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学歴主義、以前のはなし。(1)

恐らくこんな僻地のタグもなんもつけないnoteを見る人はいないかと思うが、こちらの記事を読んで「大学っつか、それ以前の問題では(苦笑)」と片靨を禁じ得なかった。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191230-00000019-pseven-life
言っときますが私もこの、日野百草さん名付ける処の「しくじり世代」にバッチリ当て嵌まってます。だからこそ、例のステラ廃人氏の悲しい事件も刺さる訳で。

「学歴主義、というより、それ以前のレベルの話」として、都市部の方は絶対与り知らないであろう、地方のお年寄り(いや私も充分お年寄りに片足突っ込んでますが)の間には、物凄い「旧制中学信仰」というものが存在します。
恐らく、人口が集中している首都圏・関西圏辺りの人は全くそんなもん知らないと思いますが、私の出身は田舎。郡で大字付きます。現在住んでる場所も田舎で一応市政にはなってますが、字付く場所は無数にあります。
そんなような、割かし人口流出が大規模にあっても人口流入がそれほど無い場所の場合、所謂「旧制中学=超エリート」という謎の信仰が存在します。私は別にそんなもんを気にする事なく、「まあチャリで通学楽だし」と近くの公立高校に進学しました。そこが「旧制中学」でした。
平成以降生まれだと共学化してますので事情が微妙に違うんですが、私がその高校で学び、卒業したのが平成初期でした。その時に初めて「関東以北だと旧制中学が公立男子校で、旧制高女が公立女子校としてそのまま続いている」という事情を知りました。勿論、今でも浦和とか仙台一高二高辺りは「旧制中学の矜持」みたいなものを守って公立男子校ですが、それ以外は大体関東以北でも共学化されたのが平成10年代以降のことです。
私はその該当地域では無かったので、戦後すぐに旧制中学と高女が合体した高校でした。

私がその高校に在学していた時も、卒業した後も、私の出身校はその地域ではまるで「不動の崇拝対象」でした。まあ旧制中学の名残りだったか知りませんが、確かに男子生徒は多く「男クラ」こと「男子クラス」が複数ありましたが。しかしまあ、別に制服着てる訳でも無い、体操服で地元の整体院に行っただけで「おー、◎高なんかー!めちゃめちゃ頭いいなー!」とか、こちらとしては「は?」と首を傾げる反応をおじ様方やおば様方にされる事が無駄に多くて「なんで高校入っただけでそこまで持ち上げるのかな」とものすごく不思議に思いました。私から言わせれば「確かに短大含めてみんな大学行くような学校」でしたが、私にとってはそれだけのことで「結構ピンキリいるけどなあ」と不思議で仕方ありませんでした。
私の場合、まず、「あの毒父が支配する家から出たい」という一心でしたので、「親が『しょうがない』と納得する大学なら一人ぐらしさせてくれるだろう」という思いだけで勉強や読書を楽しんでおりました。「しくじり世代」の場合、田舎に住んでいる場合、大抵「娘は手元に置いとけ」という謎の不文律がありましたので、それをどうしてもぶち破りたくて仕方が無かっただけの話ですが。

お蔭で母は私が出て行った後少しの間「空の巣症候群」になったらしく、下のきょうだいには迷惑を掛けたのは申し訳無かったかな、とは思っていますが、母は割合と常識的なひとだったのでそれなりに私の独り暮らし生活を支えてくれました。
そして、今所謂「しくじり世代」が犯罪者や犯罪被害者になるニュースを聞くに、未だに強固に存在する「旧制中学信仰」に、バカバカしさすら感じます。大体男性ですけど、特に親(母親である場合が多いですが、父親である場合もあります)の「旧制中学信仰」に振り回されて人生がおかしくなって犯罪者となった人の成育歴を見聞きするに、「ホントにいつまでそんな信仰続けてるんだよ」と言いたいです。
因みに今住んでいる場所の、中学生や高校生にも話を聞く機会がありますが「あの『△高じゃなければ人じゃない』っていうジジイやババア達の態度、ホントムカつく」と結構な憤りを感じているようです。いや、私もムカついてますけどね。

さて、今回私がコレを枕に(長いわ)を話題を進めたいのは「秋葉原の通り魔」と「黒子のバスケ脅迫犯」、「常磐道あおり運転障害犯」、「号泣議員」です。勿論、京アニ、カリタス、神隠し殺人、ステラ廃人氏なども「しくじり世代」に入りますが、その辺は育った環境や境遇が「旧制中学信仰」とは余りクロスしないので敢えて捨象しておきます。

