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岩橋良昌の暴走と裏の真実探し

人は「表の情報」より「裏の真実」に触れたとき強烈に惹かれる傾向にある。そして、その「裏の真実」を疑うことは決してしない。

「権力者は悪」という構図こそ、我々がもっとも見たい「裏の真実」である。そのため、週刊誌やネットメディアは日夜そのネタを探す。

事実、不正を働く政治家や企業は存在する。そのため、権力を監視するメディアや、ジャーナリズムは、いつの世も必要である。

しかし、便乗犯もいる。愉快犯もいる。1を100のように仕立て上げるメディアもあるし、0を1にするフェイクニュースや、誤報もある。

我々はまんまとそれに踊らされ、取り返しのつかない言動に出てしまうこともある。虚と実の見極めは、いつの時代も難しい。

プラスマイナス岩橋氏が、Xで様々な告発を続け、所属していた吉本興業との契約が解消となった。

彼の証言にどこまでの信憑性があるのかは分からないが、吉本興業=権力=悪、という見方をする人が多いように思う。

SMAPと共に急成長を遂げたジャニーズのように、それくらい吉本興業はダウンタウンと共に大きくなり、今や政府とも連携を取る大企業となった。

僕は、彼と契約解消した吉本の判断が間違っていたとは思わない。

運動会で、ある生徒がふざけてトラック内を走り回り競技を中断させたとする。先生が注意に行く。もうやるなよ。次やったら教室で自習な。分かったな。

また暴れる。再び運動会は中断。約束を破ったのだから、もう運動会へは参加させない。教室で自習だ。

すると次は、教室から「学校で体罰を受けた」とネットに投稿し始めた。当然、学校はネット民から一斉に叩かれることとなる。それでも学校はなにか対応しなければならないだろうが、会社なら抱えきれないと思う。

運動会でも芸能界でも、どんな世界にもルールは存在するし、お互いの信頼関係で成り立っている。

ここで必ず起きるのが、「そこまで追い込んだのは誰だ」という議論。最初にルールを無視したのはどっちだ、という指摘。

岩橋氏の告発を冷静に振り返ってみると、彼の不満の矛先は、番組制作会社であり、浜田さんであり、他事務所タレントであり、北河内新人お笑いコンクールであり、フジテレビであり、吉本。

と考えると、彼を追い込んだ「裏の真実」があったとして、それを「吉本興業という巨大権力=悪」という、実に納得感のいく図式にはめて捉えてしまうのは早計な気もする。

一方的に暴露はしているが、そもそも悪いのは向こうであり、それを指摘しているこちらこそ正義である、というのをやったのがガーシー氏であった。私人逮捕をおこなう人の正義もここにあるのかもしれない。

吉本興業が清廉潔白な会社だとは思わない。数多の芸能事務所が、今の時代では考えられない所業を過去おこなっていたであろうことは、想像に難くない。

ただ、岩橋氏の投稿から推察できるのは、芸能界でやっていくために様々な無理難題があったであろうということと、彼の投稿を注視している自分と、月収は200万程度であったということ。

とすれば、吉本興業が一方的に無理難題を強いて搾取していたわけではないということは伺える。あの類まれな才能を、全国に広めるために動いていたことも分かる。僕らは彼を知っているわけだから。

岩橋氏のお笑いのセンスを僕は信用しているが、もし彼が最初からフリーだったら、あの才能に気づけなかったかも、と思う。

いろんな大人たちが、とっ散らかった彼の才能をうまくパッケージングしたことで、彼の笑いのセンスに気づけたのだと思う。野生爆弾のクッキー氏もそれに近いような気もする。

そのいろんな大人たちの中に、変な輩もいただろう。それが結果として、暴走せざるをえない精神状態にまで追い込まれたのは同情できるが、吉本もまた、彼との契約を解消せざるをえなくなったのだと思う。

ルールを無視しても許される行為が一つだけある。

それが、お笑いだ。

かつて明石家さんまさんは、ヨーイドンで逆走して学校全体を笑わせたという。全員とはいかないまでも、過半数を笑わせてしまえば勝ちだ。

だからどうしても成人式で暴れたい人は、無作為に妨害するのではなく、会場にいる半分以上の人を笑わせるにはどうすればいいかを考えた方がいいと思う。

笑わせる難しさを知ると、ただ妨害することの安直さと、ダサさと、恥ずかしさを思い知る。

少なくとも岩橋氏には、それができる才能があった。だからこそ、自らその才能を放棄してしまったことが残念でならない。プラスマイナスというコンビも解消してしまった。

もちろん二人の関係性は二人にしか分からないものだし、僕らが見ているのは最後のほんの一部分に過ぎない。彼の暴走も、僕らが知り得ぬ様々なものが溜まりに溜まって起きたことだと推察できる。

とにかく我々は、叩きたい標的を攻撃するのではなく、「裏の真実」に見えるようなものに惑わされず、なえるべくフラットな観点を持っておきたい。

なのに、真木よう子は本当にエアガン撃ったんではないかと思ってしまう自分がいる。

僕もまた、先入観が取れない未熟な大人の一人である。

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