていて……

朗読時間

７分前後

おおよその目安としてご覧ください。

本文

博士、本日もお勤めご苦労様です
お茶をご用意致しました
どうぞゆっくりとお休みくださいませ
はい？
ええ、問題ありません
私はただの機械ですから
どうかお構いなく
不調があればすぐにお知らせしますし、自分でも不調には気が付けます
それに人間のようにか弱くもありませんから
それは私を作った博士の方がよくご存知でしょう？
でも、ありがとうございます
こういうときには、「ありがとう」と言うんでしたよね？
博士のおかげで、私はこうして動いていられます
ありがとうございます
これで間違いはないでしょうか？
私には人間の真似事しかできませんから
それは良かったです

……はい？
ええ、分かりました
いつも通りに、ですね

……好きですよ

これで良いですか？
いつもいつも、何故私にこんなことを言わせるのか、理解ができません
聞いても答えてくれないんでしょう？
分かっていますよ
それでも私は博士に応じるだけです
もう一度、ですか？
分かりました

博士、好きです

これで構いませんか？
……笑っている、ということは満足されたのですね
しかし、この言葉だけは上手く使うことができませんね
博士が満足されているなら、それで構いませんが

少し話しすぎてしまいましたね
本日もお疲れでしょう
入浴の準備はもうできています
身体を休めて、早めにお休みください
それでは、私は失礼致します
おやすみなさいませ

博士、まだ眠っていらっしゃるのですか？
もう朝ですよ
朝食が冷めてしまいます
お目覚めになってください
……博士？

博士……？
脈もない
呼吸もしていない
身体が……冷たい……
博士……
これが死ぬということですか……？
死んでしまわれたのですか？
昨日まで何事もなかったのに
人間はこんなにも簡単に死んでしまうんですね
残念です

……あれ？
博士、何か不具合があるようです
原因は……分かりません
私のプログラムが、アナタの死を認識することを拒否しています
それに、腕も脚も上手く可動しません
私、おかしいです
博士、何か問題があるようです
メンテナンスが必要だと思われます
博士……
何かあったらいつでも直すと言っていたじゃないですか
返事をしてください
自分ではどうにも出来ないんです
どうしてこんなに痛いんですか？
痛覚なんて無いはずなのに
痛いとしか表現できないんです
どうしてこんなにも苦しいんですか？
身体が壊れても、こんなこと考えたことも無かったのに……
博士……私を直してください……
これじゃ……これじゃまるで人間みたいじゃないですか
私はただの機械なのに……
博士……

私はアナタ無しでは……

……もう、アナタに好きだと言えないんですか？
アナタのあの笑顔は、もう見られないんですか？
お願いです……何か言ってください……
いつもみたいに、私のこと気にかけてください……
お願いです……目を開けてください……
もう一度……
アナタが好きだと……言わせてください……
博士……

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