【秋葉原通り魔の成育歴】
彼の場合が一番、「地方の『旧制中学信仰』に振り回された」と言えるかも知れません。何せ、弟さんまで自死されてますので。
彼の母親のパワハラモラハラたっぷりの虐待教育ぶりは、話を聞くだに本当に悲しい。彼にとっては「母親の価値観に従う事」が幼い頃の自分の姿でした。ていうか、小学生の段階で「僕は北大の医学部か工学部に行く」とか明言してる辺り「それ、君、親にそう言わされてるだけやろ」とモロバレですが。どうもこの母親、自分自身の学歴にコンプレックスがあったらしく、「それを息子に叶えて貰う」という思いだけで自分の虐待行為を正当化していたようです。母親自身、自分の学歴の無さを、その母親、つまり彼からすれば祖母から酷く詰られて育ったようです。
だから、親と子供は全く別個の存在で、親が出来ても子供が出来無いことなんて沢山あるし、逆だって一杯あるのに、なぜそこだけは考えが及ばないのか、と泣けてきます。
何で見るテレビ番組やら時間やら、そこまで内容を制限するか。彼の世代だとドラゴンボール最盛期でしたし、ジャンプ神話が凄かった。私の場合は単に好みが「少年漫画寄り」だったので保育園の頃からジャンプやコロコロ読んでましたがまあそんなことはおいといて(苦笑)、そういう話題について行けないって、子供にしてみたら凄く寂しいし、「なんかあいつ変」と簡単に爪はじきにされる条件がフルコンプしてますよ。
それでも彼は耐えて、耐えて、耐えまくって、旧制中学だった高校に進学しました。しかし、高校に入るまでに彼は持てる集中力を使い切ってしまったのではないか、と思えて仕方ありません。実際、私の出身高校の同級生にも彼のようなケースは結構居ましたので。
そこで彼は息切れ状態になり、勉強についていけなくなりました。そりゃそうだ。別に彼は勉学が好きでやってた訳じゃなく、母親に脅迫されてやってたようなものですから。その時点で彼の堪忍袋がブッツリ切れたのでしょう。彼は、その「戦犯」である母親に暴力を奮い始め、そして、北大どころか、全然違う地域の短大に進学し、「しくじり世代」の定番である「非正規雇用の奴隷」としての生活しか出来なくなってしまいました。
彼がはけ口にしていたのはネットの掲示板。2ちゃんやら5ちゃんやらの始まりの層は多分、彼のような「旧制中学信仰の犠牲になってしまった男性」も多かったと思います。
それでも、悪態つきながら周りをどやしながらも、ちゃんと就業していただけ、ステラ廃人氏よりは救いようがあったのではないか、と今になって思います。勿論沢山の全く関係の無い人々を殺したのは言うまでもなく大罪ですし、令和になった今、彼が絞首台に立つ日も近いかも知れません。

【黒子のバスケ脅迫犯】
ちょうどコミケの開催中ということで、これを二番目に取り上げられます。何てったって、この脅迫によって、7年前のコミケ、該当のジャンルは全て停止され、ジャンプとしての集英社の企業出店も規模の縮小を余儀なくされましたので。
彼の場合は父親が学歴コンプレックスを持っていて、中学の時に三単現のsをつけ忘れただけで後は完璧の解答を持って行っても父親は「何で満点じゃないんだ」と殴る蹴るの暴行を受けたようです。
そんな父親の恐怖から、彼も「旧制中学」である高校に入学しましたが、その後の経過は秋葉原通り魔の彼と似たような状況の「非正規雇用の奴隷」でした。
実は私、『黒子のバスケ』の原作者の藤巻さんの小学校~中学校時代のバスケットボール仲間と直接の知り合いです。その方は今Bリーグのコーチをされていますが、中学生時代の藤巻さんに関して「あまり目立たなかった」と証言しておられます。それでもあの雑誌内ランクが厳しいジャンプで最後まで連載を終えた、というのは、本当にすごいことだと思います。「しくじり世代」の小中学生男子なら誰でも「ジャンプで連載を持つ漫画家になる」っていうのは一度は言ってみたい台詞でしょう。
脅迫した彼は、一番の憎しみの対象だった父親を高1の頃に亡くして、それでも空虚な世界から抜け出せなくて、「俺だって藤巻ぐらいには成れる」と思いたかったんでしょう。男性の、上位存在への嫉妬って、時に「どんだけメンタリティ中二病だよ」という位幼稚なことが、結構引っ掛かってたり、引き金になったりしますから。
もうすぐ保釈されるようですが、彼は塀の中では「将棋の先生で模範囚」であり「今までの人生の中で刑務所内が一番楽な環境だった」と振り返っているようです。逆を返せば、それだけ現実社会で精神がひしゃげまくってしまっていた、ということで、こんな事を著書で書いてしまえば「ずっと刑務所に入ってたい」と新幹線内で刺殺する青年も現れるのも無理はないでしょう。彼の公判中の証言や独特な表現の数々は、どうしても新幹線で刺殺した青年の万歳三唱する姿に重なって仕方ありません。

少し長くなりすぎましたし、時間も使ってしまいました。
「常磐道あおり運転障害犯」と「号泣議員」については、年明けにでも「連載ノートの続き」として書く予定です。すみません。



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